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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014春
458/823

4/22 回想含む料理部

 運動部も捨て難かったけど、千歳ほど命かけてないし、文芸部とか天文部とか手芸部とかでもイイなぁ。科学部とかの頭使いそうなのも悪くないかも?

 そんなことを考えながら見学に行くのに誘おうかと思った仲良くなった飯田夏音は忙しそうで。

 諦めて一人でクラブ見学に行こうと教室を出た廊下で、見た。


「千鶴ちゃん、本当に他にしたい部活とかないの?」


 そこで声をかけられているのは私と同じ一年女子。黒い真っ直ぐな髪を一つに束ねている。

 私はうろな高校に合格がわかった時に心機一転髪をショートにした。サイドに一掴みだけ長めの髪を残して。お母さんには「変だから切っちゃえ」って言われたけど、個性だ。切らない。

 そんなコトを思い出しているとどこか突き放すような口調で女子が言葉を紡いでいた。


「同年代の付き合い苦手だし、どうせなら役に立てるってわかってるところにいくだけだし、悩みたくないから」


「ウチ、賑やかっていうか、うるさいから大変かも?」

「平気。メリットはあると思うから千秋、センパイは気にしないで」

「うわ。千鶴ちゃんにセンパイ呼びされるって不思議」


 繰り広げられる会話はカップルか! と突っ込みたい。

 でも、部活の勧誘らしい。何部なんだろう。

「案内する?」

「大丈夫です。他も見学しながら行きますから」

「じゃあ、くるまでは部室にいるかぁ。待ってるよ」

じっと様子を見てると彼女は一つため息をついてこっちを向いた。驚いてたから、知ってたわけじゃなさそう。びっくりしたけどね!

「なにか?」

「今の先輩の部活って……」

そのまま聞いてイイか悩む。

「料理部」

「一緒に行ってイイ!?」


 怯えたように一歩下がられる。


「一人でいくのイヤなんだー。私はむと、違った。えっと、中島千佳。千佳って呼んで」

「な、中島さん、クラスのお友達は?」

「出遅れちゃったし、誘おうと思ってた相手が忙しそうだったから。んー。迷惑?」

 ため息をついて頭が左右に振られる。迷惑そうだ。

「他の部も回ってからでいい?」

「もっちろん。えっと、名前、教えて?」

「有坂千鶴です」

 よしコレで呼べる。

「よろしく。千鶴ちゃん」


 そう、千鶴ちゃんのおかげで接点ができた。

 千秋先輩との距離はなんかあるし、気がつけば喧嘩状態。まぁ、他の先輩は基本的には傍観モードだ。

『マナイタ』なんていってくる千秋先輩アイツが悪いんだ!

 千鶴ちゃんはいまだに『中島さん』呼び。慣れてきたら下の名前で呼んでくれるかなぁと思う。

「千鶴ちゃん」

「どうしたの中島さん」

 返ってくるのは棒読み。

「クラスの子がさー。悩み事抱えてたみたいで、簡単なことしか言えない自分がちょっとイヤだなーって」

「ふぅん」

「っていうか、まだ煮るのかな?」

「煮はじめと材料準備終わってから来たでしょ?」

「う」

「あんこ作るのよぅ」

 ほんわりと村瀬先輩が笑う。

「刻んだドライフルーツをそろそろ小豆のおなべに入れてね。一緒に煮ちゃいましょー」


 そこからは部活に集中。

 出来上がったあんこをそば粉で作ったクレープ生地に包んで盛り付けたりラッピングして持ち帰りモードに。

 で、ふらりと出来上がったころに現れる柳本先輩と鈴木部長。

 そばクレープ生地を焼いてたのは鎮先輩。(部員ではないけど当たり前のようにかりだされている)

 みんな揃って食べる。控えめな甘さが優しい味だった。

「お砂糖は入ってないし繊維が豊富で健康志向のおやつなの。煮込むのに時間がかかっちゃうけどね」

 にこにこと教えてくれる村瀬先輩。

「妹たちと弟に持って帰ってあげる?」

 持ち帰り用にラッピングしたそばクレープを差し出してくれたのは鎮先輩。

 外を降る雨を見る。


 悩んでた夏音。


 甘い物は元気が出ると思う。

 でもまだ住んでる場所までは知らなくて。




 とりあえずメールした。



『夏音。甘いの作ったんだけど時間あったら毒味しない?』 


 家に帰り着くまでに返信があればよし。なければそれまでだ。

 送信を終え、一息吐くと。

「じゃあ、俺急ぐから」

 鎮先輩の声。

「あーい。協力感謝ー。あんぶれらデートなんて爆発しろー」

「菊花ちゃんも早く相手見つければー?」

「鎮のクセに生意気ー。さっさと行っちゃえー」

 仲良く軽口を叩き合う。柳本先輩は間違いなく手も出てる。でも、お持ち帰り用も受け取らせていた。


「先輩、彼女いるんだ?」

「狙ってたの?」

「ないな。仲良くはなりたいけど、恋愛感情はないなぁ」

 千鶴ちゃんの言葉に首を横に振る。

「ふふ。本命は千秋君?」

 村瀬先輩の言葉に先輩たちの視線がこちらに集中した。

「ないですーーー。千鶴ちゃん、また明日っ」

 私はそれだけ叫んでお持ち帰り用の袋を持って調理室から逃げ出した。


『アクセル!-新人アイドル奮闘記!‐』より飯田夏音ちゃん。

http://book1.adouzi.eu.org/n6038cb/

http://book1.adouzi.eu.org/n6038cb/4/

回想にてお借りいたしました。

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