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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014夏
565/823

7/5 夏祭りの夜 【半月の海】Ⅲ

「そら」

「行こう? 芹香ちゃんが心配だよ」

 空の手が迷いなく俺の手をとる。

「……こわくない、のか?」

 ぎゅっと力がこもる。

「心配だよね。早く止血だけでもしてあげなきゃ」

 あれ?

 何か違う?

 何がってわからないけど。

 空は砂に散った血痕を見てる。

 セリの拒絶が強くて手をだしあぐねてるミツル。表情は苦笑。

 空に引かれるまま歩く。

 そこにいるのが嬉しい。

 離れないのが嬉しい。

 空が触れてくれる。

「……また、傷つけるかもしれない……」

 空の手に力がこもる。生温い感触。

「心配だよね。痛そうだったもん」

 その眼差しは先を行くセリ。

 浜や階段には、ぱたりぱたりと血痕が残る。見上げれば、時折伸ばされるミツルの手を邪険に払い、あくまで自力で行く。その時に出血が増えるようで痕跡が強く残る。あとでしっかり洗い流さないとな。

「鎮くん?」

 立ち止まった俺を振り返り、「行こう」とうながす空。


 こぼれる血

 やくそく

「……だったのに。セシリアママとの」

 守らなきゃいけないのに。

「やくそく?」

 悩むような声でつぶやかれる空の言葉で、音にしていたんだなと知る。

「守らなきゃいけないのに」

「じゃあ、早くそばにいってあげなきゃ! 大丈夫。……そばにいるの。だからそばにいてあげて。……芹香ちゃんがこれ以上傷つかないように……ね?」

 なんでだろう?

 納得できるのに納得できない。

 面白くない。

「空。」

 だって、寄るなって言われたんだ。セリに俺はいらないんだ。千秋もセリも母さんも。当たり前かなぁって思う。同じ場所にいけない。

 伯父さんや波織ちゃんが言うように「お兄ちゃん」にもなりきれない。

 綺麗な空に俺なんかが触っちゃいけない。

「……ごめん」

 欲しがっちゃダメなんだ。

 欲しがって、俺のって思ったから……。

 ぎゅうっと抱きしめられて頬に指を感じる。

「あとで、ね。芹香ちゃんを迎えにいってあげなきゃ、一人じゃないのに独りだって思わせちゃダメ。鎮くんも千秋君も私たちだっているんだから。ねぇ、鎮くん」

 真っ直ぐに覗き込んでくる黒い瞳を見下ろす。

「……っ、は、離さないで……ね」

 ふわり感じる唇の感触は幻のように。

 くいっと手を引かれる。

「早く追いついてあげよ」

 嬉しくて不愉快。

 わけがわからない。

「そらはいつ俺がいらなくなる?」

 自分で何を言ってるのかがよく、わからない。


『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

青空空ちゃんお借りしております~

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