7/14 雨
空気を冷やす雨。
うろな駅からのんびり傘をさして中学があるという方向に歩く。
まだ昼過ぎだけれど、そろそろ短縮に入ってるんじゃないかとも思うし、直接あっちゃんのトコに行くにはためらわれるし、高校の方へ様子を見に行くのも躊躇われた。
碧ちゃんの様子を見に行くのが楽だからそれを選ぶ。
「え? わかちゃん?」
校門から流れ出てきた懐かしい制服。一度だけ大阪に帰ってきたしーちゃんが着てたものと同じ。
「碧ちゃんひっさー。そちら、お友達?」
碧ちゃんと一緒にいたのは癖ッ毛の少女と、ひょろっとした感じの少年。
「うん。りゅーちゃんとりょーちゃんつながりで。クラスは違うけど。どうしたの?」
不安そうに弟分に見上げられる。
お友達はそっと様子を見てる感じ。
「バイト先でうまくいかなくてさー、かーさんが怒るからあっちゃんとこに引き篭もらせてもらおうと思って逃げてきた」
瞬間の沈黙、碧ちゃんの視線が彷徨う。
「バイト先で? 自宅で?」
理由が想像ついたらしく問いかけられる。声がちょっとイラついてる。
「ん。両方。つい、ね」
途端、少し道を進んでから壁際へ。ズルズルと腕を引かれる。
「ついじゃねーよ! 暁兄ぃ、日本にいないよ?」
「知ってる。掃除と、設備メンテしとくんならいいってさ」
「甘い。甘いよ暁兄ぃ」
呆れて怒って首を振る碧ちゃん。
「みどりー?」
男の子の方が声をかけてくる。
「長船、こっちは大阪の日生の家で一緒に住んでた兄貴分で津積若葉」
「よろしくね。長船君」
紹介されたので挨拶。
「あ、はじめまして。よろしくお願いします。よければカットの割引しますから美容室シェーンをよろしく♪」
伸びている髪がほぼ手入れ無しなのがわかるのかな?
「緊張しちゃうから無理かもー」
「えー」
軽く楽しい時間。会話を続けるのは得意じゃないんだ。
「長船、悪い」
「ん、また明日な。英にーちゃんが五目並べ今度は勝つってさ」
二手に分かれる。
女の子も一つ頭を下げて帰り道についた。
「あとでね」
「んー」
少女と碧ちゃんの交流。
「碧ちゃん、あの子は?」
「山辺天音。りゅーちゃん、りょーちゃんのお気にで、妹の鈴音ちゃんが芹ちゃんの友達」
芹ちゃん。
「会ったコトないんだよね〜。一緒に暮らしていくのが不安かなー。放置してくれたらイイけどなぁ」
「ハキハキ、きっぱりした子だよ」
軽い情報交換。
弟の帆貴が元気なコト、しーちゃんが生きてて、彼女がいるらしいコト(ちょー意外)ちーちゃんは適度にいじられてるコトとかを聞く。
「ちーちゃんに彼女とかは?」
「ん。見てる限り遊び相手以上の人はいないみたい。時々、どっか遠く見てる風な感じあるけど、雰囲気作りか本気かわかんないかな?」
あー。
そう言うお年頃って奴?
そう言う時期ってあるよなー。
「しーちゃんが彼女かぁ」
幸せ、なのかなぁ?
しーちゃんもクセが強いからなぁ。
あー。
「ざっくりヤりたい」
「往来で、唐突に自傷宣言すんな! 迷惑だ!」
碧ちゃんが怒鳴る。
怒りっぽいなー。
「カルシウム不足?」
あんまり怒りっぽいのはどうかと思うよ?
「人生目立ちたくない堅実人生を目指すなら柔軟にかわしていかないとなー」
他人に心をかけすぎると、折れちゃうよ?
こう、生きていきたいって目標があるんだろう? 手を差し伸べてもらえる幸運はそんなにないんだからさ。




