4/11 朝
「飛鳥」
出勤のために玄関を開けると見覚えのある頭。
「……。なんでお前がここにいる?」
大阪にいるはずの弟の一人。
目立たず堅実に公務員目指して静かに人生をとじれればいい。とか、枯れたコトを言っている中学二年生。
「ちょっと、さ。しばらく泊めて。ほとぼりさめるくらいまで」
「学校、どうすんの」
今日は週末金曜日。学校は、堅実人生はどうした。
「おかーさんには迷惑かけたくないんだ」
「いや、学校サボる時点で迷惑だと思うよ? 中学生」
しばらくと言う時点で多分、一週間から一ヶ月。
「部屋入れてよ。ダメならどっか行くけど暁あにぃやさーやねぇに頼るのっておかーさんに即連じゃん?」
「新学期早々サボりはやばいって」
「だってさ。見かけた気がするんだ。おかーさんやみんなに……迷惑かけたくない」
渋る姿はなんとなくほだされる。
「……。おかーさんには連絡いれるから。どうやってここまできたん?」
「夜行バスと電車。飛鳥でも即連かよ」
「当たり前〜。一応フォロー入れてあげっけどね」
「さんきゅ。こっちにいたらそう簡単には見つけられないと思うんだ。何で探されてるんだろう?」
「仕事行くけど、出歩いて補導されないでよね。その時、連絡先は暁兄さんトコにしてね」
気鬱げな弟分を部屋に招き入れ、入れ替わりに仕事に向かう。
そーいえば、昨夜はミホが泊まってたっけ。
ま、いっか。
◇◆◇
「だぁれぇ?」
「誰だよ!?」
「ミホは〜ミホ〜」
起きたら知らない男の子がいた。
「俺は、高遠碧。飛鳥の身内。ルームメイトがいるなんて聞いてねぇ」
うーん。ルームメイトじゃないもんねぇ。
「ちょっと泊りに来てただけー。みょーじ違うんだね。みどりちゃん」
みどりちゃんはそわそわと視線をそらしていてこっちを見はしない。
なんで?
「どったの?」
「……どったの? じゃなくて、服着ろよ!!」
視線を落とすと寝間着がわりのキャミが少しずれてた。
うーん。右見てー左見てー上見てー自分の姿を見下ろしてー。正面には真っ赤になって顔をそらしている男の子。チラチラと視線は感じる。
「えっち」
「み、見たくて見たんじゃねぇよ」
バタバタと玄関先で耳を塞ぐ男の子。
「さ、さっさと着替えろよ」
そうだねぇ。あんま騒ぐと近所迷惑だもんね。
冷蔵庫なんか入ってたっけー?
「朝ごはん、食べたー?」
「コンビニでパンとドリンクは」
ふーん。
「あとでブランチ食べにいこーね。おごったげるー」
「出るなって言われたから」
「一緒だったら大丈夫だってー。んで、赤ちゃん見に行こうねー。ん~、お家にいるかなー? まだ病院かなー? 覗いたらいっかー」
「え? だから、出かけないって……」
あ。
「着替え中だからこっち見ちゃダメー」
みどりちゃん、赤くなってかわいー。
小梅センセ元気かなー?
『うろな2代目業務日誌』から
清水夫妻出産話ちろりお借りしましたー




