7/5 夏祭りデート 【午後】
ポカーンと見送る榊さんを遠目に見守る。
「町長さん楽しそうだね」
「リベンジ成功だもんなー。盛り上がってた」
うんうんと頷く。
「榊さんガンバ〜」
小声でエールを送っておいて、次は何をするかを考える。
まぁ、空を見てるだけでも時間は経つけどさ。
さっきとりあえずと、引き換えた焼きそばとたこ焼き。食べようにも微妙に手が塞がっているので、空が消費中のわたあめを横から略奪する。
「あっ」
「お腹部分からばくんはダメだった?」
遅めのお昼か飲み会か、はたまた早めのおやつなのか、空席探しは難しい。
企画課のにーちゃんがこっそり? くれたかき氷。
そっちも早く食べなきゃ溶けるしなぁ。
よし!
「千秋にまた作ってもらおう!」
熊わたあめ。
「もしかしたら芸風増えてるかもだしさ。食券まだあるしさ」
仕方なさそうな空が俺が食い尽くして残った割り箸を見て笑ってる。
「そーら、片手空いたろ? 食べさせてー」
本日おねだり二回目ー♪
「鎮さん、空ねーさん、席キープ♪ 一緒につまもーよ」
公志郎君の声。
「ありがとう。公志郎くん」
「ん〜ん。柊子も喜ぶし、邪魔でさえなければ」
ちらりと感じる空の眼差し。
うん。いいと思うよ?
人前、はずかしーんだよね。わかってるって。
俺だってそこまで子供じゃねぇしぃ。
なんか空がくすくす笑ってる。可愛いんだけどさー。ねー、何が楽しかったのー?
空が食べようとしたたこ焼きを横から略奪。強制あーんだ。強制。
「しっ、鎮くん……」
照れてる空可愛い。
「公志郎さん、」
「んー?」
横で柊子さんが切り分けたお好み焼きを公志郎君に差し出してる。
「一人で食えるって」
そう言ったあと、おとなしく目を閉じてあーんをする公志郎君は柊子さんに逆らえない惚れっぷりを発揮していた。
手元にはイラストの入った団扇。
午前中にやっていたサイン会の団扇だった。
公志郎君がパタリと扇ぐ。
「朝のサイン会来てたの?」
話題を振れば首が横に振られる。
「出にねー、頼んどいたの」
パッと広げられる三種類。
「地域限定誌の初サイン会の引き換え団扇だって言うし、記念。記念♪」
「あー。使えるしなー」
「鎮さん、基本こーいうのは保存用だって」
渋々自分で食べながら話題を進める。
「使えない団扇に何の価値が?」
「こういう限定イラストに価値があるんだって。わっかんないかなー?」
んー。作風が好きってことかな?
しばらく、こだわりを聞きながら食べる。途中でほかの食券も引き換えたり、隆維達がつまみに来たりしてた。
そして舞台では気を取り直した榊さんがカラオケの進行を始めていた。
「去年はさ。カラオケ参加したなー。基本はミアノアの保護者だったけど」
「そうなの?」
「うん。初カラスマントで面白かったかな?」
空に去年のことを話してると、カラオケが盛り上がりはじめる。
もちろん、アルコール入ってるおっちゃん達も盛り上がって、「しすコン」「おもちゃやー」と合いの手を入れてたりする。
去年は清水先生たちと男子中高生が盛り上がってたなー。
公志郎君と交代で水分を買いに行ったりちびっ子の面倒を引き受けたり、あれ? デート中だよなと思いつつ過す。
そして、企画課のにーさん達の漫才でおおいに笑う。
ビーチネタも含まれてるのですっごくリアルに面白い。
「空、大丈夫? 暑過ぎね? 足大丈夫?」
そっと頬に手を差し込むとびくりと空が震えた。
「空?」
病弱な柊子さんがいるからあけてもらった日陰の席。横で萌ちゃんも少し涼みに来ている。舞台よく見えるし、お兄さんの活躍を見てあげなきゃお兄さんかわいそうだよね。
舞台からって意外と視界いいからあんまり接近しすぎて目をつけられんなよ合田。
空が怯えたように見えて首を傾げる。
「……ぁぅう、……だいじょうぶ」
ふぃっと逸らされて突きたい心がそそられる。
「空、超かわいい。空が好きだよ」
「場所弁えろ」
なぜか千秋に撲られた。デート中なのに。
耳まで赤い空はちらちらとこっちを窺いつつもそっぽを向いていた。
かわいいんですけどー?
『月刊、うろNOW!』
http://book1.adouzi.eu.org/n3868bw/
サイン会イベントネタ
『うろな担当見習いの覚え書き』
http://book1.adouzi.eu.org/n0755bz/
『うろな2代目業務日誌』
http://book1.adouzi.eu.org/n0460cb/
鹿島兄妹 高原兄弟 合田君 清水先生【去年ネタ】
『ばかばっかり!』
http://book1.adouzi.eu.org/n1801br/
香我見さん 佐々木さん
『うろな町』発展記録』
http://book1.adouzi.eu.org/n6456bq/
より榊さん 町長さん
お借りしました☆




