好きだよ
5/25話 帰り道
鎮
空のことが好き。
空が好きって言ってくれるからじゃなくてさ、
空だから好きなのかなって思う。
だから好きって言われると嬉しい。
だけど、
なんだろう。
わかんねーんだよ。
えっと、
ごめんな。
ひどいコト言ってる気がする。
えっと、うまくまとまんねぇよな。
好きだし好きは嬉しい。
キスしたいし抱きしめたいしもっと空を知りたい。
好きは重なっていくんだ。
だけどさ、
そう、なんだけどさ、
わかんねーんだ。
俺が好きになってもらえるのがさ、
わかんねーんだ。
俺は、俺が大事と思えない。
こうやって空を傷つける自分が嫌になる。
だってさ、
空のことを信じられないって傷つけて傷ついた空が見れるのも嬉しいんだ。
だから本当は何も大事になんかできないのかもしれない。
空を傷つけたくないのに傷つけたいんだ。
空が好きだよ。
空は俺のだから。
大切で愛おしい。
だから、ホントは側にいちゃいけないんだ。
空を傷つけたいと思う俺が一番側にいちゃいけないんだ。
ホントはさ、わかってるんだ。
俺は誰かに愛されたりする価値はないんだ。
そう振舞って見せてもどこかニセモノなんだ。
ほんものもニセモノもわからない。
でもほんものにはなれないんだ。
空が好き。
空の好きは嬉しい。
俺がいいって言ってくれるのが愛しい。
空の笑顔が好きだ。
照れて拗ねてる姿が好きだ。
潤んだ目での上目遣いはずるいと思う。
それなのに、
好きなのに、
空が俺を好きなのが信じてるのに信じられねーんだ。
「口にするべきじゃないよな。知らないほうが、よかったよな?」
優しい気持ちが優しい空気が同時に痛かった。
空を送りながらどうして口にしてしまったのかと後悔する。
それもこんな日に。
街灯の灯りの下、見上げてくる空の目が潤んでいて自己嫌悪が迫ってくる。
口にしてしまったのはたぶん、甘えてるんだと思う。
それと、たぶん、空を傷つけたかったんだと思う。
傷つけて、俺のことを忘れないでいられるように。
空は優しいから、俺はそれに甘えてる。
もしかして言葉だけじゃなく傷つけたいと思うようになるんだろうか?
久しぶりの晴れの夜。
月は笑うように見下ろしている。
暖かさを感じて見下ろす。
名前を呼んで抱きしめてくれている空がいて。
ああ。
そんなに甘やかされたら引きどころがわからなくなるんだ。
泣かないで。
その泣く姿すら見ていたいと思うんだから。
俺が泣かせたと思えば嬉しいんだから。
『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』
http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/
より青空空ちゃん、お借りしました。
プチタイトル詐欺?




