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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014夏
577/823

7/18  千秋 びーちでこっそり

「ムカつく」

「ウチの手伝いがかぁ?」

「それはいーの。ムカつくのは鎮とか、だよ」

「タバコいく?」

「受験生に差し出してんじゃねーよ。お前も未成年!」

「いーじゃん。あそこで花火やってっし、煙ぐらい目立たねぇって」

「匂う!」

「匂い違うもんねぇ」

逸美(いつみ)も、うっせえよ」


 海の家『ARIKA』からは適度に距離があり、海開き前とはいえ、潮風を楽しみに来ている者や散歩中、薄闇の中気の早い花火をやってるメンバーとかもいるのだ。


 そんな中で戯れてる彼らはひっそりとした死角になりやすいポイントで駄弁っていた。


 (たける)に責めるように言われて、しょぼつく逸美の肩を千秋が気にするなとばかりに軽く叩く。逸美は大きな声を向けられたりするコトが苦手だったし、健は特に意図しなくても威嚇しているようにも思える対応が常だ。


 そんな中メンバーの一人・健が煙草を取り出し、火をつけようとするたびに千秋が取りあげる。先程から繰り返されるやりとりだった。


「それでー。何にムカつくんだよ? 鎮が現在リア充なコトかぁー?」

 皮肉るように言われて千秋は舌打ちで返す。

「そこは、まぁ、いいんだよ」

「含みがあるなぁ」

 ニヤニヤする健に千秋がうざそうな視線を向ける。

 小五の四月。うろなに越してきて『親なし』とからかわれ、喧嘩に発展して以来の仲だ。一学年上の逸美とは探検中に知り合った。

「ブラコンもほどほどにな」

「青空の空さんに不満があるわけじゃないでしょ?」

 健の嫌味を込めたたしなめと、どう言っていいかわからないなりの逸美の言葉に千秋は静かに黙りこむ。


「鎮にはもったいない相手だと思ってるよ?」

 そっぽを向きつつこぼした千秋を見ながら、視線を交わし合う健と逸美。仕方なさげに笑って視線を外す。

 見てる限り、千秋は好きな子はつい虐めてしまう虐めっ子気質がある。ただし、それは今の所兄である鎮にしか向けられていない。素直になれないままに高校まできた感じで。

 それでも、その当人しずめの言葉を言葉のまま疑わないところもあるのだ。兄に嘘をつかれると想定しない千秋の様が二人に苦笑を浮かばせるのだが、もちろん、千秋は気がつかない。

 視線の先には花火で遊ぶちびっこ達。

 少し離れた場所でちらちらあがる花火の光は話題のリア充。


「俺だけのけ者にされてる感じでさ、やーな感じなんだよなぁ」

 つまらなげに吐き出す言葉に二人は苦笑。

「全部が全部、話せるコトばっかじゃないさ」

「知るコトが理解するコトにつながるとも限らないもんねぇ」


「まぁ、そうなんだけどさ。でもちゃんとお互いを知りたいっていうのもあるし、お互いの役割分担的なものがあるならわかっときたいよーな気もするし」

「それ、知らずにそのまま今まで通りでいいんじゃね?」

「ヤダよ」

「うわっ。即答かよ。わがままなっ」

「なんで役割分担なんて思ったの?」

「んー。直樹さんにね、どーも、うだうだしてるの菊花たちがチクったらしーからさー。心配、させたんだなーと思う。海ねぇにも心配かけたしさー。……ありがたいんだけどさ」

「うら。俺も心配してやっただろーが」

「いや、お前は余計なコトを言っただけだろ?」

「ひでぇ! 聞いたか!? 逸美」

「直樹さんと海さんかぁ。千秋が話を聞く気になれる少ない候補だよね」

「おい、逸美……、俺は?」

 ふってスルーされた健が不満げに逸美を睨む。それに逸美は不思議そうに健の目を覗き込む。

「なに言ってんの? 健君の発言なんて流されるか、反発される以外の道があるわけないじゃない?」

「い、逸美の中の俺のイメージって……」

 流れ弾に被弾でダメージを受けるのは千秋。

「話の持っていき方では、澄さんにだって反発すると思うし、伯父さんの言葉だって素直に受け入れられるわけじゃないよね?」

 疑問符確認で夜空を仰ぐ千秋。夜空には宵月。暑い夏の夜の海半分の月が浮かぶ。

 ひとふた呼吸おいて、口を開く。

「まぁ、相手は選ぶなぁ」

「千秋は大事なところを譲るのを嫌うから、……でもさ」

「でも?」

「鎮が同じ手法を選ぶのかって言うと違うからさ、そこを考えてアプローチしなきゃ、距離は開くと思うんだよ? 千秋と鎮は違うんだからさ」

 言い過ぎたかなと、千秋の表情を伺う逸美。

「違うのはわかってるよ。でなきゃこじれない」

 俯いて呟くようにもらす千秋の言葉に逸美と健は視線を交わす。

「まー。今、緩衝材いねぇしなぁ。こじれすぎると仲直りが難しくなるぜ?」

「緩衝材ってなんだよ」

「いとこのチビども」

「隆維達か」

「連絡あった?」

「親戚回りするハメになってるらしいよ。でもさ、心配されてんのはわかるし、そっとしておいてやることも大事なのかもしれないけどさ、その時に、『そのまま知らないで』って望まれるのはさ、俺としてはイヤなんだ」

「それ、ちょっとは認めてやれ」

「え?」

「せっかく自己主張してるんだから、たまには譲ってあげなよ」

「えぇ? なんか反応、おかしくね?」

 頷きながら言う友人二人は揃って首をかしげる。

「おかしくねぇな」

「ふつうだよ?」

「ぇええ?」

 ぽんぽんとそれぞれに肩を叩かれる。

「もう少し、自分の考えつめろ」

「見守ることも大事だよ?」

「ねぇ! お前らの中の俺っていったいどんな奴なんだよ!?」



『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

より青空海ちゃん


『うろな担当見習いの覚え書き』

http://book1.adouzi.eu.org/n0755bz/

『うろな2代目業務日誌』

http://book1.adouzi.eu.org/n0460cb/ 

『"うろな町の教育を考える会" 業務日誌』

http://book1.adouzi.eu.org/n6479bq/

より高原兄弟を話題としてお借りいたしました^^

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