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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014夏
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七月末の出来事

「ハメを外さないようにって長期休みの常套句だよなぁ」

「特に夏は薄着で開放的ですから」

「そういっちゃんは一歩踏み込むの?」

「いいえ。現状維持のつもりですよ?」

 探るように見られて苦笑。話ふったのこっちだから、しかたないけど。

「千秋先輩たちのアメリカでの予定は聞いてらっしゃるんですか?」

「いいや〜。聞いてないなー。別行動らしいけどさ。教えてもらってねぇ。芹香は多分、義姉さんのとこへお見舞いメインなんだろうけどね」

「鎮先輩は、お見舞いよかったんですか?」

「義姉さんは千秋と芹香がいれば満足だと思うよ。あと、義兄さんと息子」

 それが義姉さんの家族だから。

 天音ちゃんが公君と何か揉めてるみたいだけどいいのかと視線で問えば、チラ見して頷く。

「前の学校の交遊関係絡みでバタついてるみたいですね。天音も鈴音も」

「ふぅん」

「僕はあまり詳しくないんですよ。学校違いましたから」

 そういえば以前もそんなことを言ってたし、恭君も何か言ってた。

 鈴音ちゃんに関しては芹香がなんか言ってた気がするなぁ。

「それで、千秋先輩の渡米目的は?」

「見舞いと、たぶん進学の絡みの相談じゃないかな」

 あそこは特別扱い枠には要求が厳しくなるし、ネット講義メインでも実際の出席を要求されるんだろうなぁ。

 たぶん、今回の目的は面接と試験がメインかな?

 最近、イラついてたのは事実だし、何か新しいことをはじめるのは千秋にとっていいんだろうなと思う。新しい恋とは言わなくてもいい出会いが見つかるといいけどとは思うから。

 知ってるんですね。ってそういっちゃんが呟いたのが聞こえた。

「エルザが言ってたからね。俺も薦められたし、義兄さんも千秋に薦めてたんじゃないかなぁ」

 クリスマスに来てたし、春休みには千秋が行ってるし。

 千秋にとって向こうの家庭は居心地のいい場所のはずだし。義兄さんは義父さんと似た思考方向だから予測は立てやすい、のかな?



「鎮さん、宗の反応から判断するには普通は遠いですからね。あの子は基本箱入り世間知らずなんですから」

 恭君がアイスとホットコーヒーを差し出しながら苦笑する。

 そういっちゃんのマンションのベランダから見える夜景を撮ってみようと思って来ての会話だ。

 双子である恭君が言うのがおかしいとは思うけれど、隆維と涼維の関係を見ていてもあることなんだろうなと思う。

「恭君の意志でそういっちゃんを?」

 自分の分のコーヒーをおいてクッションに腰を下ろしてニコリと笑う。

「だって、僕が兄ですし、僕が家族として愛しているのは宗だけですからね。できる兄として見てもらうための努力を欠かす気はありませんでしたからね」

 けろりと肯定し、笑って他の兄妹の存在を切り捨てる。

「僕は、別に優しくないですよ? 他人にどんな幻想を描こうが勝手ですけどね、もし、僕が鎮さんに優しいことを言ってると感じるのでしたなら、少なくともそれが善意からだ。という誤解は気持ち悪いのでしないでくださいね」

 気持ち悪いって……ひどい。

「僕は別に宗のように鎮さんに関心ありませんし、ただ、そうあれば宗が喜ぶと思うからですから」

「それでもさ、嬉しいよ?」

 忠告をしてくれたりバイト紹介してくれたり、進学についてのアドバイスをくれたり。

 たぶん、それはぜんぶそういっちゃんのためなんだろうとは思う。

 コーヒーを一口飲んで笑顔。

「それは何より」

「やっぱり友達にはなれない?」

 尋ねてみる。

「友達程度にしかなれませんね。顔見知りや知人程度よりは時間を割いてるつもりですが?」

 軽くいやそうな表情の恭君の言葉が少し、嬉しかった。

 恭君が友達認識でいてくれるのが少し嬉しい。


「そっかー」

「にやつかれても気持ちわるいんですが?」


 気持ち悪いって言われてもそれほど棘を感じない。

「そーいえば、そういっちゃんは?」

「オンラインゲームでデート中ですよ。呼べば出てきますけど?」

 それって、健全なの? 不健全なの?

「デートの邪魔はしない。俺だって空との時間邪魔されたらいやだし」

「どこまで彼女と分かち合っていくんです?」

 あ。分かち合うってなんかいいな。

 恭君は軽く息を吐く。

「どこまで自分をみせて、いくんですか?」

「へ?」

「アイス、とけますよ?」

 慌ててスプーンを差し込む。

「独占執着、時に相手に重荷ですよ? 鎮さんにとって、宗が重くなる様に」

 冷たく甘い味。

「空に重い?」

「さぁ、ヒトゴトですし、鎮さんは状況によっては、空さんが別の人を好き。といったら身を引けるんでしょう?」

 空が、他を好き?

 俺は空から離れれる?

「僕は、宗だけが大事だったので、宗が他に感情を傾けるのが許せない程度には心が狭いんです。折り合いをつけるのって難しいですからね。まぁ、宗に否定系の眼差しで見られた時がちょっと快感だったので、まぁいいかなぁと今にいたるわけですが」

 え?

 いや、待とう。軽く瞳を潤ませて横を向かれても流石に俺も反応に困る!

「縁が切れるわけでもないですしね。行動のパターンと役割が変化するだけです」

 動揺する爆弾発言をしておいてさらりと流す。

「見られ方をコントロールしたいのは誰にだってありますよ。鎮さんが、千秋さんの帰国タイミングを操作可能なようにね」

 真っ直ぐに観察するように見られて、微かに動揺する。

「いいんじゃないですか? まぁ、手を貸せそうな部分は手を貸しますよ? 宗がそれを望むでしょうから」

 小さく笑われる。

「僕は、宗が貴方を望む限り、敵には回りませんよ。完全な味方ともいえないので不確かな友人。それが居心地のいいところでしょうね」

 利害利害、と笑う姿は去年の夏のノワールを思い出させる。

「友人?」

「友人でしょう?」

 そっか。

「俺、空に重いのかなぁ?」

「重いですよ。一般的に。あと、不用意な女性関係は控えましょうね?」

 女性関係?

「メアド、不特定多数の女性の名前ですよね?」

 あー、多い?

「女性の部屋にけっこうお泊りいってらっしゃいますよね?」

 えーっと、最近はないよ?

「不特定の相手とキスしてらっしゃいますよね?」

 うん、ただの挨拶だけどな。男とが多い気もするけど。

「気にする女性は多いかと」

「でも俺が大事なのは空だし」

 問題ないよな?

 なに?

 そのうわーって感じのまなざしは。






『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

青空空ちゃん話題にお借りしてます♪

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