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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014夏
557/823

7/5夏祭りデート【着替え】

 気温が高く、乾きやすいと言っても濡れたコトには変わらないから、のんびりとそういっちゃんのマンションに向かう。

 靴下は脱いだけど、ちょっと足が気持ち悪い。

 開けてくれたのは恭くん。

 奥から「いらっしゃい」と声掛けしてくれたのは公志郎君。空に挨拶して別室に連れ込んでしまうのは柊子さん。

 恭くんにうながされるまま、ベランダへ。

「鎮さん、足流しましょう。公くん。履物をベランダへ持って来て、軽くすすいで乾かさないと」

 恭くんは手際がイイ。公志郎君が雑巾と靴を抱えつつ、ついてくる。

「そういっちゃんは?」

「宗なら、部屋でネットゲームでデート中ですね。呼びます?」

「デート邪魔する気ないよ」

 ちょっと苦笑。

 足をすすいだ頃に差し出されるタオル。

「空さんにはシャワー浴びてもらってますから、こっちで着替えちゃいましょうか。お手伝いが必要なら言ってくださいね」


 エアコンのきいた部屋で着替え。

 恭くんが手元で何かを弄んでる。

「それは?」

「楽しいオモチャですよ」

 カチリと音がしたら、照明が落ち、エアコンの止まる音。


『きゃ』


 小さな悲鳴は空のもの。


 そういっちゃんのマンション内部の配置は覚えてる。

「空。だいじょーぶかっ!?」


 ジワリと天井灯が小さな音を立てる。

 安堵したような空の吐息が聞こえた気がしたけど、場所を思い出して慌てる。

 バスルームじゃねぇか。

 後ろを見ると同時に灯りが戻る。


 廊下でバタバタと罵声が聞こえた気がしたけど聞き取ろうにも動悸が激しくて落ち着かない。


「すみません。ブレーカーがちょっと落ちちゃったみたいです。暑いからってクーラー効かせ過ぎもダメですね。お怪我はありませんか?」


 ちょっと驚いただけと恭くんを安心させるように急いで言っている空の声。

 呼吸を整えて落ち着こうと顔を上げる。浴室には背を向けてるし。




 目の前には空。


 え!?


 そこにあるのは鏡だった。


「ごめ、でる、……な」


 後ろで小さな動揺する声が聞こえた気がした。





五分後。


「恭くん、何でロックかかってたの?」

 と言うかなんで内側から開けられなかったんだ?

「すみません、宗が出かけるときにかち合ってはいけないと思ってロックかけておきました」

 足元には廊下と同じ幅の四角い板。

「……そう」

 あれ、そういっちゃん?

「ブレーカーが落ちたのでPCの再起動、エラチェとかを僕に頼んで恋詩ヶ崎のおじい様の拠点に。三春叔父のゲーム用PCはそっちにありますから」

 けろりと当たり前のように告げる恭くん。

 不意に不思議そうに首を傾げて、

「だって、鎮さんなら空さん見慣れてるでしょう? スキンシップ激しいし、最近の初体験なんてどんどん低年齢化ですしねー?」

 俺は用意した浴衣をぼとりと取り落とす。

 「おねーさんのお知り会いも多いようですし、経験豊富かとー」と笑う恭くんの声が遠く流れていく。

「ねーから」

「はぃ?」

「ないから!」

「えー。年上のお姉さんたちが着替えてる間のエッチなネタ話はー?」

「ない!」

 恭くんが露骨にがっかりする。

「趣味は近いのかと思ったんですけど?」

「……趣味?」

「ボディライン。とか」

 首を傾げる俺に恭くんは苦笑する。

 恭くんが好きなのはミホちゃん。ミホちゃんは有坂にべた惚れだけど。有坂はどうなんだろう?

 で、ミホちゃんはいつも「ダイエット」と呟きつつ、スイーツを食べている。そのエネルギーのだいたいはバストにいってる気はする。

「別に空は空が好きなんであって体型とかは今のままでも変わっていっても空が空なら一緒だろ?」

「少しでも健康になってくれるんなら、過しやすく過してくれるんならいいよねー」

 公志郎君の言葉に俺は頷く。

 ここに理解者がいたって気持ちだ!


 あー。

「三人ともほわっとしてるよなー」

「そう、押し倒すタイミング計りたくな」

「らないからっ」

 どーして恭くんはそっちの話題にいくのかなぁ。

 公志郎君は小さく笑っている。



 浴衣を着終わって公志郎君が柊子さんを呼びかけたタイミングでにこっと笑った恭くんが手を伸ばして帯と袖をぐいっと引く。

 呼び込んだ柊子さんを止めようと声をかけるが首をかしげた美女二人がリビングに入ってくる。

 ぐいっと引かれる感触。浴衣が崩れたのは頭のどこかで理解していた。

 すぐ横で気心の知れた砕けた兄弟喧嘩が勃発。

 崩れた浴衣を空の手で直してもらいながらじっと見惚れる。こぼれる髪。いつもと違う襟の形にうなじ。

「空、すっごくかわいい!!」

 抱きしめるといつもと違う香りがくすぐる感じ。


 フラッシュバックするのは鏡に映った少し歪みを帯びた姿。湯気と合わせ鏡の見せた世界。


「空が好きだ」


 抱きしめる。キスを落とす。キスを望み、甘えてる。



 イヤなことはしたくない。


 空が好きだ。



 そう囁くたびに不安が溜まっていくんだ。



 こんなに愛おしいのに。


『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

青空空ちゃんお借りしております^^

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