7/5 夏祭り。朝のガラガラくじ
「くじ~♪ くじ~♪ あなたの運をためしましょー。その運のほどはイカに~♪」
がらがらに呪いをかけているようにも見える明るい茶髪の少年。瞳はまず日本人じゃありえない青。聞くところによるとクォーター。でも名前は『日生隆維』日本人っぽい。甚平姿にお面を横になるようにつけている。顔面覆われるのは好きじゃないとか言ってた。
で、その言い方がいやだった私も便乗してお面は横にしてある。
「サイン会とかいいの?」
視線を送るのは人が集まって美少女系のイラストの入った団扇で風を生み出してる人たちがいるエリア。
「うーん。けっこう俺も涼維もマイナー作家とか、あ、小説ね。新書とかの方が好きだからさ。あんまり読まないんだー。ゲームとかアニメとかは見るけどさ♪」
「そうなんだ」
「キレイめ流行系の絵柄らしいから尋歌はいいの?」
自分に振られたから私のほうが興味があると思ったのか、同じ話題を振ってくる。私としてはその話題より気になるポイントがあったんだけど。
「隆維くん」
「なに?」
「先輩、なんだけど?」
身長的に小さいから舐められるのかと思って睨んでみる。
「知ってるけど? だから、サイン会、よかったの?」
「待合にあるから読んではいるけど、書いてる人は関係ないでしょ? 作品は好きだけど、どの人がどの作品かいてるのか知らないし。サインってもらってどうするの?」
「ファンなら喜ぶもんだと思うよ?」
「名前だけあっても誰か分からなくなる私には不要ね」
「俺は好きな作家ならサイン本とか嬉しいけどなー」
「いつか、価値がつくかもだから?」
「サビシイ。その考えはサビシイよ。尋歌。猫ブロマイドに猫の名前と肉球ポンされてるものが500円と、ブロマイドオンリーで300円だったらどっちを買うの?」
「そんなの決まってるじゃない」
「買わない、とか?」
「両方買って、ついでに保存用にもう一組買うわ!」
日生隆維。彼の視線を生温く感じたわ。やっぱり生意気。
「そういえばここのくじで当たったら嬉しい物ってなに?」
話題を逸らす。
午前中はなんだかんだとビンゴカードの引き換えやサイン、あと、いい匂いをさせているお好み焼きや焼きそばの方が人気がある感じに思える。
「んー。駄菓子セット♪」
きっと混むのはビンゴが終わった後じゃないかなぁなんて思ってしまう。そこで『駄菓子セット当たりますように』って呪いかけてる奴もいるしね。
「上位等級が当たらないように呪うのやめときなさいね」
「呪ってねーよ」
するりと背後から伸びてきた手が隆維のほっぺを引っ張る。
「営業妨害するとはいい度胸だ」
ホビー高原の直澄さんだった。
「他に人気いってるだけじゃんひっでー。おねーさん、くじ引いてくれないと虐待されんのー助けると思って回してってー」
何を言ってるんだという表情だったけど、呼び止められたお姉さんが寄ってくると即座に営業スマイルの直澄さん。
「いやぁ、こいつ冗談ばっかりで、どうです? 一回三百円ですよ」
浴衣のお姉さん二人が釣れた。
『うろな2代目業務日誌』
http://book1.adouzi.eu.org/n0460cb/
より高原直澄君
『月刊、うろNOW!』
http://book1.adouzi.eu.org/n3868bw/
よりサイン会のねたを話題に
お借りしております。




