5/30 ありあと芹香
「ねぇ、アリア」
呼びかければニコニコと私を見る。
「あの子、生きてたんじゃないの?」
「苦しそう、だったの。でも、もう痛くないの」
「ダメよ」
「なにが?」とばかりに不思議そうなアリア。
「生きるコトに頑張ってるの。あの子は生きるコトが幸せだったの」
「だって、辛そうだったの」
「それでも、あの子は生きたかったの」
「アリア。悪いコトしたの?」
「そうよ。生きる道を閉ざすのはダメ。他の誰かが決めちゃダメ」
「アリア、苦しそうなのみてるのイヤだよ?」
「助けてあげればいいんだよ」
「うん。だから、助けてあげたの! もうね、苦しくないの!」
「ダメよ。生きる助けをしなきゃダメ」
不思議そうに首を傾げられる。
「痛くて、苦しくても?」
「そうよ」
「かわいそうだよ?」
会話が噛み合わない。
「……でも、千秋兄はあの子が生きてるコトを望んでたの」
使いたくない言葉。
「チアキが望んでいたの?」
反応が変わる。
本当はそれじゃいけない。これじゃダメ。でも、それ以上に繰り返させちゃダメだ。
「ごめんなさいしたら許してくれるかなぁ。楽にね、してあげたかったの。苦しく、ないように」
どうしたら『生きる』コトが『大事』だと伝えられるんだろう。
それを教わるコトなく育ったアリア。
アリアには世界はどう見えているんだろう?




