五月末の
「あれ? 飛鳥ー、人数たりなくないー?」
「ヒロタカは忌引き。せっちゃんが車出してくれてちょっとバタバタだって」
飛鳥の言葉に驚いてまゆちゃんを見れば頷いて、「残念ね」と囁く。
「えー。誰が死んでなんでせっちゃんがアッシーすんの?」
ミホ気になる〜。
「だーめ。守秘義務という奴ね」
口元に指を一本立てるまゆちゃん。
「ミホ、つまんねーこと詮索してんじゃねーよ」
「はぁーい。でもさー、気になるよー?」
健が言うから我慢するけどさ、気になるよ?
□
「階段から転落死だって〜。過労からくる心不全かなー? それと連絡を受けて急いで帰宅しようとした矢先の事故だって〜」
車中での瀬尾のじーさんは和やかに歌う。
「ふんふーん♪ そーだ。あのねぇ、何言われても、相続放棄するんだよ〜? 弟ちゃんと妹ちゃんの先、閉ざしたくないよね〜」
返事なんかできない。
うちには借金がある。
うろなではないところで町工場をやってた両親がポシャったのは十年前。だから、弟はともかく妹は良い時期を覚えていない。
借金を返すために両親が節約してた姿しか覚えていないのだ。
自己破産を選ばなかった両親は収入の全てを借金返済に当て、俺たちの生活費をどこからか借りるという生活。
そう。負の連鎖から逃れられなかった。
「債権者に迷惑かかる」
少しでも返していかないと。
「ん~、ウチでまとめちゃってるからウチだけかなぁ~。気になるんなら個人的に返せばぁ~」
んふふと笑う瀬尾のじーさん。
「なんで、そんなことに……」
「広前のご夫婦とのお話し合いの結果だねー。でも、マイナス財産も相続するんならそれなりの対処あるからねー」
「無茶な取立てとか?」
可能性がつい言わせた。
だから過労死したんじゃないかと思う。
「ん~、ちゃんと月々入金あったからねぇ。あずちんも面倒なことは言わないし、無茶な取立て指示は出してないよ~」
瀬尾のじーさんは動じない。
「ま、引き継ぐんなら月々金額入れてねー。弟さんと妹さんにも働ける年齢になったらがんばってもらわないと~。ってなるよ?」
特に妹さ~んと笑うじーさん。
「ちゃんと相続放棄しなよ? ちゃんと相続させないようにね~ん」
すとんと声のトーンが低くなった。
地元の役場が処理するがままに両親の死後の処理が進んでいく。
事務手続きだった。
泣く妹を慰める弟。
「兄さんとこ、行っていいか?」
「洋人」
「すぐ、仕事も見つけるし、困らせねぇ。心も移動したほうがいいんだ」




