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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014春
485/823

5/9 相互理解不能

「あのね、涼維君。どうやったらもう少し仲良くなれる?」

「……。あんまり友好的じゃないの、流石に気がついてたんだ?」

「うん。なんで? 話は聞いたけど、どうしてなかよくできないのかわかんない。何で関わっちゃ嫌なの?」

 たまたま見かけたとは言え、ちょっと固まる。

 一年の千歳ちゃんと涼維だ。

 隆維が『遠縁』って言ってたっけ?

 小学生の時にうろなに来た隆維達。千歳ちゃんのお母さんはもともとうろなに住んでいて二十年近く離れてたらしい。

 マァいろいろ家庭環境ってあるけどさ。

 千歳ちゃんは愛情かけられて育ってんだなと思う。

「おかーさんも涼維君達と仲良くしたいって言ってたよ?」

 どうして仲良くできないかわからないって声。当たり前に受け入れられると思ってたのに拒否されて困ってる感じだろうか?

 じーさんも微妙な反応してたよなぁ。動物病院の常じーさんと一緒にどうも知ってたっぽいけど。

「りゅーちゃんもしずおにーちゃんも、おにいちゃん達は優しいのに涼維君と千秋おにーちゃんは意地悪だと思う。なんで!?」

 ぁ。ヤバげ。

 一年の時は涼維とは何気に席とかも近かったからな。相棒りゅういが関わらない以外は付き合い悪くはないんだよな。

「優しくなくていいよ。大事なものが違うくて分かり合えないだけだよ。あのね。千歳ちゃん」

「な、なに?」

「おかーさんの愛情って絶対だと思う?」

「は? おかーさんは愛してくれてるに決まってるじゃない。子供を愛してない母親なんかいないでしょ?」

「よかったね。実感できてて。大事なコトだと思うよ」

「う、うん。ありがとう」

 涼維の声は柔らかいけど、なんとなく、やばい気がする。

「……りょ、」

「よかったね。ウチはとーさんも俺たちも母親に愛された覚えはないよ?」

「ぇ?」

「俺らのおばーちゃん? 優しくて素敵な人だったんだってね。ウチのとーさん達捨てて笑ってられるような人だったんだね。かっこいいよね。迷いがなくて」

「……ちがっ」

「幸せな人生をおくって笑顔で亡くなったんだよね?」

 千歳ちゃんが言葉を見つけられなくて、泣きそうででも泣けない表情で。

 絶対に言いすぎだし、言ってる本人が傷つきそうじゃないか。

「涼維!」

「あれ? 祥晴」

「そのへんにしとけよ」

「でも、千歳ちゃんがわかってくれないからちゃんとわかってもらいたくてさ。ねぇ。千歳ちゃん」

 じぃっと涼維の青い目が千歳ちゃんを見据えている。

 それでもこれ以上追い詰めるのはよくないんだよ。

「涼維」

 あれ? オレじゃないんですけど?

「鎮兄」

 涼維が不安げに視線を泳がせる。

「どこから……?」

「えっと、迷いが、なくてのちょっと前から。納得、できなくてもさ、女の子追い詰めちゃよくない、な」

 き、気まずい!

 たぶん、鎮にーさんも気まずげ! しかも空さんが超心配そうっ! そうだ今日は金曜日だった!

「じゃあ、誰なら追い詰められてもいいの? 情報が足りなくて何もできなくて見てるしか、気がつかないようにするしかないのに、なんで、知りもしないわかろうともしてない相手に追い詰められなきゃいけないんだよ。しずめあにぃのばか!」

 キッと鎮にーさんを睨みつけて、言い放ってから走り去る涼維。さすが家訓『言いたい事は言ってしまう』『逃げ勝ちでも勝ちは勝ち』だな。隆維いわくだけど。

 おろりとしてる鎮にーさん。思ったよりケンカ慣れしてねーな。

「誓ちゃん! 千歳ちゃん任せた! 鎮にーさんは歌姫とのデート続行で! 涼維とはオレが話とくからさ。でもじゃなくて、こじれるとこまんねぇ? よろしく歌姫~♪」

 もどかしげな鎮にーさんをおいて誓ちゃんが千歳ちゃんのほうへ寄ってるのも確認済み。

 さて、追いかけますか。

 どーせ今日は隆維が休んでたから自宅方面だろ。



『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

青空空ちゃんお借りしております。

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