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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014夏
552/823

7/5 夏祭り。花火の前


 その展開はそこそこ楽しんだ夕方。


 ゴド爺がふらりと伯父さんに近づいて軽く耳打ち。信にいにビールを渡してミラのところ。

 その様子を見守りつつ、ゴド爺はそのまま公志郎君とじゃれてる隆維涼維のところへ。

 同じように耳打ち。

 首を傾げつつ見守る。もうじき後片付けなタイミングでなんなんだろうと思う。

 スッと見回せばさーやちゃんがその様子を見てて、つい首を傾げそうになる。

「なにかあったのか?」

 直樹さんが尋ねてくるからわからないと首を横に振る。

 アクセルのライブの盛り上がりの興奮が周囲に満ちてる中、伯父さんの表情が変わったのは確かだった。

 見回して鎮を見ても不思議そうにゴド爺の動きを追っている。鎮にも予測外の事態らしいのがわかる。

 隆維が軽く走って伯父さんに何か囁いてる。遠くてうまく聞こえないけれど何か慌ててる空気だけがわかる。

 安心させるように撫でる伯父さん。ひと気のないところへ移動しつつ、途中さーやちゃんと言葉を交わしている。

 一瞬抗議してるような雰囲気が見えたけれど隆維と涼維はすぐに大人しくなってミラちゃんを抱きしめている。

「恭兄、何か知ってる?」

「まぁね」

 そこにいるのは宗一郎君で、にこりといつものように頭を下げられる。

 横にいるのは公志郎君。

「事情を知ってるんなら話してもらおうか」

「あの家のコトですから不用意に第三者に話すことはできませんよ」

 さらりと笑顔で流す。

 にやりと笑う直樹さんの表情は敵認定。

「こいつらは家族だろう?」

 指すのは俺と鎮。

「別世帯、ですけどね」

「恭くん」

 鎮が宗一郎君を違う名で呼ぶ。

 でも、どこかで聞き覚えがあるような?

 ひとつため息。

「まだ話せません。はじめまして。山辺 恭一郎といいます。あまりこちらにはいる予定はありませんから別に覚えていただなくてけっこうです」

「恭くん、直樹さんのトコ、ミホちゃん時々バイトしてるけど?」

 ミホ?

「たいしたことじゃないんですよ?」

 話すの!?

 すっごいしぶしぶっぽいけど。

 ちらりと恭、くんが視線向けたほうを見れば鈴音ちゃんが総督にじゃれているのが見えた。そーとくは軽く手をあげる。

 なんでそこが知ってるんだよと思う。苛立つ。

「暁智さん、実子である隆維くん涼維くんより鎮さんと千秋さんを優先していますよね?」

 気がついてないわけじゃないだろうとばかりに見られる。

 会話しつつ、あまり人の来ないところに移動はしてる。

 とりあえず鎮びいきだとは思うかなぁ。

「それにあの子達も拒否がきついから歩み寄らない。そしていとこや妹に愛情をかけるさまを見せられて距離がまた開く。母方の親族から見れば面白くない状況です。母親との関係修復が望めなくて父親との関係修復も望めないなら、祖父母や、他の身内からすれば愛情をかけてみせるから身軽になってやり直せばいいと、暁智さんに告げたいところなんですよ? 彼は、まだ若いんですから」

 でも、

「伯父さんはちゃんと」

「伝わらなければ、伝えなければ仕方ないでしょう? 自分の環境を変えたくないから彼らの変化を望まない。彼らがいなければ自分たちの現状維持が苦しいから留めおきたい。なんて言いませんよね?」

 ため息を吐かれる。

「いいですか? どうして暁智さんも一緒だと思うんです? 今回大人の判断が必要だったんです。彼らは自分の意志だけで旅券をどうこうするのは難しいし、だから、強制的に頼らざるを得ない状況を作りました。今回入院した身内はゴドウィン氏の伯父です。まぁ、言い換えればいつ会えなくなるかわからない老人です。三人から好意を勝ち得てる方でもあります」

「にゅういん?」

 鎮がその言葉を拾い上げて呟く。

 あ。だから慌てて。

「ただの家族会ですよ? ルシエさんの実家は現地でそれなりの病院で、彼はその病室のひとつを私室のように使っているというだけで」

 ん?

 あれ?

「距離を強制的に縮めさせる騙し討ちか」

 直樹さんの言葉に恭君が静かに頷く。

「そういうことです。たいしたことじゃなかったでしょう?」

「なんで、今?」

 ついこぼれる。

「なぜ? もっと早ければよかったですか? 年明け過ぎから打診はあったそうですよ? 時間はかければかけるほどこじれるんですよ?」

 苛立つ。

「じゃあ、特に誰も危篤や、死に近いわけじゃないんだね?」

 安堵したような鎮の言葉。

「ええ。今のところは。流石に九十を超えたご老体がいつ逝くかは少々不明ですし、事故がないという保障もできませんけど」

「ならいいや」

 鎮の言葉が瞬間理解できない。

 いや、どこかでわかっている。

 でも現状のまま、伯父さんがいなくなることや、生活の中から隆維や涼維が姿を消すなんて想像していなくて。

 この現状だからこそ、遠ざけられたのかとも思う。

「面白くないんだけど」

「向こうの家族の方々も面白いとは思ってらっしゃいませんよ」

 彼らが愛情を注がれるのがいやなんですかと小声で囁かれてかっとなりそうになる。


「鎮さん、花火、はじまりますよ? 空さんが心配してるんじゃないですか?」

 はたりと気がついたようにきょろりとして、鎮は柊子さんと談笑している空ねぇに意識を向ける。

「……えっと、心配、かけたくねぇから」

 ちらちらと軽く俺を意識しつつも空ねぇのところにむかう。

 引き止められるわけないだろ。

「芹香になんて言えば」

 いいんだよ。

「知って、ますよ? 芹香さんは事前にミラさんに聞いているそうですよ?」


 ぇ?



『うろな2代目業務日誌』

http://book1.adouzi.eu.org/n0460cb/ 

高原直樹さん

『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

青空空さん

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