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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014夏
541/823

6/30 おむかえ

 帰り支度も終えて、図書室の整理も軽く手伝って、まだ作業したり、本を読んだりしている文ちゃんと渚ちゃんに軽く手を振る。

 図書館は休みだし。

 どっか風景でも撮りに行こうかなとカメラを撫でる。

 ここ最近はどんどん夏に向けて暑くなってる。

「あっつい」「あっちー」「うぜー」という声を聞かない日がないくらいに。

 もう、六月も終わりなんだなと思う。


 ふと見えたものに首をかしげる。

 きょろりと見回して先生の目がないのを確認。

 壁を越える。

 ああ、でもなんでいるんだろう。

 そわそわしてるのがちょっと小動物ぽくてかわいい。


「空?」

 そぉっと声をかければわたわたと慌てる空。

「ひゃっ!? し、鎮君っ。あ、あのそのっ」

 驚かせすぎちゃたかな?

 んー、渚ちゃんと約束がある、とか?

「驚かせちゃった? ごめん。でも空が高校に、なんて珍しいよね?」

 表情を覗き込めばふわりと笑顔が広がる。

「お迎えにきたの」

 渚ちゃんの? という意識が働くけど、空は俺を見ていて、渚ちゃんにはそんなそぶりはなくて。


 お迎えって、え、俺?


 俺の、お迎え?

 なんだろう。すごく空がいとしい。


「え、えっと、あの、あのね、鎮君。今から、その……デ……デート、しよ……?」

 続いた空の言葉がより鼓動を早める。

 恥ずかしげにそわそわしてる空。

 じんわりとくるあったかい感じが心を落ち着かなくさせる。


「今日っていう、一年に一度の特別な日が、素敵なものになったらいいなって思って」

 照れながら告げられた言葉に疑問が過ぎる。


 一年に一度の特別な日?


「今日……? なんかあったっけ?」


 デートは嬉しいからどこに行こうかと考えながら、その疑問にも向かう。


 空がぱちりと驚いた表情で見てくる。

 そして見る間に真っ赤になる。

 かわいいなぁ。


「え、えっと、今日……、鎮君のお誕生日、だよね……?」

 かわいー。って、たんじょうび?

 え? 俺、の?

「ああ、今日、そうだっけ?」

 誕生日なんて意識しねぇから。


 俺の誕生日……。素敵、な?



 間違えたのかとあわあわ慌てている空がかわいくて愛しくてしかたがない。

 自然と手が伸びる。

「すっげーサプライズ。空がちょーかわいい」

 ぎゅっと抱きしめれば優しい空の匂い。

 てか、かばん邪魔だ。

「キス、したい」

 あわあわしてる空がなお慌てて顔を上げる。

「しっ、鎮目君! こっ……ここ学校……」

 言葉を流し聞きながら軽くキス。場所が場所だから、軽く終わらせる。


 ……我慢。



「今日はさ、空がいっぱいサプライズをくれた、空から誘ってくれた特別な日だよな。んー? どこ行くか、考えてる?」

 ちょっと町の外まで足伸ばすなら駅のロッカーにかばん放り込んで、ああ、それともモールでウィンドウショッピングして映画?

 あ。運転免許。十八、だもんな。考えとかないとな。


「あ、一応さぁ、したいこととかわかんねーんだけど隣町の大学、に進学の方で考えてる。一番はさ、やっぱ空のそばにいたい。俺はさ、空のそばがいいんだ。空のそばにいて、ただ、空だけ見ていたいっていうのは生活できないのが問題だよなー」


 ふらりと歩きかけて東うろなに向かうか、モールに向かうかで悩む。

「空?」

 反応が返ってこない空に不安になって空を見れば、耳まで赤くうつむいて俺にひかれるまま歩いていて。

 写真に切り取っておきたいくらいにかわいいけど、フィルター越しに見るのももったいなくて。

 こんな瞬間に失敗したのかな? って思わなくもないけれど、嫌われたとは思わないでいられる。

 ねぇ、空。

 君は特別。





「愛してるよ」



 君の耳元に囁く。こわく、なることもあるけど、きっとこの気持ちは本当であって欲しいんだ。


◇◇


 陽の落ちた浜辺で、空が囁く。


「お誕生日っていう、一年に一度の特別な日が、素敵なものになったらいいなって思って」

 誕生日なんてあまりいい印象はない。本当に望まれて生まれたわけじゃないから。

「鎮君が、それに千秋君が。この世界に生まれてきてくれた、大切な日だもん。一緒に、お祝いしたくて」

 本当は大切と言われてもどこか素通りしていく。『祝ったり』しないのがいっそすっきりしてた。

「だって、今日生まれてきてくれたのが鎮君じゃなかったら、こうなってなかったかもしれないし。これって凄い事なんだよ? だから……ありがとう」

 だけど、空が、そう、空がそう言ってくれることが嬉しい。

 抱きしめて耳元にキスを落とす。

「空と一緒にいられる日はいつだって特別なんだけどな」


 そろそろ送らないとまずいかなって時間まで空を浜辺で抱きしめる。

 空のそばにいる時間が嬉しくて空に望まれてると感じられるのが愛しくて。はなれたくない。

 送らないといけないなと思う。

 空だって明日はバイトの日で、俺だって迎えに行く。でも、そばにいたいんだ。

 ぎゅっと抱きしめる。

「夏祭り、一緒にいこうな?」

 まだ、軽い約束だけでもいいと思う。ホントは。

 でも理由があれば、まだそばにいれるかと思って続ける。

「浴衣、着る? 空の浴衣姿好きだよ?」


『仕立屋怪事件簿』

http://book1.adouzi.eu.org/n6626bu/

より文ちゃんを

『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

より青空渚ちゃん空さんを


お借りしております

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