長船くん【中学校】
新学期になって少し過ぎた。
新しいクラスにも慣れてきたと言える。
今年も日生隆維と同じクラス。
「メグと離れた〜」
そう嘆く隆維をクラスメイトが笑いながら慰めている。
「オレは涼維と離れて残念だって」
「長船祥晴。俺に不満があるっていうのか!?」
「不満っつーか、手間がかかりそうじゃんか」
ぽんぽんと隆維を軽く叩いている。
「手間?」
「体調崩したり、突発行動とか、その他諸々。協調性に自信は?」
「ないな」
「うわっ。自信たっぷりに認めるなよなー」
ふわりとした茶髪が揺れる。
「まぁ、気をつけるよ。でももうちょっとしたらコンテスト参加者募集しなきゃいけないのかなー。それとも、主催から外れるのか、今年はわかんないんだよね〜」
「へぇー。ま、気をつけてくれるのはありがたいよ。山辺さん髪、伸びてきてるよなー、たまには毛先揃えに来いよー。適当に手を入れた方が綺麗にのびるぜ。じーさんも待ってるし。美丘さんも商店街の美容室シェーンにカットに来てねー」
「あ、ありがとう。長船くん」
愛想の良くひょろ高い。特徴はそんな感じ。口を開けば明るいセールストークが笑顔とともに飛び出す。
「そーいえばさぁ。二人とも部活入ってないよね。よかったら園芸部どう? 夏場になればトマトとキュウリとなすが採れるよー。基本は水やりだけ! ナメクジ駆除は責任持ってオレがやる」
「……。遠慮しとく」
「誘ってくれてありがとう。ちょっと興味ないかな」
このクラス男子がお喋りかも?
「天音って部活とか興味ねぇの?」
「家のお手伝いや鈴音のコトも見ておかないとダメだし」
「鈴音なら基本、芹香と遊んでんだから大丈夫だろ? 今はアリアもいるし、お迎えはそういっちゃんとか三春おじさんとかが来てんだし。ま、遊びに来てくれんのは歓迎だけど。まぁ、美丘もいるけどな」
不満そうな言い方にカチンとくる。
「隆維ー。美丘さんにヒドい言い方だぞー」
「だって、苦手なんだよ」
「それを表に出すなって、得手不得手はあるかもしれないけど、オレは未来の部員を守りたい」
「拒否られてたじゃん」
「言うなっ」
気がつくと男の子がちらほらと会話に混じり、長船くんと隆維の周りが賑やかだった。
「隆維、そう言えば涼維は来ないのか?」
普段の休み時間はべったりだ。
「んー。今日は休み時間は案内時間なんだー」
「高遠くんの?」
山辺さんの発言に隆維が頷く。
「みどりちゃん、涼維のクラスだからね」
「いい名前だな。園芸部に興味ないかな?」
「どうせなら進路に高評価の部活を希望すると思うけどなー」
「評価低いみたいに言うんじゃねぇ!」
「え?」
「えっ!?」
「地味」
「地味言うなー!」
誰がどう発言してるのかわからなくなる。
ふと何かが気になって山辺さんを見れば、教卓を差された。
先生が黒い笑顔で生徒たちが気がつくのを見守っていた。
YL様より清水先生お借りいたしましたー




