5/9 おじさん!
理解してなくて不安そうな千歳ちゃんを引っ張る。
人んちのことに口を突っ込むのはよくないのは知っている。
でも、まぁ、千歳ちゃんは友達だし、出が少し心配そうに寄って来る。コレはかなり見てたな。
「なんで、仲良くできないの?」
悪いことじゃないのにという口調。
「なんで、自分のしたいことばっかり押し付けるの?」
にこっと笑っていう出。
「押し付けてるわけじゃ!」
「ぼくは好きだから、好きになって言う事をきけばいいって、母さんに言われたら困るんだけどきかなきゃだめ?」
「なんで困るの?」
千歳ちゃんの『当たり前』の口調に出がにっこりする。
「だって、ぼくには今、ママがいるから。母さんがぼくを好きだと言ってもそれがうそだって、知ってるから。もし、ほんとうでもしんじられないけどね」
千歳ちゃんが黙る。
出の母親の茜おばさんは出に興味を持っていない。出が気がついていても茜おばさんは気がついていなかった。もし、気がついていて無視し続けてたっていうんならその意図がぜひ知りたい。
いとこだって知っていてそばに寄ってきてた出。
弟ができたみたいで嬉しかった。
「涼維おにいちゃんたちがおにいちゃんだからがまんしなきゃって言うんなら千歳おねえちゃんだって芹香ちゃんや、ミアちゃん、ノアちゃんよりおねえちゃんなんだからがまんしなきゃ。縁くんも紗羽ちゃんも『うその家族』の中にいるなんて、言われたくないとおもうんだ」
そっと出を抱きしめる。にこにこしてるけど、軽くおなかの辺りをおさえてて。
「好きって。たいせつだよって。届けたくても届かないこともあるよ?」
「あのさ、千歳ちゃん、待つのも大事なんだと思うよ? メールとかじゃなくて郵便事故にあった手紙とか、出しそびれた手紙の返事を送り出すくらいにのんびりと。だって今は知ってるし、同じ町にいるんだから、ね?」
出の言葉に続ける。
どっちかっていえば千歳ちゃんは答えを急ぐ方。「わかんないならぶつかっちゃえ」と。
かっこいいと、いいところだろうなとは思うけど、ぶつかられるほうは堪んない。
特に、家族のことなんて微妙な問題だ。
「ぅー。ダメだったかなぁ」
微妙な上目遣い。頷けばかるく息を吐き、しゃがんで出と視線を合わせる。
「おなか、いたい? 大丈夫?」
くしゃりと出の頭を撫でる。
「少しだけだから大丈夫」
撫でられたことに照れた出は笑う。千歳ちゃんが眉間にしわをよせる。
「痛いんじゃない」
「にーちゃんたちのケンカに挟まれるより大丈夫」
「天音先輩と宗一郎先輩、ケンカするんだ?」
慌てて首を振る出。
ここは出のこだわりポイントだからなぁ。
「天音と宗はぼくの姪と甥! 兄じゃないし、ウチの兄弟に女兄妹はいないの! 一番上の兄の子供たちなんだから!」
うん。リアルちっさいおじさんであることにこだわりがね、あるらしいんだ。よくわかんないけど。
ストレス性の腹痛もちな出。




