3/19 エルザ襲撃
確認のメールを見て笑う。無視されなくてよかったと思う。そんなコトはしなさそうだったけど、わからないし。
『エルザです。メールありがとう。シーが邪魔出来ない時間に会いましょう』
と送信。
お仕事の入ってない時間がイイと思う。
私の時間は融通がきくから、訪ねてみる。
お家がホテルってステキね。
ラウンジのソファで寛いでいればソラさんが来てくれる。
『じゃあ、行くわね。ホテルブルースカイ。見えてるから下のラウンジでのんびり待ってるわぁ』
そんな返信をしてラウンジのソファで寛ぐこと五分。いそがせちゃったかしら?
「はぁい。ソラさん」
急に呼び出すような形になったのにふわり微笑む姿は心和む。
いやぁ、ここに来るまでに余計な想定しちゃったわぁ。
それとなく、こっちでのしーの様子を話してもらいつつ、小さいころの運動神経のよさや、おとなし系だったことを話す。
「ぱっと見の印象は変わってたけど、喋ったら相変わらず変わってないなって思ったわ」
優しい子だったし、あんまり人を疑ったりするような子じゃなかった。
前置きをして、聞く。
「しーのこと好きなのよね?」
頬をぽっと染めてこくりと頷く。
ああ、一安心。
不思議そうな彼女に笑いかける。
「だって、ホントは『え。本当は付きまとわれてウザいです』なんて答えが返ってきたらどうしようかって思っちゃうもの。今はしーも遠いから聞かれることもないものね」
考えたこともないんだろうなという表情に和む。
「あのね。しーが人を殺しても、誰かを傷つけても、それでもソラさんはしーのそばにいるコトができる? 好きでいれる?」
ぁあ。動きが止まる。
かわいいわぁ。
「もちろん、例え話よ?」
少し困惑したようなソラさん。
「私ねぇ。ソラさんのこと好きだわぁ」
人柄も外見もしーを好きになってくれたことも。
後は他愛ない話題でお茶を濁して席をはずした。
かわいらしくて善良な少女。
こういう相手だから、マンディを排除したかったのねぇ。
欠片でも、彼女に傷ついてほしくないから。
昨日ミツルとの会話。
「あのさぁ。エルザ、仕事相手にさ、あんまり干渉したり、感情を傾けたりしていたら適切な判断・対応を求められた時に困るコトになるぞ?」
突きつけられた正論かもしれない言葉。
それでも。
「感情を傾けてこそ良い関係も築けるのよ」
私はしーが好き。
望むならしずめと呼んであげたい。
「処理指示出た時、どうするわけ?」
「それは私の仕事じゃないわ。私はその結末を悲しめばイイだけだわ」
「うっわ。羨ましいぜ」
棒読み発言。多分、感情は揺れてない。そんな状況ギリギリまで考えたくない。
「ねぇ、空さんってどういう人?」
「基本は夏限定でうろなに戻ってくる海の家、水族館からしたら隣家だな。の真ん中のお嬢さんだよ。歌うのが上手で、控えめで優しそうな女の子。ここの家族との仲は千秋も阻害しない感じだな。つーか……」
夏のシーズン、ミツルは大概アメリカに戻ってきてる。基本はすれ違いなんだろう。
「つーか?」
「やったらマズイって思ってそうだなぁ。そういう回避力、高い方だからなー」
ミツルは六年近くそばで見守っているだけあって詳しい。
「私、チアキは知らないのよね」
「知って損はないと思うな。同僚になる可能性もあるしなぁ」
「そんな指示も出てるんだ?」
「まぁな。観察録はちゃんとシュレッダー入れとけよ」
読みながら頷いたシュレッダーにかけた観察録は普通のことしか書かれていなくて、遠巻きにかけた負荷に関する反応録が気に食わなかった。
『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』
ホテルブルースカイ、青空空さんお借りいたしました。
http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/




