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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014春
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4/26 心の求めるところ

 駅からおりてきょろりと辺りを見回す。

 普段から森のむこうには行かない。だから、森を越えた『こいしがさき』に来るのははじめて。

「おにーちゃん、ミラおね〜ちゃんとミアちゃんも来れたらよかったね〜。いつもと違う海って不思議〜」

 旧水族館(うち)から見る風景とやっぱり違うように見えてるらしい。

「海は海だけど、やっぱりどっか違うわね!」

 ノアも芹香もご機嫌だ。

 ノアはともかく、芹香が同行する理由は謎だ。

「えーっと、どういう道順だったかなー?」

 隆維が地図をめくって、現在地を探す。

 お正月の雪姫さん詣で。その時に神父様の教会がどこにあるか教えてもらったのだ。神父様と雪姫さんは仲よしだったみたいだし、こーむてんのおっちゃんの幼馴染だし、ってことで聞いてみてたんだよね。


 日本に来て教会に通う習慣はなくなっていた。

 最初の二ヶ月を過ごした大阪ではまだ言葉も分かり難かったし、小学校にもあがってない俺たちが行ける教会なんて自力で探せなかったし、間を置くコトなくうろな町に移動するコトも決まっていた。

 大阪の家には『宗教』自体を嫌がる兄ちゃんや姉ちゃんとかもいて、『行きたい』は言い出せなかった。

 あの頃、半端に『隠れキリシタン』だの『踏み絵』だの『バレたら良くないんだ』だの散々吹き込まれた気がする。

 隆維と二人で『しゅーきょーだんあつこわい』と言いあったものである。

 今なら言える。

『まともな宗教とカルト集団を混同するな』と!

 だって多分、そーゆーので印象悪くて嫌ってたんだと思うんだよね。

 うろなに来てからは、分かるところにはなかったし、ビルの前に教会って看板があってもそれは少し入り難かった。

 兄弟たちとの関係作りや自分達の居場所の確立。コレに時間をとられて教会を探しに行く機会なんかはなかったと言える。長期の休みにかーさんの実家に帰ったりした時には入り浸ってたけど。


 だから、この町で神父様に出会って……驚いたし、与えられた祝福に嬉しくなった。

 するっと不安が溶けて『大丈夫』って思えた。ちっちゃい子みたいに袖に触れたりしたいという気持ちを抑えた。もう、そこまで子供じゃない、んだから。

 学校に行けるようになったら隆維にも教えようって思った。

 それまでは内緒。スグに聞きに行ったり、行こうって言い出しそうだから。



 場所を聞いたのは一月。

 そして今は、四月。

 本当は春休み中に行きたかったんだけど、前半はいきなり千秋兄がいなくなるし、後半は女児誘拐してくるし、美丘さん問題に、とーさん、おばさんたちと血縁系(ちとせちゃん)の問題に。行ってられるほど、心にゆとりがなかった。みどりちゃんもきたしね。

 いくら色々に捉われてない隆維でもそんな環境でチビたちを放っておく事はしたくなかったみたいだし。

 だからGWにかかってるとも言える今日、ようやく来れたのだ。


「涼維。こっちとこっち、この道ってこっちだよな?」

 地図のページを開いて、民家の番地表記とかと照らし合わせつつ隆維が聞いてくる。

「えー? うん、きっとあってるんじゃない?」


 軽い坂道を歩く。


 芹香とノアはにこにこと手をつないで歩いている。

「ねぇ、どこ向かってるの?」

 問いかけに出かけることしか知らずについてきたチビ二人を見る。

「教会ー」

「きょうかい?」

 不思議そうな芹香に隆維が笑う。

「そ。神父様のいる『神の家』」

「しんぷさまかぁ~。かんぬしさんとかじゅーしょくさんとかとは何がちがうの?」

「祀ってる神様が違うんだよ。神様の家の管理者にして伝道者。そう言う意味では同じだけど、『教え』もやっぱ違うしさ。本質的に大切にしましょうって言ってるものは近いのかも知れないけど、その違いが許せないと感じると争うし、人の奥には生きるっていう闘争が根付いてるからさぁ。ほどほどに相手を尊重できないと、宗教戦争は救いがないんだよなー」

 キリスト教は主神は一人で、後は天使とセイレイと、神の子キリスト。日本じゃ縁が薄いから把握は仕切れてないけど、守護聖人の日とか、いろいろあるんだよね。

「隆維は何を信じてるの?」

 宗教系と思ったからか、芹香から疑問がでる。

 すとんと、『神様』と言えない、隆維が少し悩む。

「……さぁ。でも、あの空気が好きなんだ。じーちゃんと仲がいい司祭様とか、シスターとか、賛美歌とか、みんな好き。ここの教会がどんなのかしらないけどさー」

 『神様』を信じてるとは表現しきれない。でも『教会かみのいえ』は好きだと表現できる。そう言う意味ではどこか曖昧。

 芹香がじっと見てたと思ったら、道の先を見据えてノアを引く。

「ふぅん。そーなんだー」

「芹香は何を信じてるんだー?」

 同じ質問を返されて芹香は笑う。

「人間! 信じあえるし、あいいれない相手だって、分かり合える可能性はいつだって零じゃないもの。そばにいられなくたって、同じ時間にいるんだもの。出会えたことが、うーん、きっと神様の采配だと思う。どの神様でもいいけど、だから見守ってくれている神様には感謝できるわ!」

 ちょっと独特?

「それで、千秋兄とケンカ中かよ」

「ケンカ? んー。ハッパはかけたし、不満もぶつけた。ケンカ、なのかな?」


 声が少し揺らぐ。


「セリちゃん?」


「大丈夫! 帰ってきてから寝てるの多いけど、なんか吹っ切ったぽいし! もう少し、愛菜とかと仲良くできないのかなぁ?」

 考えるコトは芹香も多いっぽい。

 それでも隆維も芹香も家の中が、それと自分周りが優しい状態を好む。うーん。好むからそのために考える?

 優先順位はあるんだと思う。

 少しだけ、心配なんだ。

 隆維も芹香も、時々、自分自身の順位がスゴく低いんじゃないかと思うから。


「涼維? ペットボトル、ノアも芹香もそろそろ水分補給させとこーぜ?」


 声をかけられて慌てる。海浜公園駅の自販機で買った飲み物を引っ張り出す。

「隆維も、疲れてない?」

「へーき。きっと、もう少しで着くぞー」

『うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話』より

雪姫ちゃん、タカさん、カトリーヌ様話題にお借りいたしましたー。


http://book1.adouzi.eu.org/n2532br/


辿りつくかどうかはまだ未定(ぁ

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