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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014夏
520/823

6/1 進路相談02



「どうしてそう思ったんだ?」


 は?


「だから、どうして千秋に嫌われていると鎮は思ったんだ?」

 えっと、

「言われたから。嫌いって、いなくなればいいのにって」

「いつ?」

 たたみかけるように問われる。

「え~っと、みっつか、よっつの時?」


 沈黙のなか、桜也くんがぐずりそうな気配を見せ始めてるようで気になる。












「ばかものーーー!!」
















 小梅センセの一喝で泣き出した桜也くんを慌ててあやす。




「幼児体験は重要とはいえ、その頃の子供の言葉をいまだに引きずってるとはどういうことだ。意味もわからず、つい口に出すことだってあるんだぞ?」



「だって」と口をついて出るが言葉は続かない。


 千秋は俺を好きにはなってくれなかったんだ。

 三つ子の魂百までとか言うからね。幼少期体験って重要だとは思う。

 確かに、『嫌い』とか、『いなくなれ』って言ってきたのは最初だけで、次第にそんなことは言わなくなってきたけど、それは俺をないもののように振舞うようになったからで。

 千秋はいつだって振り返らない。

 日本に来て言葉に慣れる僅かな間だけ、手をとってくれた。それって他に誰もいなかったからだ。他に友達ができたら振り返ることなくいってしまう。

 双子だから、兄弟だから、かろうじて側にいる。


 俺には千秋がわからない。



 大好きと心をかけてもすり抜けて、できてないことを突きつけられる。


 不安の波は消えることがない。


 千秋はアリアにも同じことをするんだろうか?

「考えすぎるな」

 ごんっと叩かれる。

 考えろって言ったり、考えるなって言ったりどっちだよとちょっと思う。

 言ったら殴られる回数が増えそうだから言わない。



「考えるなというわけじゃない。悪い方へ思いつめるな。千秋がお前を嫌いだなんてことは有り得ない。私が保証してやる。ただ、そうだな。あいつはお前がいることが当たり前なんだろう。だから、お前にいくら当たっても大丈夫と思ってるんだろう? それは好きとか、嫌いとかじゃもうないんだろう」


 どうでもいいってことかな?


「それに、隆維と涼維がお前を頼っていないなんてこともない」


 えー?


 疑いが表に出てしまったのか睨まれる。


「頼っていることをあいつらは自覚しているから。だからこそ心配をかけたくないんだろう。あいつらも気を回す方だからな。自分たちの悩みがあったとしてもおまえが迷っている、不安になっているところに負担になりたがると思うのか? お前が負担じゃないと言っても気にするだろうな。それで、お前が私から距離をとった理由はなんだ? とっていないなどという言い訳はきかないぞ?」


 あ、やっぱバレてた。小梅センセはカンがいいからなぁ。


「だってさ、中学も卒業したし、早々負担かけるのはダメだろー。それにマゾ清水もいるしー。邪魔しちゃダメじゃんー?」

「つまらん気の回し方をするな! 変に気を回しすぎるから、弟どもに余計に心配されるということに気がつけ!」


 また殴られた。


「んー。今度愛してるって抱きしめてみるー」

 とりあえず。

「桜也くん。泣き止んでねー」


 


 寝息を立てる双子を見守りながら安堵の息を吐く。


「わからなくて、不安になったならとりあえず聞いてみたらいい。勝手にお前が決めるんじゃなくて、聞かないとな」


 小梅センセの言葉に少しだけ頷く。素直に聞けるかどうかはわからないから。


「迷惑や、邪魔だったらちゃんと言ってやる。だから、聞きに来い。私ひとりに無理でも力になってやる。あいつだっている。もちろん、他にもだ。それでも補いきれないことはあるだろう。だが、何も知らず、力にもなれなかったと終わった後で私に後悔しろとだけはしないでくれ」

 返せる言葉が思いつかなくて少し戸惑う。

 だって先は見えない。

 『ない』なんて約束はできない。

「んー。努力はしてみるー」

 出せる答えはコレだけで、やっぱり俺は期待に応えられないんだろう。


 それなのに、

「そうか! よし。信じているぞ」

 朗らかに迷いなく笑われて自信のない俺はすこし、困る。

「まずはちゃんと弟たちのことを考えてやれ。そこで落ち着けたら他にしたいことも見えてくるかもしれないだろう? ああ、そうだ。うまくいっても失敗してもちゃんと報告にはくるんだぞ?」

「え!?」

「当たり前だろう? 相談にのってやったんだからその行方を心配するのは当然じゃないか! 簡単に逃げられると思うなよ?」

 俺の驚きの声のあと続ける小梅センセは真剣そのもの。

 小梅センセの追求を逃げたとばれたら空も心配するのは目に見えてる。

 苦笑がもれる。

「へーい」

 ギロっと睨まれる。

 本人は小柄なんだけど、実際のサイズと人間的大きさって別だよなとぼんやり思いつつ、「わかりました」と返答を修正する。


『"うろな町の教育を考える会" 業務日誌』

http://book1.adouzi.eu.org/n6479bq/

より小梅先生&桜也くん桃香ちゃん&清水先生


『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

より空ちゃん(名前のみ

お借りしております。

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