7/16 ガラス張りの
「おかえりなさい」
放り投げられた拭くものでざっくりゼリーの足や身体を拭く。
「今日はゼリーは一人で寝るのよ! 千秋兄はらちっていくわ!」
「何処へだよ!?」
拉致ってなんだ?
「え? 中二階の畳エリア」
レストランスペースの中二階。ボードゲームや、お昼寝セット常備エリアだ。
「腹出すなよ?」
「出さないわよ」
拭き終わったゼリーをミラちゃんに引き渡し、見送る。
ミラちゃんも誘ったら笑って断られた。
レストランスペースは動物は基本禁止だから。
鎮が芹香に話す怪談は日本主流のじっとりした迫りくるタイプではなくて、実際的なスプラッタネタに落ち着く。
妙にリアリティを混入して面白楽しく語られる猟奇ネタ。やめろって言ってんだけどなぁ。
中二階にはすでに寝床が準備されていて、鎮も参加のようだった。
手を伸ばして、鎮が芹香を抱き上げる。階段を数段分。
「次の夏の夜を涼しく過ごすネタはなにがイイかな?」
軽くはたいて、「やめろ」と止める。鎮は笑って芹香を覗き込んで「怖い?」
「こわい? 怖くなんてないに決まってるでしょう?」
「ん。がんばって面白いネタ探しとくな」
「期待してるわ!」
ビビってんなら芹香もやめとけ……。
へばりつく芹香は早々に眠りに落ちた。
新しくクラスに男の子が来て超大人しい感じだとか、そんな話題はきっとホラーよけ。
ここまで露骨なのに鎮は強がりな部分を本音と読み取る。
スキンシップはちょっと過多。
うざがると一瞬、不思議そうな表情。
ああ、もう。
「ごまかせると思ってるだろ。隠し事が多いのも全部さ」
「うん。ごまかされてて? 千秋は多分、知らない方がいいんだ」
ストレートな言葉とやわらかい笑顔。
「気にイラねぇ」
「大事なのは、空。それと芹香と千秋。順位があるなら千秋が一番低い。千秋は自分で守れるだろう?」
「知らないのに? なにからだよ?」
「知らないコトも防御力なんだよ」
答える気のない言葉。
「守ってなんかイラねぇよ。……僕は僕が選んだ道を行く。守ってなんか欲しくないんだ」
「愛してるから、守りたいよ?」
「言われた、からだろ? その他の誰かと僕の位置は差のないものだろ?」
髪をゆるく撫でられる。
「弟は、千秋だけだよ。他の誰かが同じ位置に来るコトなんかないんだ。あのさ」
「ぁん?」
「俺、やっぱり千秋は情報不足でいて欲しい」
なっ!!
「ふっ」
口を手のひらで抑えられる、視線は芹香。
舌打ちしたくなる。
「ふざけてんじゃねーよ」
「ふざけてないって」
のんきに笑いやがって、ムカつく。
話題にちらりと青空空ちゃんお借りしました。




