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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014夏
529/823

6/15 ご機嫌斜め

 バッカじゃねぇの?

 ぎゅうと隆維を抱きしめる。

「あついー」

「知らない」

「えー? しっといてー?」

 バタバタと隆維が碧ちゃんに手を伸ばす。

 笑って退散する碧ちゃんは空気を読んでる感じ。

「涼維。つまんないコトで拗ねないのー」

「つまんなくない。隆維が悪いの!」

 暴れ疲れたのか、腕の中で大人しくなった隆維が力を抜く。

「んー。ごめん? でもさぁ、俺は家族として鎮兄を愛してるわけだし、問題はないよ?」

 見つめられてるのも仕方ないなぁって視線を送られてるのもわかってる。

 それでも、譲れなくて。

「やなの〜」


 不思議そうな隆維が嫌で駄々をこねる。

 そう、わかっていても嫌なものはイヤなんだ。

 最近調子は悪くなかったけど、それでも続く雨とその前の気温差で体調を崩し気味な隆維にゴネる。あんまりよくないのはわかってるけど、聞き分けよすぎてもダメかと思うんだ。

 夏の暑さとか大丈夫かな?

 とりあえず、鎮兄を食事時にハブってる。

 最近は火金以外も遅い日があったり、準備だけしてふらっと出かけたりしてるから、見方によっては鎮兄の方から食事時を外してる。

 千秋兄はバイト先で食べてくるコトも多い。

 ご飯一緒に食べてあげないって言ったけど、ここまで一緒に食べない日が続くとちょっと心配。鎮兄が好きな妹たちもそろそろ機嫌が悪い。千秋兄がいないのにはようやくなれたとこだからかな?

 食卓を見る俺に隆維が俺の腕を軽く叩く。

「一緒に食べようって誘うだろ? そろそろさ」

「……。俺のせい?」

 小さな苦笑。

「たぶん。リクエストに応えてるつもりじゃないかなぁ?」

 え?

「ごはん、一緒に食べてあげないって言ったろ?」

 うん。と頷く。

「だから、涼維が『一緒に』って機嫌なおしてくれるの待つつもりじゃないかなぁ?」

「まさか」

 咄嗟に出た言葉。でも妙にしっくりきて

「まじ?」

「たぶんね」

 そーゆーのを決めちゃうと鎮兄は条件が満たされないと受け入れてくれない。

 妙に頑固だ。

 自然になかったことにはしてくれない。

 決めたことを守ろうとするから条件にこっちもずれちゃダメで。

 どうしようかと思う。

「だーからー。あーついー。だぁるいぃー」

 ぎゅうっと抱きしめると苦情が来る。

「部屋、連れて帰ってあげるから。冷却シート部屋にまだあったっけ?」

「あったけど、ひとりで帰って寝る。涼維は俺の飲み物とおやつ持ってきて! 食べたい奴じゃなきゃやだかんな」


 え?


 なにその無茶振り。


 ぷいっと俺をおいて先に歩き出す。

「ちょっとのど痛いからひんやりのなー。早く戻ってこいよー」

 振り返ってそう言ってから行ってしまう。

 なんだか少し、仕方がないなぁって思える。

 隆維は少し強引なくらいワガママ身勝手なのがイイ。

 俺が隆維無しでもいいようにって動こうとしなければもっとイイ。

 きっと隆維は鎮兄がごはんの場にいたほうがいいと思ってる。

「しかたないよね」

 隆維が喜ぶんならそれがいいよな。


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