6/3 うろ高料理部☆
授業が終わった教室で帰り間際の千秋を引き止める。
「千秋。昨日は休むなんてどーしたのよ?」
「菊花ちゃん」
「ん?」
「昨日逸美来てた?」
「うん。来てたよ?」
「そっか」
ほっとした様子の千秋は少し休み前より落ち着いた感じ。
直樹にーさんとの相談がきいたのかな?
「体調不良?」
「んー。少し?」
はぐらかす口調がイラつくけど、戻ってきた猫ぐらいは我慢してやろーじゃない。
「でも、そろそろ一回は料理部顔出しなー。愛だけに教育させてるんじゃ大変だからさー」
「俺、教えるのは得意じゃないんだけど?」
あー。知ってる知ってる。
あんま優しくはないもんね。
「千佳も気にしてるしー」
怒るかな?
「千鶴ちゃんと千佳ちゃんかぁ」
「今日は?」
「昨日、バイトの方も休んでるからまた、ね」
仕方ないなと思う。
「千秋ー?」
ひょっこり現れたのは鎮。今日は火曜デートじゃないのか?
「しずめ?」
不思議そうな千秋にひょこひょこよって来る鎮。
「大丈夫か?」
千秋を覗き込む鎮。警戒して少し身を引いてる千秋。
もちろん、一歩引いた(見えない)ロープ外からの観戦だ。
「大丈夫に決まってるだろ? デート費用が足りないとか言うんじゃないよな?」
「そっちは大丈夫だって。今回は別件ー」
「別件?」
千秋が首を傾げる。
うん。心境はわかる。
「そ」
覗きこむような体勢のまま、
「愛してるよ。千秋」
言い放つ。
鎮、……場所選べよ。
当然固まる千秋。
あー、すっきりしたという表情の鎮。
「しずめ」
「うん?」
「なんかみょーなもの読んだ?」
「妙なものは読んでないって。図書室に兄弟愛を確かめることをテーマにした本があってさー」
覗き込むように言い聞かせるように言うのがいいらしいよ? とか続けてる鎮。そー言えばけっこう影響受けやすいタイプだよね。
「ふっざけんなっ」
怒る千秋を放置し「じゃね」と手を振って、たぶん、あのまま歌姫のおむかえだな。ありゃ。
チラッと見ると残ってたクラスメイトが苦笑・同情組と萌・腐女子組に別れてた。
「千秋」
「なんだよ」
苛立ちを抑えられてない声。
「同情するわ。イラついてバイトって大丈夫?」
「賃金発生するんだからきっちりしなきゃダメだろ。あそこは野放しにしたらやばいんだよ」
うんざりした口調。
「何やってんの?」
そう聞いてしまったのは当然の反応だと思う。
「帳簿付け」
そう言ってバイトに向かう千秋を見送って部室の方へ向かう。
今日は何かを作っているわけでなくて器具の手入れ日。
クッキー型の種類の確認や、器具の組み立て方のレクチャーを一年生と三年生で二年の二人に教えてる構図。うん。なんかおかしい。
「栞ん、英ん、去年、あんた達なにやってたの?」
気まずげに視線を逸らす二人がつぶやいたのは、
『洗い物と卵割り』
『うろな担当見習いの覚え書き』
http://book1.adouzi.eu.org/n0755bz/
『"うろな町の教育を考える会" 業務日誌』
http://book1.adouzi.eu.org/n6479bq/
高原直樹さんお名前だけお借りしております。




