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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014春
496/823

5/23 千秋バイト【愛菜視点】

 足を組んでこっちを見てくるのはエルザ。

 ママと花ちゃんの同僚。私にも優しい。

「それで、体調は?」

「うん。大丈夫」

「まぁ、前回時点で問題は出てなかったしねぇ」

 アリアがフワリとエルザにまとわりついている。エルザは愛おしげに抱き寄せる。

「マナは元気。エナとハナがきっとうれしいの」

「そぅね」

 ユラっと伸ばされるアリアの手。

 腕に触れられて身を引きそうになる。

 言葉がでない。


「冷たいよ。大丈夫?」


 息を飲みそうになる。


「雨が少しぱらついてたから」

 アリアはその答えにパチパチと目をしばたかせる。

「あったかいのノミノモもらってくるね!」

 意味がわからなくて首を傾げる。

「飲み物だよ。アリア。ココアでいいよね?」

 千秋がアリアの言葉を修正しつつ笑う。私はその差し出されるカップを受け取る。

 温かかった。

「甘い」

「砂糖、多かった?」

 首を振って否定する。


 バイト中だからと言ってメモっぽいものからデータを拾って入力していく姿を見つつエルザアリア姉妹と雑談。


「マナは痛くならない? ハナもギブソンもいたいって言ってたの」

「だいじょうぶよ」

 アリアがふわぁっと笑う。

「いたいの。やだもんね。アリアもいたいの嫌い。ハナもね、エナもね、ふたりともね、もう痛くないの。マナ、もう心配しなくていいんだよ?」

 笑うアリアが少しこわい。


「アリア」

 そんなアリアを呼ぶ千秋の声には冷ややかさがある。

「はぁい」

 冷たい呼びかけにアリアは気にした風もなく笑う。ふわぁっとスカートを翻して千秋のそばに椅子を持っていって座る。

「お膝がイイな」

「ダメ。あぁもう! あいつらまた関係ない私物経費で落としてやがるっ!!」

 ねだるアリアをスルーして入力仕事。エルザがニンマリ笑う。

「範囲内ならイイわよぅ。彼らの役割は護衛で周囲情報の確認だわぁ。お姫様の安全確認ができてればいいのよね」


「表面上の経理処理がずさんなのはダメなんだよ! 最低限体裁とれる資料が足りない!」

「あら、そっち?」

「使途不明金の方が多いってどう言うコトさ!」

「無駄遣いが多いのね。きっと」

 笑うエルザ。アリアが心配そうに千秋を撫でる。

「怒っちゃダメだよー」


「はいはい」


 何処か投げやりぽい千秋の返答にもアリアは笑う。

「で、千秋」

 エルザのニヤニヤした呼びかけに千秋がエルザに向き合う。




「アリアとヤったの?」





 沈黙が長い。

 空気が凍った感じ。

 アリアが私に押し付けられ、にっこりとした笑顔。

「愛菜ちゃん、ちょっとアリアとモールで買い物お願い出来るかな。エルザ。ちゃんと話付けた方がいいみたいだし、時間とってもらえる?」

「いやって言ったら?」

「そりゃあ、僕はお願いしかできないけど?」


 私は一触即発な空気の中、アリアを連れて、モールへと逃げた。

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