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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014夏
570/823

7/7 待ち受け画面

「大丈夫? 職員室まで?」

 赤毛の先輩が廊下に散乱させてしまった提出物を集めるのを手伝ってくれる。

「そっち行くし、半分持つよ」

 そう言って、持ってくれるのは明らかに半分以上。

 ついピアスに視線がいく。

 照れたように先輩が小さく、「内緒な」と笑う。

「ナンパ用ですか?」

 照れ笑いまで計算されてたナンパなら嫌だなと思った。

「んー? 違うって。外し忘れてただけ。気が付かせてくれてありがと」

 柔らかな眼差しは、深緑。

「鎮先輩、彼女いるよ」

 教室に戻ってから出会いを少しはしゃぐ。囁かれた有坂さんの言葉に動揺する。

「その人だって限らないじゃない」

 そう思いあがくけど、恋人がいるのはしっくりくる。優しいし、かっこよかった。でも、落ちた物を拾ってもらって手伝ってもらってコロリといきかけるほど、軽くなんかないんだ。




「なぁに、下級生引っ掛けてるのよ」

 外したピアスをしまっていると菊花ちゃんが絡んでくる。

「引っ掛けてねーよ。人聞きが悪い」

「不用意に親切にして罪だわ」

「待って、親切にしてなんで怒られんの?!」

「優しくされて誤解されたらどうするの?」

 首を傾げる。

「誤解? なにを?」

 菊花ちゃんがため息をつく。呆れた感じ。俺、なんか間違えた?

 心がざらりとする不安感。

 うまく、振る舞えてない?

 そっとスマホに手を伸ばす。待ち受け画面は手持ち花火。チラリと空の浴衣越しの膝。

 ホントは、空の寝顔を待ち受けにしたいけど、誰かに見られる可能性が上がるからできない。せめて覗き見防止シートを買ってからだと思う。

 画面の空を見て、少し落ち着く。

「困った奴」そう苦笑する菊花ちゃんに苦笑で返す。

 自分が何かまずいコトをしたのかがわからない。



 不安感に駆られる。



 夏祭りの夜。

 隆維涼維がいないのが不思議だった。

 自分のとった行動が理解できなかった。



 怖くて、寂しかった。


 甘い匂いが記憶に結びつく。

「今日はそばに居て欲しいんだ」

 急に失せた食欲。甘い匂いに普段なら動く手が動かない。

「うん……。そばに、いるよ。鎮君の、そばにいさせて」

 嬉しい。でも切ない。怖い。どうしてこう傷つけるコトばかりうまくなるんだろう?

「いないと不安になるんだ」

 いても不安なんだ。俺がこの手で傷つけそうで。

「大丈夫。大丈夫だよ。ちゃんといるから……」

 空に言葉(こえ)をもらって、触れてもらって、温もりと脈動でようやく安心する。

「本当はあのまま……って思うとこわいんだ。空、……ダメかな?」

 俺のわがままなんだ。空に甘えてる。甘えていい資格なんか本当はないはずなのに。

 空はふるりと首を振って、優しくあたたかくぎゅうと抱きしめてくれる。

 不安が解ければ愛しくてたまらない。



 会いたい。声が聞きたい。

 でも邪魔はしたくない。


 それでも、そばにいたくて、その温もりに触れていたくて仕方ない。


「うーっ。空へ愛が募りすぎて依存MAX〜」


 机に突っ伏す。


「彼女いますって名札付けとけー」

「なんだよ。それー?」



『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

青空空ちゃんお借りいたしました

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