6/30 誕生日と料理部
なぜか、軽く人目を気にしてから、壁を越える鎮。センセ達に見つかったら間違いなく怒られる行動。
大人しく校門を出て少し行ったところで見たのは、キスシーン。
場所はわきまえろ……。
はわわと羞恥で慌てふためく空ねぇ。
にがしません。離しません。とばかりにハグしてる鎮。
空ねぇは俺のタイプじゃないから、盗らねーよ。
「鎮、鞄持って帰っておいてやるよ」
「あ、マジ?」
「ほら」
手を差し出せば、押し付けられる荷物。邪魔そうにしてるなと思ったんだよ。
「財布、鞄の中とか言わないよな?」
中身ないんなら提供する? という意味も込めて振る。
「大丈夫。こっちに持ってる」
ぶらんと揺れるベルトポーチ。カメラを入れている黒いポーチだ。アクセントにクロスのピアスと月のタイピンが飾られている。ベルトに引っ掛けて手はフリー。どれだけ抱きしめたいんだよ。
「じゃ。邪魔しないよ」
「あ」
軽く手を上げて帰るね。としたら、引き止めるような空ねぇの声。
同意じゃなくて、鎮に不本意に襲われたの? じゃあ、撲っとくよ?
「千秋君、お誕生日おめでとう」
え?
あ、六月三十日って、あぁ、そー言うことか。
俺達が生まれた日だ。一つ年齢を重ねる日だ。日々の変化ない積み重ねの日の一つだ。
「ありがと。空ねぇ。じゃ、デート楽しんでね」
ぽっと頬を染めて頷く姿は客観的に見てかわいい。
「じゃあ。先に食べてるし、チビどもには言っとくよ」
笑顔と共に距離をとる。
「んー。頼むわ」
そう言って別れる。
「ウチで勉強会だー」
さて、帰るかと思ったらグイッと服を引っ張られる。麻衣子ちゃんだ。後ろで愛子ちゃんと菊花ちゃん料理部メンバーが笑ってる。
ナニその話聞いてないんだけど?
バイトは、試験前後は休みって言われてる。
「くぅ。鎮ったらこれで大人の階段をっ!?」
麻衣子ちゃん……。
どういう意図で言ってるんだよ?
俺の胡乱な眼差しに気がついたのか照れ笑い。
「えー。愛情過多な鎮を喜ばせる誕生日プレゼント。いい機会じゃん。それとも、もうそんな扉はもうとっくに開いてるとか? やーん」
真っ赤になって身体ごと首を振る麻衣子ちゃん。いや、おもしろい、けどね。
ま、本当のとこはどうなんだろうな?
朝帰りしてたこともあるけど、空ねぇといたかどうかまでははわからないしなぁ。
「今日、お誕生日だったんだね。おめでとう」
愛子ちゃんがにこりと笑う。
「ありがとう」
「プレゼントはないわよっ!」
慌てたように麻衣子ちゃんが宣言。
期待してねぇよ。
「後で盗難防止ネットでもプレゼントしてあげるわ」
菊花ちゃんが言う。
それって、自転車屋の試供品だったりしねぇ?
『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』
http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/
より青空空ちゃんをお借りしております




