6/17 テスト前の料理部
「愛子ー、ポイントどこかなー?」
「ここじゃない?」
「先輩。わかりません!」
「すぐりんは、ノートとれっていってんでしょー」
今日の料理部は試験前の勉強会。
去年も思ったけど恒例らしい。
上級生による後輩へのアドバイス多めの勉強会。
「目指せ平均点!」
麻衣子先輩が吼える。
「麻衣子ちゃん、問題集のノルマおわったぁ~?」
愛子先輩の言葉にびくりと動きを止める麻衣子先輩。
「ま、まだ」
「……どこ?」
「ち、千秋、お手やわらかにぃ」
びくつく麻衣子先輩。そう、今日は久しぶりに千秋先輩も参加。教わってるのは料理じゃなくて勉強だけど。
「岡本さんはわからないとことかある? こっちも復習になるから遠慮しないでね」
わ。
課題に集中する。
一年の中島さんは有坂さんと教えあいっこ。不得意範囲が違うらしい。そして先輩たちはうまく回ってるならノータッチ。
菊花先輩が覗き込んできて、「大丈夫じゃない?」と呟いて自分の課題に戻っていく。
「うわーん。社会に出たらこんな知識なくったって生きていけるよー」
麻衣子先輩がプチ切れてた。
でも、同意。
「生きていけるけど、豊富な知識は人生に潤いとチャンスを与えると思うの~」
愛子先輩がたしなめる。
「知識はなくても熱いハートがあれば何とかなるわっ!」
「裏打ちできる理論武装があればなお何とかなりやすいよ。だからここだってば」
「わかんないっ! いっそカンニング手段か海老ちゃんの篭絡を!」
「はいはい。両方NGね」
麻衣子先輩と千秋先輩の温度差が激しい。
「受験、するんだろ?」
「ん~、一応ねー」
「じゃ、身につけなきゃ」
「ぅうう。バイトして将来実家継ぐ道でいいと思うの」
「継ぐんならあの店なら世界の雑貨を見て回るワーキングホリディ? 確かにするべき勉強は方向性が違うだろうけど、そっちはそっちで大変そうだね」
うぐぅと声をもらしながら千秋先輩を睨む麻衣子先輩。
「ち、千秋の勉強の邪魔をすんのは不本意だわ」
「ああ、麻衣子ちゃん、気にしなくていいよ? いい復習を繰り返せばより理解も深まるしね」
「……く、くやしぃいいいいい」
「栞ちゃん、あんまり気をとられてちゃダメよ? すすんでる?」
ぽかんと二人のやり取りを見ていたら愛子先輩に声をかけられる。と、共に苦手系の問題を差し出される。
「がんばりましょうね」
「あー。鎮の奴、今日もデートかなぁ」
「火曜っすもんね」
菊花先輩がいい、早川君がぐったりと課題の上に伏せ、呟くように応える。
今日も窓の外は雨。
「梅雨なんか大っ嫌い!」
麻衣子先輩が吼える。
「雨が降らなきゃ、それはそれで水不足になるよ?」
麻衣子先輩が沈黙のままギッと千秋先輩を睨む。
「実際のそういうことと感情問題は違うのっ!!」




