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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014春
442/823

4/2 情報収集

「マジで空港土産買ってきたなっ!」

「だって荷物になるだろ?」

 怒るように受け取る菊花ちゃんに笑いかけながらそれとなく近況を聞く。ココは自転車屋の店先。修理の待ち客用のベンチ。

「小梅センセはまだ出産してないわねー。とーどー先生のとこが妙に盛り上がってるって話も流れてるかなー。宇美ねぇのとこは入籍はとりあえず済ませたとか。噂だけど」

 いろいろと聞き流す。

「北小の中島センセは新しいお嫁さんと四人の子供って構成になったらしくってびっくりだよー。千佳ちゃんと千歳ちゃんは妙に隆維・涼維に絡んでる感じ。鎮はそれとなく微妙な表情で距離とってる感じかなー?」

 気に入らない情報だった。

「ふぅん」

「なんか、関連性でもあんの?」

 バリバリと音を立ててお土産のフィルムを剥がしていく。菊花ちゃんはめんどくさがり屋だ。

「ん」

 面倒だなという気分にかられる。説明義務はないはずだから。

「千秋。吐かないと母さんに心配なのに隠し事ばかりだって相談するわよ」

「脅すの!?」

 菊花ちゃんは据わった眼差しで頷く。

 俺はため息を吐き出す。

「千佳ちゃんと千歳ちゃんのひいおじいさんが俺らのひいおじいさんでもあるらしいんだよ。ただ、俺はひいおじいさんとか会ったコトはないんだよね。それにうちの母さんは『産みの母』の存在を認めてなくて、嫌ってるからさ。隆維や涼維は好きにすればいいとは思うけど、『産みの母』の家族を俺らが認めてしまうのはあまり良くないと思ってるんだ。それに興味はあっても、感情的に『共に幸せ』に過ごしていた母さんの『産みの母』の家族。そういうのって、さすがに面白くはないんだよね」

 一息吐く。

「だから、関わりたくないのが正直なとこかな。服をダメにされたとか、傘壊されたとか、階段から落ちてきたの受け止めてやったのに変態扱いされたとかは実際関係ないんだよね」

「そこが気に入らないんじゃないかっ!」

 ビシッと力強く指差されてからそのまま頭を平手で殴られた。

「ヒドイ」

 気に入ったデザインの服と傘だったんだからな。

 店先でコントのようになってると思う。

 基本的に会話自体は普通にトーンを落としてる。それほど積極的に知られたい情報でもない。

「はい。お茶とオヤツね」

 ニコニコと差し出される紙コップと折り紙で作った箱に入った大福。村瀬さんから差し出されるそれを受け取る。

「ありがとう」

「ううん。さっきはお土産ありがとう」

「愛子も貰ったのマカダミアナッツ?」

 渡した時も言われたがここでも村瀬さんはお礼を繰り返した。

 そして微妙な表情で白黒のマーブルチョコをつまみ上げながら首を傾げてる。

 ちなみにマカダミアナッツじゃないから。

「クッキーの型抜きセットよ。ちょっとカワイイの」

 大福を口に入れた瞬間、菊花ちゃんがくるんと俺に体ごと方向を合わせる。

「なによ?! その差はっ」

 怒鳴られるけどね、菊花ちゃんは料理しようとしないよねーと思う。レトルトパック専門に近いよねって思ってると頭をまた叩かれた。飲み込んでお茶で軽く流す。

「人様を指差ししたり、食べてる最中に叩いたりは良くないよ。菊花ちゃん」


「あ! 千秋兄!」


 菊花ちゃんに注意してると、叫んで指差しをしながら駆けてくる涼維。

 人を指差すなって言い聞かせてんだけどな。

「いきなりいなくなったら心配するんだからねっ!」

「うわ。マジで身内にも言わずに出かけてたんだ」

 菊花ちゃんが小さくこぼす。菊花ちゃんにはそう言ってたと思うんだけど、ね。

「ただいま」

 そう言うと涼維がまだ続けようかと思ってたんだろう言葉を飲み込む。不満そうな複雑な表情で軽く視線を流し、一旦、目を閉じてから息を吐く。

「おかえりなさい。みんな心配してたんだからね」

 まだ不貞腐れている感じはあるが渋々、譲歩を示す。

「そっか」

 みんなってどこまでかなとは思うけど、涼維が心配してたのは本当だと思える。

「あした、ちびっ子達をモールの映画に連れて行くんだけどさ、来る?」

 コレはチビどもの機嫌とれってことかぁ。

「いや、連れて帰ってきた子がいるからその子のうろな観光かなぁ?」

 涼維がぷぅとふくれた。



 ホビー高原からアリアと隆維を回収し、自宅へむかう。

「チアキ! アリー、ちとせとエーガ見たい」

 は?

「別に用事ないだろー。千秋兄。で、涼維、何ふくれっつらしてんの?」

 呆然と立ち尽くす涼維に隆維が不思議そうに尋ねる。

「知らない」

 ぷいっと拗ねる涼維にわかってなさげな隆維。たぶん、涼維はあの姉妹との映画は良しとしてないんだろうなと思う。俺もイヤだしね。

「アリアは鎮と会って、それから決めようね」

 ぴたりとアリアが動きを止める。

「ありあにあってくれる?」

 不安そうな声に髪を撫でておく。

「遭遇は避けられないから。覚悟を決めようね」

 ぎゅっと俺の服の裾を掴む。

「はーい。鎮兄に警告はー?」

 隆維が涼維に絡みつきながら聞いてくる。

 警告?

 そんなもの、

「必要ないだろ?」


『"うろな町の教育を考える会" 業務日誌』より

清水司先生。ホビー高原を


『うろなの雪の里』より

藤堂先生を話題にお借りいたしました。


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