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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014夏
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再会

「べーるべる、この子ねー。うちのクラスの転入生♪ まだこの町に来たところだから案内してあげるんだ!」

 笑顔で芹香ちゃんが紹介してくる男の子。

 俯き加減で視線が少し泳いでいたけど、私を確認してびくりと固まる。

「ぇ?」

 半歩、後退した。

 たぶん、私も。

「なん、で、やまの、が?」

「……椎野しいのくん……」

 どうしているんだろう? おんなじ言葉を返したい。

「あれ? 知り合い?」

 芹香ちゃんが不思議そうに少し警戒気味に首をかしげる。

「……うん、前の学校で同じクラスだったの」

「ふぅん」

 このままだと一緒にって芹香ちゃんが言い出しそうで。

「ごめん、帰るね」

 ぐるぐる回る。

 気持ち悪い。

 どうしているんだろう。

「鈴音?」

 碧おにーちゃんと勉強してた天音お姉ちゃんがかばんをもって寄ってくる。

 帰るって言ってたの聞こえたのかな?

「帰る」

「うん。帰ろ」

 手をつないで帰り道。

「椎野くんがいたの」

「そっか」

 お姉ちゃんは知ってたのかな。

 私は椎野君が苦手。

 髪を引っ張ってきたり、意地悪したりしてくる子だったから。

 それを言えば、お兄ちゃんたちは「男の子だし」で済ませてしまう。

 最初はそうだった。

 ちくちくとおなかが痛くなったり、学校に行きたくなくなっていった。

 すごく嫌だった。

 でも、ある程度自分で対処するがお家の方針だからがんばった。

 なにで口げんかになったときか忘れた。


『ははおやがいないからまともなきょういくじゃないんだろ』


 たぶん、本人じゃなくて、まわりの大人がそういってたから私をいじってもいいって思ったんだって気がついた。

 反抗してもしなくても、『何をしてもいい』と思ってるのがわかった。

 そこまでいくと公志郎兄さんが助けてくれた。

 そこから転校する話になった。


 恭一郎兄様が「もう大丈夫」って笑ってくれたのに。

「南小だから、そうは会わないと思うけどね」

 お姉ちゃんが言ってくれる。



 でも、こわいんだよ?







◆◇◆






「引っ越すわ」

 疲れたお母様がそう言った。

 美しく自慢のお母様。

「二学期からは一緒だから、夏休みにはそっちにいくからさ」

 中学生の兄様が言う。

「すまない」

 お父様がお母様に謝って。お母様は疲れきった表情で頭を横に振る。

「ごめんなさいね」

 両親は仲が良い。

 知ってる。この状況は僕のせいだった。

 一年生のころから一緒のクラスメイト。

 父兄参観に来るのが父親かと思っていたら叔父さんだったりしてた。

 最初はなんでだろうって思った。

 だってお母様やお父様が来てくれるものだから。

 髪を引いたら叩かれた。

 叩かれた事をお母様に言いつければ、「酷い子ね」と僕の味方。

 僕は学校に言いに行こうとするお母様を止める。

 お父様とお母様がしている話であの子に『お母様』がいないことを知る。

『だから、しつけが行き届いてないのね』よくわからないお母様の言葉。

きっとそうなんだと思ってた。

三年生のはじめ頃からあの子はどうしてか学校に来なくなった。

しばらくして転校したことを知らされた。

兄様が困った表情で、僕を見てた。

そこで教えてもらったこと。


小さなころの兄様が車道に出かけたところを女のヒトに助けてもらった話。

だからその人の分もがんばると決めてる兄様はかっこいいと思う。

人を助けることのできるヒトになりたいと。


それがあの子のお母様だった。


 でも転校してしまったから何も言えない。


そんな時に、僕のあの子への接し方が『いじめ』だったと言われた。

 僕にそんなつもりはなくてただからかってただけで。

 知りたかっただけで。

 それでもクラスの子たちは僕をさけだした。

 

 再会したあの子は僕を見て、怯えて、逃げた。


 それが僕のやったこと?



「ねぇ、べるべるとお友達だったの?」

 この町で、笑いながらひっぱってくれた子が僕を見てる。




 僕は逃げ出したんだ。


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