5/23 千秋バイト【愛菜視点】
足を組んでこっちを見てくるのはエルザ。
ママと花ちゃんの同僚。私にも優しい。
「それで、体調は?」
「うん。大丈夫」
「まぁ、前回時点で問題は出てなかったしねぇ」
アリアがフワリとエルザにまとわりついている。エルザは愛おしげに抱き寄せる。
「マナは元気。エナとハナがきっとうれしいの」
「そぅね」
ユラっと伸ばされるアリアの手。
腕に触れられて身を引きそうになる。
言葉がでない。
「冷たいよ。大丈夫?」
息を飲みそうになる。
「雨が少しぱらついてたから」
アリアはその答えにパチパチと目をしばたかせる。
「あったかいのノミノモもらってくるね!」
意味がわからなくて首を傾げる。
「飲み物だよ。アリア。ココアでいいよね?」
千秋がアリアの言葉を修正しつつ笑う。私はその差し出されるカップを受け取る。
温かかった。
「甘い」
「砂糖、多かった?」
首を振って否定する。
バイト中だからと言ってメモっぽいものからデータを拾って入力していく姿を見つつエルザアリア姉妹と雑談。
「マナは痛くならない? ハナもギブソンもいたいって言ってたの」
「だいじょうぶよ」
アリアがふわぁっと笑う。
「いたいの。やだもんね。アリアもいたいの嫌い。ハナもね、エナもね、ふたりともね、もう痛くないの。マナ、もう心配しなくていいんだよ?」
笑うアリアが少しこわい。
「アリア」
そんなアリアを呼ぶ千秋の声には冷ややかさがある。
「はぁい」
冷たい呼びかけにアリアは気にした風もなく笑う。ふわぁっとスカートを翻して千秋のそばに椅子を持っていって座る。
「お膝がイイな」
「ダメ。あぁもう! あいつらまた関係ない私物経費で落としてやがるっ!!」
ねだるアリアをスルーして入力仕事。エルザがニンマリ笑う。
「範囲内ならイイわよぅ。彼らの役割は護衛で周囲情報の確認だわぁ。お姫様の安全確認ができてればいいのよね」
「表面上の経理処理がずさんなのはダメなんだよ! 最低限体裁とれる資料が足りない!」
「あら、そっち?」
「使途不明金の方が多いってどう言うコトさ!」
「無駄遣いが多いのね。きっと」
笑うエルザ。アリアが心配そうに千秋を撫でる。
「怒っちゃダメだよー」
「はいはい」
何処か投げやりぽい千秋の返答にもアリアは笑う。
「で、千秋」
エルザのニヤニヤした呼びかけに千秋がエルザに向き合う。
「アリアとヤったの?」
沈黙が長い。
空気が凍った感じ。
アリアが私に押し付けられ、にっこりとした笑顔。
「愛菜ちゃん、ちょっとアリアとモールで買い物お願い出来るかな。エルザ。ちゃんと話付けた方がいいみたいだし、時間とってもらえる?」
「いやって言ったら?」
「そりゃあ、僕はお願いしかできないけど?」
私は一触即発な空気の中、アリアを連れて、モールへと逃げた。




