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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014夏
531/823

6/17 テスト前の料理部

「愛子ー、ポイントどこかなー?」

「ここじゃない?」

「先輩。わかりません!」

「すぐりんは、ノートとれっていってんでしょー」

 今日の料理部は試験前の勉強会。

 去年も思ったけど恒例らしい。

 上級生による後輩へのアドバイス多めの勉強会。

「目指せ平均点!」

 麻衣子先輩が吼える。

「麻衣子ちゃん、問題集のノルマおわったぁ~?」

 愛子先輩の言葉にびくりと動きを止める麻衣子先輩。

「ま、まだ」

「……どこ?」

「ち、千秋、お手やわらかにぃ」

 びくつく麻衣子先輩。そう、今日は久しぶりに千秋先輩も参加。教わってるのは料理じゃなくて勉強だけど。

「岡本さんはわからないとことかある? こっちも復習になるから遠慮しないでね」

 わ。

 課題に集中する。

 一年の中島さんは有坂さんと教えあいっこ。不得意範囲が違うらしい。そして先輩たちはうまく回ってるならノータッチ。

 菊花先輩が覗き込んできて、「大丈夫じゃない?」と呟いて自分の課題に戻っていく。

 

「うわーん。社会に出たらこんな知識なくったって生きていけるよー」

 麻衣子先輩がプチ切れてた。

 でも、同意。

「生きていけるけど、豊富な知識は人生に潤いとチャンスを与えると思うの~」

 愛子先輩がたしなめる。

「知識はなくても熱いハートがあれば何とかなるわっ!」

「裏打ちできる理論武装があればなお何とかなりやすいよ。だからここだってば」

「わかんないっ! いっそカンニング手段か海老ちゃんの篭絡を!」

「はいはい。両方NGね」

 麻衣子先輩と千秋先輩の温度差が激しい。

「受験、するんだろ?」

「ん~、一応ねー」

「じゃ、身につけなきゃ」

「ぅうう。バイトして将来実家継ぐ道でいいと思うの」

「継ぐんならあの店なら世界の雑貨を見て回るワーキングホリディ? 確かにするべき勉強は方向性が違うだろうけど、そっちはそっちで大変そうだね」

 うぐぅと声をもらしながら千秋先輩を睨む麻衣子先輩。

「ち、千秋の勉強の邪魔をすんのは不本意だわ」

「ああ、麻衣子ちゃん、気にしなくていいよ? いい復習を繰り返せばより理解も深まるしね」

「……く、くやしぃいいいいい」


「栞ちゃん、あんまり気をとられてちゃダメよ? すすんでる?」

 ぽかんと二人のやり取りを見ていたら愛子先輩に声をかけられる。と、共に苦手系の問題を差し出される。

「がんばりましょうね」


「あー。鎮の奴、今日もデートかなぁ」

「火曜っすもんね」

 菊花先輩がいい、早川君がぐったりと課題の上に伏せ、呟くように応える。

 今日も窓の外は雨。

「梅雨なんか大っ嫌い!」

 麻衣子先輩が吼える。

「雨が降らなきゃ、それはそれで水不足になるよ?」

 麻衣子先輩が沈黙のままギッと千秋先輩を睨む。



「実際のそういうことと感情問題は違うのっ!!」



 


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