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7/8  夜

ちょっと日生家回想が暴走中

 今日部活で作ったのはサラダ。

 ちぎったレタス、スライスしたトマト。マヨネーズで和えたつぶしゆでたまご。

 包丁を使わせる時はスリリングだった。


 とりあえず、火傷も指を切ったりもなかったことを良かったとしようと思う。

 妙に疲れる日だった。




「ええー。カラスマントまずいのかぁー」


 居住スペース。まず聞こえてきたのはそんな鎮の声。


 お前はどれだけカラスマントにこだわりがあるんだと突っ込みたい。


「版権キャラだし、まぁちょっと改変すればごまかせると思うけど」


「ぉおー。改変かぁー。あ。千秋おかえりー」


「あ。おじゃましてます」

「いらっしゃい」

 雑貨店にいた男の子だ。

 鎮が連れてたのか珍しい。


「おかえり千秋」

「ただいま」

 おじさんがにこにこしながら二人の様子を見ている。

 いつもより少し機嫌がいい気がする。


「いやぁ。コンテストの司会を二人が快諾してくれて嬉しいよねぇ」

 男の子が引きつった表情を見なければ僕も頷いてただろう。


「そういっちゃんさぁ、おじさんとの方が仲が良くて妬けるっ」

 そう言う鎮はカラスマントの仮面から顔を上げていない。


「べるべるのおにいちゃんは晩御飯も食べていくのー?」

 芹香がノートを持ってリビングに駆け込んでくる。



「そろそろおいとまします」

「食べていくといいよ。平山さんには連絡入れとくから」

「そそ。泊まっていけばいいさー」

 おじさんと鎮が無茶振りしてる。


「千秋兄ー。宿題教えてー」

 天音ちゃんと、鈴音ちゃんのお兄さんか。

 そういえば、鎮は以前に知り合ってたんだっけ。

「着替えてくるね」

 芹香の頭を撫でてて部屋に帰る。

 途中にあるゲーム部屋で妹をそれぞれの膝に乗せ、落ちゲー中の隆維と涼維。


「もうじき晩飯だから適当に切り上げろよー」

 一声かけて着替えに戻る。



 鎮が単独で友達を連れてくるなんてはじめてかも。

 僕らは隆維と涼維ほどべったりではない。

 日本に来て暮らし始めた一年目こそべったりだったけど、ある程度言葉がわかるようになれば別行動が多かった。

 大阪で祖母と暮らした二年間。

 小学5年でうろなに越してきた。

 自宅になるはずの旧水族館はまだ改装工事中。

 海がすぐそばで無性に嬉しかった。

 いろいろ新しい町を歩き回りたくて鎮を誘ったけど出歩くことには鎮はあんまりいい顔をしなかった。

 だから一人で出かけて回った。


 その時は母さんも、ルシエおばさんも芹香もうろなに来ていなくて、おじさんは隆維、涼維、みあのあの世話に追われていた。

 その分、自由だった。

 確かに、ずっと面倒を見てくれていたさーやおばさんに会えなくなった事は寂しかったけど、おじさんに迷惑をかけることは全部、鎮に任せればいいと思った。


 って、あれ?

 子供の頃の僕の考え方ちょっと問題ないか?


 着替え終わった頃にメールの着信に気がつく。

 差出人は『旅館うろや別館』



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