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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014夏
598/823

恭と鎮 夏の雑談時間 ④

恭視点。

内容は前回と重複となっております。

「ずっと一緒にいたいと思ってるよ。空は俺のだし、俺は、……空のだし」

 思い詰めた表情から蕩けるように幸せを噛みしめるように声の調子が流れていく。

「……、幸せそうなのは結構ですが。つまり、結婚して死が二人を別つまで前提ですか」

 つまり別れる気はなくて、あんまり具体的想定はしていなくとも、結婚を、将来の人生すら全てともにいたいと現状感じてるってことか。

 そこまで考えてなかったとしても、万が一にも、『君の結婚式は綺麗だと思う』とか他人事的発言をさせないために釘を刺しておかないと。


「けっこ……ん?」


 案の定、未想定だったと思われる声が返ってきた。

「え。まさか、現状ずるずる不安定で続行ですか? 最低ですか?」

 無意識に自分以外と彼女との結婚式とかを思い描いて言葉に、態度にして傷つけて何か間違えたっけって悩むのはバカでしかありませんよ?

 そんな行為を無自覚に繰り返し続けるのは最低ですよね。せめて自覚して下さい。

「さっ……、!?」

 なんでそこまで言われるのか理解出来なくてわからなくて困惑してる。そういう表情。

 理由、本当にわかりませんか?

 そうですか。

「だって、別れるつもりないんですよね。考えたことがない。と。……法的には親権者の許可があれば入籍可能年齢ですよ? 思わぬ授かりものは恋人で女性側の準備さえ出来てればありうるんですよ?」

 これはただの事実。

 女性は十六歳で、男性は十八歳で。

 女子高校生と成人男性と淫行も結婚の約束前提さえあれば、罪に問われることはないんですよ。そう言う事例は存在するもんです。ただし、知り得た人間からの目は厳しいですけどね。

 そして、好きな相手に触れたいと言うのは自然な欲求。オスは自分を残したいと言う本能がありますからね。

 やっぱり好きな人と一番シたいじゃないですか。気持ちいいことは。


「恭君。ミホちゃん相手にそこまで考えてるの?」

 ちょっと、不満そうな鎮さんの声。見れば、楽しそうな瞳のきらめき。

 ほほぅ。僕にミホさんを語れ。と。

「もちろんです。たとえ、僕の子であろうが、他の相手の子だろうがミホさんの子供なら受け入れられる自信があります。もちろん、ミホさんがそばに居てくださるという条件がつきますが。ミホさんのウェディングドレスは素敵だと思いますしね。こう、そぅ……大変かもしれなくても、脱がすロマンが……」


 人生の方向志向は宗が上に立つことで変わっている。ここからどんな変化があるかなんかわからない。僕の方向性はあくまで宗を補佐し、希望に沿うこと。その中で他に欲しいのはミホさんだけだ。

 ステキなボディバランス。利巧とは言えないおつむの出来。『女は賢くないほうがイイ』と語るおじい様と近い趣味を自分が発揮したのはちょっとショックだったけれど、好きになったのがその条件にそっていたミホさんだっただけで、他のそういうタイプに惹かれるかといえばそうではないし、ミホさんだからいいのだと思う。

「き、恭君〜」

「赤くなるようなことでもないでしょう?」

 鎮さんは途中まで感心して聞いていたけれど、ドレスを脱がすの言葉からか羞恥に赤面した。

 どこの生娘ですか?

 年頃の男子でしょうが?

「そりゃ、空はどんな衣装でも綺麗だし、似合うし……」

 どこかぎこちなく言葉が紡がれる。はいはい。鎮さんにとって空さんは女神様ですよねーと言いたくなる。

 その衣装を剥ぎ取ってその先をオカズにするのは男子として間違ってませんからね?

「あー。惚気は結構ですが、惚気るのなら最後まで、」

 一呼吸整えて、間を挟ませないように語ってみる。


「高校卒業したら同棲はじめて生活資金が問題なさそうなら(時機を見て)入籍。おっきな式は無理でも空には白いウェディングドレスを着せてあげたくて、それから子供はできれば一人っ子じゃない方がいいかなぁ。反対されても空だけは守って一緒に居たいんだ。くらいまで惚気て下さいね。半端な惚気は潰れきれなくて対処に困ります。そして、呼び捨て失礼しました」

 言い切って頭を下げておく。急須の茶葉を変えて、ポットのお湯を湯飲みに注ぐ。待つ間に水羊羹か、ゼリー、プリンの缶を鎮さんに差し出す。受け取ったのは抹茶の水羊羹。カコンというプルタブの音を聞きながら湯飲みのお湯を急須へうつしていく。

 理想は収入源を固定してからの入籍プランかなぁ。斡旋してるバイト先(ウチの身内多し)から就職斡旋もらえたらラッキーなんだけどなぁ。

「俺が、今、対処に困ってる」

「そーですか? 落ち着いて見えますよ。お子さん好きでしょう?」

 うそ臭いと我ながら思う。落ち着いているようには見えない。落ち込んでるようには見えるけど。

「うん。ちっさい子って守ってあげなきゃって感じだし、可愛いと思う。……でも……」

「……女性はこわいですか?」

「……こわいってわけじゃ、ないと思う」

 こわいんですね。

「噛みつきますしね。男は女性に口で勝てないですし、力でねじ伏せれば後で集団が来ますし、こわいと言っても間違いじゃないですよ?」

 多分、慰めにもならない言葉。自分の未来を望まないためのブレーキがこれかなぁとも思うけれど確信はない。

「……」

 僕の言う前提に対する答えはまだでない。

 求めることは今の鎮さんにはキツイ、かな?

「結婚が、前提なのか、そこは考えの外なのかで対処は変わると思います。結婚を考慮から外すとしても、その上で生涯共にありたいというのなら、そこを納得させなきゃいけないじゃないですか。女性に対する恐怖感の質によっては沈黙を守ることは不誠実ですね。いいですか? もしこう唆す僕を欠片でも、『優しい』なんて誤解してはいけませんからね」

 考えられないところに指標を与えた存在に懐かれても困る。

 選択肢は無限に存在する。そのうちの限定されたいくつかを提案しているだけ。

 出来ることならば、宗が補佐しやすい優しい道を。暗い部分の少ない道を。

「んー? 優しいとおもうけど?」

「錯覚です。鎮さんにとって断定的な説明、こうせねばならないと言う促しを自分のものとして受け容れるのが楽だからに過ぎません。この対話は僕にとっても利益はありますが、ですが、ひっじょーに気に入らない行為なのも確かなんですよ」

「き、気に入らないんだ……」

 ひくりと鎮さんの表情がこわばる。ただでさえ顔色は悪い。追い詰めすぎた? どこかピンポイント地雷にハマッた?

 意思に本気で反しないレベルで誘導できて幸せになれればいいと思う。甘い箱庭で幸せを感受してられるのならそれでいいとすら思う。それが鎮さん自身が真に望んでようが拒否したい状況だろうが、僕には関係がないのだから。鎮さんの心境はどうでもいい。望みはどうでもいい。考えたくないなら考えなければイイ。言葉をあげる。安心できる『こうあるのは間違っている』を押し付けてあげます。

 僕は責任を持ちません。

 それでも、壊れた檻を直す手伝いをしましょう。僕自身の利益のために。

「自分で壊して自分が望む方向性に再構築依存崇拝させて飽きれば自分の邪魔にならないように捨てる。もしくはもっと使いよく調整して行く手法を身につけるための技術経験値にはなってますけどねぇ。でも、鎮さんを僕が壊したわけでもありませんし、初期調整をしたわけでもありませんし、僕に心酔することもないわけですし、あ。いりませんしね。つまり、他人のおもちゃのメンテしてるみたいな気分なんですよねぇ」

 それでも、そう。


「どこか、つまらないんです」


『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

青空空ちゃん話題でお借りしております。

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