5/27 ほーかごデート
「しーんーろー。とーとー倫子センセにも言われたー」
横で空が小さく笑う。
「空が笑うー。さーやちゃんにも桐子さんにもせっつかれるしー。でもこれって言う具体案は提案してくれねー。悩んでるんだぞー」
したいことなんかわかんねー。
「鎮君がしたいこと、好きなコトは?」
無限回廊からの何時もの帰り道。
俺が思い浮かばなくて悩んでるのに横を歩く空は楽しそう。可愛いんだけどさ。
「俺が好きなこと〜?」
「そうだよ」
見上げてくるのをズルイなぁと思いつつちょっと悩むポーズ。
答えをワクワクと待ってる空を焦らす。うん。ちょっとだけ。
「やっぱり」
「うん。やっぱり?」
期待にキラキラした瞳。
あ。我慢できね。
少しかがんで、ほっぺにキス。
瞬間きょとりとまつげを揺らし、ゆっくりと片手を頬に添える空。
「……はぅう~~~」
「空、かな?」
好きなのは空で、したいコトは空のそばにいるコト。
「空が好きで空のそばにいたいな」
言葉なく揺らいでいる空の耳元で囁く。
「顔、真っ赤だよ」
「お前のせいじゃん!!」
急なツッコミの声にそっちを見ると何故か赤くなっている麻衣子ちゃんがいた。
「麻衣子ちゃん、顔赤いよ? 熱中症? それとも、やーらしぃコトでも考えてたのー?」
「っちっがーう!」
ぶんぶんと手を大きく振ってふくれっつらな麻衣子ちゃん。
赤くなってわたわたしてる空の手を掴んでおく。こうしないと逃げちゃいそうだ。
「くぅっ。リア充めっ! 鎮ってちょーしいいから気をつけてねー空姫!」
ちょっ!
「八つ当たりでなに言ってんだよ。そんなことくらい、空はわかってるよな?」
コクコク頷きつつ、恥ずかしそうな空。
「って空、俺、調子イイ!?」
「え!?」
「はいはい! ちょっとごめんねー」
「えー。麻衣子ちゃん、空気よもうよー」
せっかく戸惑う空の反応見てたのにさー。
「おいといてー」
「おいとかれた!?」
「千秋に部活顔出すように言っといてー。鎮でもいいけど」
料理教室もどきかな?
「んー。わかったー」
OKOKと頷いて、制服のスカートを揺らす麻衣子ちゃんは、頷きをとめ、一歩踏み込んでびしりと指を突きつけてくる。
千秋におこられっぞ?
「見せ付けてんじゃないわよ。ちくしょう。悔しくなんかないんだからー!!」
そう言って走り去る。
「麻衣子ちゃん……」
「し、鎮、くん?」
あてどなく手を差し出した状況で見送ること数秒。
手を下ろして、空に笑いかける。マジかわいー。
「ごめんねー」
ふらりと物陰から現れる愛子ちゃん。たぶん、ずっと見てたんだろうなぁ。
「愛子ちゃんも大変だね」
「ううん。面白いから大丈夫」
そっと差し出されるたい焼き。
「出演料とお使いのお駄賃。千秋君によろしくね」
「おっけ」
三歩、下がってにっこり笑う愛子ちゃん。
「お幸せに」
そう言って愛子ちゃんは麻衣子ちゃんを追いかける。
平和だと思う。
「し、鎮君?」
「うん、茶番。面白いよね。麻衣子ちゃんって。抹茶とカスタードクリームとジャーマンポテトと白餡。空はどれがいい?」
ちょっと俯いて、「うん」と呟く空。
「空」
「ぇ?」
「帰ろう?」
電車を使えば早いけど、一緒にいる時間が少しでもほしいから、ゆっくりと歩いて帰る。
「なー。足疲れたら言えよー」
そしたら休憩入れてもう少しゆっくり帰れる。
「あーまじ、進路どーしよー」
『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』
http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/
青空空ちゃん、お借りいたしました。
この後、浜でるぅるぅに食われかける蛇のシアちゃんを回収ですね。




