7/17 自室にて
涼維
「小兄~」
芹香の呼び声。
共有の部屋に隆維は見えない。
「どうしたー。芹香」
「あのねぇ」
パタパタと駆けてくる。
「うんうん」
「小兄、天音おねーちゃんと喧嘩した?」
はぁ?
「してないけど?」
学校では相変わらずすべてをスルーだし。
何人か女子がスルーの壁にアタックしてるけど、天音ちゃんはわずらわしげな表情をするばかりだ。
「半分も?」
不思議そうに見上げてくる姿が愛らしい。
時々ドキッとするようなことを言うときもあるけれど、こういう仕草や表情は年相応だと思う。
「隆維? 喧嘩なんかしてないと思うけど?」
「ふぅん」
妙に大人っぽい表情で芹香が意味などなさげに呟く。
「ねぇ!」
「ん?」
「小兄は天音おねーちゃんのことどう思ってるの?」
わからないから反応できないでいると、芹香が小さく息を吐き、
「好き? どうでもいい? 嫌い?」
いったいこの子は何を言い出すんだ?
「どうでもいい系の好きかな?」
「半分は天音おねーちゃんに嫁にきてって言ってたよ?」
何か口にしてたら絶対吹いたよ。
「マジデスカ」
「うん。マジ。夏祭りの夜にね、そう言った後、花火で追い回されて天狗仮面に追い回したおねーちゃんが怒られてたけどね」
それどんな状況ですか?
つまり振られたのか?
その割には学校では態度変わらないし、天音ちゃんも基本こっちをスルー、気が向けば応答するって言うスタイルを貫いてるしなぁ。
ああ、デスロード以来、気に触ることを言うと暴力に出たり、罵ったりはしてくるようになったけどさ。
嬉しい変化ではないと思う。
男の子と間違えそうになる短い髪、無愛想。きつく睨んでくる。人の存在をスルー。
友人としてそういうものだと思えば面白い相手かもしれない。
約束は守るほうだし、うわべだけで流したりもするけど、ざっくり切り込んでもきてくれる。
でも、嫁って……
ねぇわぁ
隆維は最初からその意図で活動中でした。




