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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014春
498/823

5/23 ほーかごデート相合傘

5/23はなんかキスの日らしいですよ?


 今日は少し早く終わったし、雨だったのもあるからそっと無限回廊のドアを開ける。

 いまだぱらつく雨のせいか客は少なく、それも奥のカウンターの方にいるくらい。

「鎮くん」

 先に空に声をかけられる。

 仕事中に邪魔するみたいだけど、まぁ、うん。お客の入り少ないから邪魔にならないよ、な。

「そ、……」

呼びかけようとしたら、

「空ーーー! 生意気に暴力をふるうのだーーー!!」

飛んでくる黒いブツ。

 今回は阻止成功。

『るぅるぅ君』は器用に膨れると木野江んとこ、『うろや別館』の確か陽光さんのところへふらふらと向かう。

手触りが不可思議でつい手を見てしまう。

「空、大丈夫?」

「うん」

「静かにしてるからお客増えるまで居ていい?」

 邪魔はしたくない。



 途中で陽光さんは『そろそろ帰る』と消え、俺は邪魔しないように『るぅるぅ君』と向き合う。

「落し物には注意な」

「わかったのだ! こないだもありがとうなのだ!」

 さっきも陽光さんとかなり喋りこんでいたし、手触り謎だし、浮いてるし。渚ちゃんの技術はどこまで進むんだろう?

「お店だからも少し静かにな。でも渚ちゃんも上手く作れて嬉しいだろうなぁ」

 きらりと『るぅるぅ君』の赤い瞳がきらめく。マジ生きてるみてぇ。

「るぅるぅも渚の技術はすごいうと思うのだ。とても優れた繊細な技術のなせる業なのだ」

 お前わかるのか。みたいに言われて面白い。

「るぅるぅ君は製作者なぎさちゃんが好きなんだな」

「るぅるぅは渚が好きだぞ。渚の作り上げる装飾品ものは美しく繊細でよい音色を持っているのだ」


 るぅるぅ君は渚ちゃんをべた褒めだった。


 空がにこにこ笑っている。

 途中でるぅるぅもふらりと消えた。店長さんは笑って大丈夫、って言ってたけどさ。

 また鞄、落とさねぇ?




 降ったりやんだりの帰り道。

「日曜、晴れるかなぁ。三春さんが篭り気味でトロが運動不足なんだってさー。大型犬だから散歩不足もアレだし、でも一緒に散歩できる相手選ぶらしくってさ。あ。空だったら大丈夫だと思うし」

 基本、俺が喋りかけてるか、黙って歩いてるかなんだけどさ、

「俺ばっか、決めちゃってない?」

 いや、じゃない?

 覗き込めば、不安を払うような笑顔と『大丈夫』とばかりに優しい手。

「空」

「なぁに?」

「少し持って」ときょとりとする空に鞄を預ける。



「髪に水滴」

「雨だもの」

 くすくす笑いながら顔を上げる空。

「うん。口実と、角度は最高だよね?」


 ぱらり傘を打つ雨が立てる水音。

 大きめの臙脂色の雨傘。

「ちゃんと、誰も見えなかったと思うよ?」

 俺だけが見る、空の表情。

「大好きだよ。雨が降ってもさ、空と過せるんならきっと嬉しい。でさー、散歩セットは別として何がいると思う?」

 鞄をそっと取り返す。

 耳元で、囁いてみよう。

「今日はさ、キスの日なんだって。ねぇ、空からは?」



『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

より「無限回廊」青空空ちゃん。

お借りいたしました。

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