終業式の日
終業式いつだったんだろう?
「椎野郁臣! 話があるの。ちょーっとこっちに来てもらいましょうか?」
びしりと突きつけられる指はまっすぐに。
目立たない転校生椎野郁臣に向けられている。
びくりとする者、いつものことかと傍観する者反応はさまざまだ。
おどおどと、周囲を見回しても興味なさげに手を振られるばかり。
黄緑の瞳がきつさを増してプラチナブロンドがさらりと払われる。
「いいから来る! ご希望通りいじめてあげるわよ!」
少年の手を引いて教室を出て行く少女。一学期最後の日だというのに災難な光景だ。
「いじめ宣言」
「でも、セリちゃんだし」
「笹筒先生か、小林先生呼んどく?」
「大丈夫でしょ。じゃあ、ラジオ体操でねー」
「うん。またねー」
二人が去った後の教室の空気はそんな感じ。
場所は給食室と壁の間の狭い場所。いつもしまってる裏門の近く。
「避けてるよね。気に入らないわけ?」
キツイ口調で言われて身がすくむ。
だって彼女はあの子の友達だ。
仲良くなれるはずがない。
視線が下がる。
あの子が転校してからのまわりの変わりようを思い出して耳が熱くなる。
「あのさぁ、べるべるが苦手なら、時間わけてもいいよ? ミラなら快諾してくれるし、アリアも遊びにきてるだろうしね。郁は私と一緒にいるのがイヤなわけ? とりあえず、そこははっきりさせてちょうだい!」
彼女は何を言ってるんだろう?
わからない。
「なに?」
「だって、山辺さんに」
「うん。問題あるんだよね?」
問われて頷く。
「で、それが私と何の関係があるの?」
え?
「だぁかぁら、ソレ、私と関係ないよね? いつか、郁がべるべると解決したければ、かいけつする問題だよね? 事情を知らない状況で踏み込んだりしないわよ?」
え?
「責めないの?」
「なにを?」
「だって、山辺さんの友達なんでしょう?」
「そうよ。好敵手から親友に。定番よね!」
なんだろう? 会話がすれ違ってる。
「じゃあ!」
「だから、私はべるべるの友達として郁に向き合ってるんじゃなくて、私として向き合ってるの。私と郁との友達付合いしていくにあたって、はっきり言えば、どうしてべるべるが関わるの?」
え?
どうしてって、友達だから?
「友達だからってすべてをささげなきゃいけないわけはないし、だからね、私と遊びたいのか遊びたくないのかはっきりしなさい!」
びしりと指を突きつけて言い切った後、次の瞬間には荷物置いてどこそこに待ち合わせと決めはじめる姿は僕の意思をないがしろ。
「なによ。遊びたくないって言うの? あ、ちゃんと帽子と水分は忘れちゃダメよ? 郁は貧弱っぽいんだから」
『ワルい奴ら』
http://book1.adouzi.eu.org/n9177by/
より笹筒先生
『"うろな町の教育を考える会" 業務日誌』
http://book1.adouzi.eu.org/n6479bq/
より小林先生
お名前のみお借りいたしました




