表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014春
486/823

5/9 友達として

「追いついた〜。ったく、あそこまで言うコトねぇだろ?」

 公園そばで捕まえて病院よりの空きベンチに誘い込む。

 ちょっと嫌そうな顔はしてたけど、聞いてやらん。聞くのは話だけだ。

「え? トドメが刺しそびれてる気がしてるからもう一度ちゃんと話さなきゃいけないのかもって思うと気が重いんだよね」

 千歳ちゃんが傷つくコトを心配して俺が言ったと思ったらしい涼維がそういう言い方をする。

「いやぁ。千歳ちゃんじゃなくてさ。涼維がキツいだろ?」

「ん? なにが?」

 自分のコトを危惧されたとは思ってなかったらしい涼維は不思議そう。

 でも傷つけるためにだしたあのセリフはきっと涼維自身を傷つける言葉だと思う。

 知っていたとしても音として耳に届くコトってキツいと思うから。

「いや、だってさぁ。家庭環境って色々だとは思うけど、まぁ大なり小なり親の愛って信じときたいもんじゃね?」

「親の愛ねぇ。……俺、一番古い記憶、かーさんが隆維を水に沈めてるトコだからさ。アレが愛なら、愛なんかいらない」

「ちょっ!?」

 オレがトラウマになるじゃん!

 なんなんだよ。その情報!?

「ウチさ〜きっとと〜さん達からしてついてないんだろ〜って思うよ? だから、とーさんもちゃんと愛し方なんかわからないんだ。だから、俺も隆維以外の愛し方なんかわからない。だから、だからさ。隆維が傷つくのが嫌なんだ。隆維は平気じゃないんだ。鎮兄もね。それに、千歳ちゃんが求めてるコトって俺たち兄弟が応えてあげれないコトだしね」

「応えられねぇの?」

 あくまで軽く言い放つ言葉に機械的に反応を返す。

 半分くらい重過ぎる話題で『なに言ってんの涼維ちゃん』と突っ込みたい。

 わたつくオレを見て面白そうに笑うんじゃない。面白くねぇよ?

「とーさん&あーやおばさんと俺たちとの中に見えない亀裂が増えるよ。無自覚無意識で家庭壊す気かって言いたいよね」

「ぇ!?」

 小さく添えられるため息に仕方ない感が溢れてる。

「ウチさ。まずとーさんとあーやおばさんがさ、自分達を捨てた相手受け入れる気ないしさー。とーさんはかろうじて不干渉なら嫌悪感は抑えますって感じだし、あーやおばさんは完全拒否ね。俺らが受け入れようものなら、思いっきり距離取られそう。ただでさえ距離はかられてんのに笑えるよね。それなのに無神経にキッツいマジきついやめてほしい。隆維が何とかしようってとってるバランスが崩れんだよ。それで崩れるようなバランス取るだけ無駄だって言いたいのかよ? っざけんな? 知らないんだからってちゃんと情報あげたけど、アレかよ。家族のバランス崩していいって考えるんならちゃんとちゃんとトドメ刺さなきゃダメだよな?」

 一つ息を整える。

 イヤ、情報一気に流し込まれてパンクなんだけど?

 それ狙ってる? ちくしょう。

「ごめん。祥晴にぶつけるつもりじゃなかった。もしよければ忘れて?」

 困ったような後悔するような笑顔。完全に聞いたコトを記憶できるほどの出来はない。でもな。

「誰かに言ったりはしない。内容の細かいトコは忘れちまうっつーか覚えてられない。でもな、なにもできねぇよ? でもな、でも、友達だろ?」

 近くにいるコトはできるぞ?

 一人にしないぞ?

「心の問題なんて重過ぎるけどさ。解決すんのは涼維だけどよ。オレは友達だと思ってるから、あんま一人で思い詰めんなよ?」


 特に何かを見てたわけじゃなさそうな青い目が俺を映して少し緩んだ。


「ありがと。祥晴」



 一瞬視線を泳がせてから、オレを見て礼を言う涼維。

 涙に潤んだ瞳を向けてやわらかな笑顔でってなんか反則じゃねぇか?


 え?


 オレがバカなの?



「どういたしまして? 家帰って大丈夫なのか?」

「ん?」

「いや、ほら、おばさん」

「ああ。とーさんとかーさん今別れてるし、かーさんは帰国してるから」

「……どこまでマジ?」

「ナイショ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ