表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014春
518/823

5/30 説得中

 金曜日はバタバタだった。

 ジェムが動かなくなって、泣きじゃくるミアノアにおののくアリア。

 騒ぎの隙をぬって鎮兄が千秋兄を部屋に放り込む。



「もう、痛くも苦しくもないんだよ」



 不思議そうなアリアの言葉。


「痛くても、苦しくても、生きていくならその先の幸せを求めて見つけるんだよ! 死んだ方がマシだなんて痛みは知らないけどさ。独りになりたくねぇんなら生きるしかないんだ。独りになりたい? 誰かを独りにしたいのかよ?」


 反応したの隆維。

 ぎゅうっと抱きしめる。

 今、痛くても、辛くてもいるコト、それを選んだ隆維には許せない否定。


 痛くて苦しくても『生きる』コトを望む。


 そばにいてくれるコトを選んでくれた。


 隆維の体が熱い。

 多分、カッとして熱が出たんだと思う。


 首を傾げて不思議そうなアリアはわかっていない。

 すんッと隆維が呼吸を整える。

 ぽんっと手を離せと促されミアノアに視線を送る。聞かせるなってコトだ。

「ミアもノアもこっちなの〜」

 両手に妹たちを引き連れてミラが動く。

 ミラはずっとアリアに無関心でいた。

 ぎゅっと隆維がアリアを抱きしめる。


「痛いコトも辛いコトも苦しいコトだって、それは、欲しくないけど、『いて欲しい』と望まれるから、そんな風に望んでくれる誰かに会うために乗り越えるんだよ。アリアは誰かにいて欲しいと望まれて『苦しくてつらい』から望まないでって思うの?」

 きょとんと、それでも言葉を理解しようとしてるのかアリアの視線がさまよう。

「いなくなったら、アリアに会えて『嬉しいよ』って言ってくれる人に会えないんだ。アリアがこの人に会えて『嬉しい』って思える人に会えないんだ」


 ……隆維にとって雪姫さんかな。


「痛くても苦しくても、俺は今は死んでイイなんて思えない。誰かに一人にでも『生きて』と望まれるなら」

 手を伸ばしたいのを我慢する。

「生きてるコトを選びたくて、それはきっとジェムだって一緒だったんだ。生きてるモノは生きようとするんだよ?」


 アリアが首を傾げる。


「苦しくても?」


「好きな人のそばにいたいだろ?」

 理解できないままの笑顔でアリアが隆維の腕に絡む。


「うん。そばにいたいの」


 アリアの言葉が上っ面を滑る。

「隆維」

 声に振り返れば父さんが来ていた。

「休まないとな」と囁く父さんに隆維も頷く。父さんの視線が俺を見て、俺がアリアを見てやらないといけないのがわかった。


「アリア、わかれそう?」

 ふわりと俺を振りあおぐアリアは綺麗に笑っている。


「難しいの。……隆維。苦しいの好き?」



『うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話』

http://book1.adouzi.eu.org/n2532br/

より雪姫さん(ちらっとお名前のみ



理解できない少女へ手を差し伸べたいと思えない。

それでも手を差し伸べる兄がいる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ