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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014春
463/823

4/26 たどりつく

 地図と番地を確認しながら道をたどる方法は鎮兄のオススメ。時折り周囲の風景も見て道を覚えればいいと言う。

 ココに眼科、喫茶店、歯医者に庭を綺麗に飾った民家。ここなんか、壁のデザインが面白い。あそこにはコンビニ。

 ゆるい坂道はゆったりと蛇行してうろなの北の森と重なってるのか、深い木々の香り。

 芹香とノアは手を繋いで楽しげに歌っている。

 クリスマスの後に神父様に会ったことを教えてもらった。

 涼維、ずるい。

 しかも町で雪姫ねーちゃんと一緒。ずるいと思う。

 ふてくされると嬉しげに笑う涼維。

『だってすぐに出かけちゃいそうなんだもん』と笑われて否定は、できなかった。

『優しそうな人だったよ』とはにかむ涼維を見て、きっと大丈夫な人なんだなって思ったし、雪姫ねーちゃんのソンケーするような人なら問題なんかないと思う。


 たぶん、俺と涼維にとっての『神父様』の印象はかなり特別。


 パティの家の関係で誘拐されて、生きて帰った俺達をしばらくみてくれたのはパティと仲のよい神父様。

 家で働く人たちの子供は帰って来れなかったから。

 当時はそんなこと知らなかったけど。

 見えないテーテと遊ぶ俺達を不気味がらず、受け入れてくれたから、涼維も落ち着けたんだと思う。随分、周りの反応におびえていたから。

 ある程度判断がつくようになったら二人に用意されたおやつを三つに分けなおす姿は奇異に映ったんだろうなとわかる。

 二、三度やってるうちにおやつは三セット出てくるようになったっけ。


 普通に笑えるようになったのはそこでの生活があったからだと思う。そこで暮らしたのは短期でも日曜学校とか、よく遊びには行ったから。

 好きなんだ。あの空気が。



 とーさんはそんなことは、最近まで知らなかった。

 とーさんには伏せられた情報。


 とーさんと暮らすことはパティとも、テーテとも、教会とも遠ざかる生活で。

 涼維が不安そうだった。

 俺は『そういうこと』が、わからなくなってたけど、涼維のことは心配だった。


 体が熱くて意識が遠のく中、涼維が叫んでいた。


 だから、本当の俺はあの時に死んでるんじゃないかと俺は考えていた。


 涼維が望むからまだ残ってるんじゃないかと考えていた。


 だって、転んでも痛くなかったから。


 だから、最初神父様やシスターが怖かった。

『いちゃダメだ』って涼維から離されたらどうしようかとそこだけ不安だった。


 涼維に関しては不安が働いて考えることができた。


 今思えば、一番心配されてたのは俺だったのかもなぁとも思う。

 ……手紙、でも書こうかなぁ?


 そんなことを思いながらのんびりと歩いていると、芹香がどこへ行くのか確認してくる。

 ボディーガードはまいたし、目的地は伝えてないし、いつも来ないあたりだし気になりはじめたんだと思う。



 教会だと伝えて、さらっと違いや宗教に関する思いを告げれば芹香が無造作に聞いてきた。



「隆維は何を信じてるの?」



 信じてる?

 神様も、教会かみにちかいばしょもあるのが当たり前で。

 あえて信じてると言葉にするものでもない。

 パティの仲のいい神父様。時計技師をやっているじーちゃんと仲のいい司祭様。

 だから好きだと告げる。もろもろ含めて好きだから。

 そして同じ問いかけを返す。


『ヒト』と言い切る芹香には迷いがない。

 分かり合えなくてもヒトを信じて、その描く未来を信じるというのなら、それはとても難しい。

 だから、少し茶化す。

 互いに歩み寄らない兄弟を持つとこうなるのかなと思いつつ、涼維をちょっと見る。

 俺は涼維をわかってる?


 ノアは、涼維は何を信じてる?



 門が見える。

 静かな空気に包まれた古びた教会。

 祈りを捧げるのに場所は関係ないとわかっていてもビルの一室より穏やかな気分になれそうな気がするのは多分、心の問題。神への祈りの沁みこんだ場所だから。だと、思う。


「ここだー」

「ついたね」




『うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話』より

雪姫ちゃん、カトリーヌ神父様話題に。

恋詩ヶ崎の教会をお借りいたしました。

http://book1.adouzi.eu.org/n2532br/


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