七月末のどっか
「空は俺でイイって言ってくれる。俺がイイって言ってくれる。空が俺のなのが嬉しいし、でも俺でいいのかがやっぱり不安なんだ。自分がダメなのはわかってて、でもどうだからダメってうまく説明できなくてさ、説明できればいいのに、何を言ってイイかわからない」
一呼吸おく。
「俺とさ、千秋ってさなんか噛み合わないことが多いのは確かでさ。たぶん、原因って俺が理解できないからだと思うんだ」
ぶらりと足を遊ばせる。
「はじめてあった時に、すごく笑顔が綺麗ですぐ好きになったけど、千秋には俺がいらなかったんだ」
手を伸ばして、笑ってくれたのに、間をおかずに嫌われた。
「三歳か四歳だったと思うんだ。それまではお互いがいることなんか知らなかったんだ。ランバートにいさんも何も言わなかったしね。後で聞いたんだ。ちょっとした環境実験だったって。同じように育つのか、引き合わせてからうまくいくのかってね。えーと幼児体験が与える影響力がどーこー説明してたかな? ま、検証実験の協力? 母さんが俺らの世話をできる精神状態じゃなかったらしいし、ギブアンドテイク、かなぁ。だからさ、会うまでのお互いの生活なんてお互いに知らない。ちっさかったし、いつだって人がいて、一人になることはタマにしかないようになったけどさ、『そうあるべき』は守らなきゃいけなかった。嫌われてるけどさ、千秋は俺が要らないわけじゃなくて、俺にはよくわからなくなる。誰かの、反応なんかわからない。自分が感じてるのはたぶん、混乱だと思う。だから、うまく説明ができないし、自分がわからない」
言ってて、ホントにそう? と自分で疑問がわいてくる。
「でもさ、空とは今だけの付き合いとかってつもりじゃなくて、ずっと一緒にいたいって思うんならさ、伏せる情報と、告げるべき情報はできるだけ決めたほうがいいって忠告貰ってさ、連絡先に泊めてくれるおねーさんたちのアドレス多いって言うのはやっぱりまずいのかなぁ? やましいことは何にもないんだけどさ。やっぱ気になるもん? 小梅センセ」
隼子ちゃんとか、ライフセーバーのおねーさんたちとか、たまたまあった人とか、桐子さんとかいろいろ。
「聞くってことはまずいと思っているんだろう?」
「まずいって仄めかされたからそう思ってるだけ。だから、えっと、参考意見聞きたかったんだ」
じっと見つめられて困る。
「うん……。空に話す前にさ、ちゃんとまとめれるかわっかんなくてさ」
たぶん、俺は答えを求めてるわけじゃないんだと思う。ただ、方向の指針とか間違いじゃないかが怖いんだと思う。
「あー。もう……。みっともねぇの」
ふと時計を見れば、清水センセが朝のランニングから戻ってくるであろう時間だった。
「んじゃ、おじゃまさっまー」
空と早朝デートだ。
「鎮」
呼び止められて振り返る。
「みっともなくても、迷っても、間違ったって、それは間違いじゃないんだぞ?」
向けられた眼差しはまっすぐで、気遣いが見える気がする。
でも、
「迷うのは良くても、間違いは間違いだからやっぱダメなんだと思うよ?」
間違ってるから、うまくいかなくて、間違わずに済むからなんとか生きていけるんだ。
そこを変えることができないんだ。変えなきゃ駄目なのかと尋ねたりはしない。どんな答えが返っても困ってしまうのがわかってるから。
「また顔出すねー」
困ったような苦笑い。
「今度は撮った写真見せにこい」
「いいよー。厳選して持ってくる」
「人物写真も、か?」
え?
「ないない。空の写真を見るのは俺だけでいいの!」
じゃあねと手を振って敷地から出る。
「お?」
「おはよーございまっす。お邪魔しました~」
ちょっと出遅れたかぁ。
清水センセに挨拶をして浜へと帰る。
空との時間、空にうまく伝えられるかなぁ?
『"うろな町の教育を考える会" 業務日誌』
http://book1.adouzi.eu.org/n6479bq/
『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』
青空空ちゃん(名前のみ
http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/
清水司先生(小梅センセ)清水センセ(ちらっと
お借りいたしました。




