7/25夕食時のお話
夕食時に話をふる。
「芹香、夏休み一旦、マンディ姉さんのとこ帰るよ」
デザートの桃のタルトをかじる動きを止めてきょとりされる。
「マンディマム?」
「そ。去年も帰ってないだろ?」
春休みもGWにも帰ってない。さーやちゃんには先に話を通してある。
「ベルベルと汐ねぇとの時間〜」
軽く渋る芹香。
「今、体調悪いらしいんだ。会いたがってるから、……鎮にも会いたがってるらしいんだけどね」
「んー。帰りたくないな」
鎮は即答。
「わかってるよ。鎮は外泊禁止ね。若葉や碧バート兄じゃ頼りないしね。空ねぇなら連れ込んでいいと思うけど、他の連れ込みはNGで」
「期間は?」
行く気が出たらしい芹香が確認してくる。
「夏休み初期から長くとも八月半ばまで」
「期間安定してないの?」
「俺にも都合があるんだよ」
考えるような仕草の芹香は帰ってもいい気分になっている。それはいいコトなんだけど、すでに決定事項だから。
「受験大丈夫?」
若葉がコーヒーをちびちびやりながら聞いてくる。
「その関連もあっての帰国。上のにーさんの提案でさ」
大学の通信講座。
ウチが抱えている大学でもやっているということで紹介された。
ただ、条件があるからそれをクリアしないといけないんだよなぁ。
「ネット社会だよね」
「うん、便利」
本当にそう思う。
扱いは気をつけるべきかもしれないけれど、いろんなことができる。
「あんまり長期はうーん」
まだ悩んでる芹香に笑う。
「いざとなればミツルさんもいるし、移動なら頼めるだろ?」
多分他でも。
「その間自分は楽しむつもりね!」
ビシッと指を突きつけられる。やめろって言ってるだろ?
まったくそれになにを言い出すんだか。
「だって私は病院の方でしょ? 調子が悪いんなら」
「そうだけど、楽しむのに場所を気にするような性格でもないだろ?」
芹香なら気にしないだろう。ジークとかもいるし。
それに、
「たぶん、楽しむ余裕があるかって言うと怪しいかなぁ?」
お互いにさ、楽しめるといいよな? 言い含めておく。それから、じっと見られている視線にようやく向き合う。
「なに? 鎮も一緒来る?」
からかうように明るく誘えば思ったとおり首を横に振られる。
だよね。
それでもうかがうようなまなざしが気にしていると示していて面白い。
俺の行動が理解できないって、視線が告げてる。
ほっといて欲しいんだろ? 希望通りだろ? 色々、向こうで探るつもりだけどな?
「ちょっと安心、総督にのっとられちゃったら伯父さん絶対怒りそうだしさー、若葉や碧はアテにならないし、ああ、碧は普通に中二の夏を楽しめばいいと思ってるからだよ? 長船君とか、公志郎君とか人付き合いの練習、練習」
公志郎君は、今年の夏も来るはずだしな。
笑いながらアテにならないと言われて不満そうだった碧にフォローを入れる。
「ま、若葉はマジでアテにならないし。お願いだから自傷は自室でやってね? 後で掃除がめんどくさいから」
心がける。と笑い、上げられたTシャツの袖から覗く腕にはテーピング。アテにならないのは当たり前ととらえてる。それが若葉。いつ自傷してるかもわからない。
そこもあって、さーやちゃんだけじゃ不安だしね。
ところで、
「ミラ」
呼びかけると顔を上げる。手にはジャムの瓶。
桃のタルトは甘め。芹香はそれほど『甘党!』ってわけじゃないが、鎮と隆維涼維ミラちゃんは甘党。
ミラちゃんのスイーツ作りでは蜂蜜がほぼ一瓶に砂糖も大量に減っていてビビッたのはいい思い出。
鎮はいけるって食べてたし、隆維と涼維は懐かしいって言いながら食べてたけどさ。
こてんと首をかしげる。『なぁに』という表情がタルトを見て『ち』っと舌打ちしそうな表情に変わる。
「カロリーのとり過ぎになるから程ほどに」
忠告にぷぅと頬を膨らませる。
「ちゃんと消費すルわ」
ねぇ、どこに消えてるの?
その熱量。
バニラアイスも生クリームも添えてあるよね?
『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』
http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/
青空空ちゃん汐ちゃん話題で♪




