6/21 ヘリウムの
くすんだ暗い赤毛を撫でる。
彼はソファーに沈んで欠伸中。
「助かったわぁ」
「どーいたしまして」
会話はヘリウムのように軽く、浜辺の吸い殻ほどの価値もない。
ただ、そこにあるというだけ。
「彼女とはどう?」
尋ねれば、照れたように視線を下げる。
幸せそうに照れて言葉のないサマは可愛いらしい。
「家に居辛いなら泊まってく? いいのよ?」
よく家に居辛くなることのある子だし、人恋しくもあったから誘ってみる。
「帰るよ。涼維の機嫌も治ったしさ」
塩を少し足したレモネード。
暗い緑の瞳が見上げてくる。
「酔い、大丈夫? 洗い物はしていった方がいい? 寝る前にはちゃんとメイク落とさなきゃでしょ?」
世話を焼くのが好きな彼らしい言葉。飲み過ぎも本当。メイク落とさなきゃあとで大変だって聞き慣れてるから注意したよという免罪符を確保する。
「キッチンは立ち入り禁止」
惨状を思い出して、警告すれば、彼が小さく笑う。
「はいはい。綺麗にしてから帰ります。おねーさま」
惨状を想像したのか、茶化すように笑う。
「ねー」
「んー?」
「あんまり、他の女の子の誘い受けちゃダメよぅ」
「えー?」
わかってない表情をしてたから、その髪をぽんぽんと撫でる。
「今日は助かったけどね〜」
飲みすぎて、イタズラなデタラメメールに様子を見に来てくれたから、変なのに絡まれずに、私が彼に絡んだけで済んだしね。
「でも、きっと、女の子は好きな男を独占したいものなんだからねー。大事にしたいんなら、気をつけてあげなさいよぉ」
ゆっくり速度のまばたき。
じっと視線を合わせて見つめられる。
「そんな彼氏いるの?」
「欲しいわよ」
あえて声をあげて笑う。
どうしてこの子は覗き込んで、興味ありますって態度で聞いてくるのかなぁ?
「だから、あなたは彼女にとっての素敵な彼氏になってあげてね」
撫でればくすぐったそうに身じろぎ、立ち上がる。
「……片付けとく」
そう言って、使用済みのグラスを持ってキッチンへ行く。
言いよどんだ口調にチラ見した彼の顔は照れ臭そうに染まっていて、年下の男の子は可愛いなぁと思う。
知り合ったのは、あの子が中学生の頃、いつまでも弟がわりの坊やじゃないのか、やっぱり、弟のようなものなのか、最近少し悩む。
でも関係はいつまでもヘリウムより軽くありたい。
「他のおねーさんたちとは連絡どうなってんの〜?」
だりだりとメイク落としのケースを開けてコットンを使う。
「最近、忙しいのか減ってるよー?」
「彼女できたからだなー。リア充めー。あ。こっち来たら蹴るから、来ちゃダメだぞ?」
「すっぴんなだけじゃねーの?」
すっぴんは見せませーん。
「こないだジャージでコンビニ行ってたの知ってるけど?」
「うそっ!?」
見られてた!?
「うっそ。マジでやってたんだー」
って、
「なにカマかけてんの!」




