表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014春
441/823

4/2 舞台はホビー高原

 出と誓がカードバトルしてるのを眺めつつ、手元のゲームを進める。

「澄兄」

 入り口から聞こえてきた声に振り返ると千秋兄がいた。一週間ぶりぐらいに姿を見た。

「お。久しぶりだなー」

「うん。ちょっと出かけてたから」

 そう言って周囲を見回し、俺に気が付くと軽く手を上げてきた。俺は頷く形で返事しておく。黙っていきなりいなくなるなんて少し怒ってんだよね。

「で、澄兄にもお土産ね〜。ついでにあいつらに渡してくるから、隆維、この子といてやってくれる?」

 何か小箱を澄兄に渡しながら後ろにいた少女を軽く示される。

 ……だれ?

 カフェオレ色の髪の少女。同年代だろうか?

 少女はにこりと笑う。

「わかった。みといてやるよ」

 澄兄の言葉を聞いた千秋兄が彼女に何か囁く。少女は数度目を瞬かせて、俺と澄兄を見比べるとまたにっこり笑った。

「こんにちは。アリガト。ありあうれしい」

 少女(アリア)はニコニコ笑って、覗き込んだ澄兄にハグと頬へのキス。

 あ。

 鎮兄と同じタイプだ。

「アリア、知らない人にしちゃダメって言ったろう?」

 するっと澄兄から離れて千秋兄をじっと見る。

「チアキがありあオネガイなのー」

 つまり知ってる人でしょという理論か? 

「ダメだよ」

 千秋兄が視線を合わせて言い聞かせる。一拍の間をおいてアリアはにこりと笑う。

「おーけー」

 千秋兄が仕方なさそうに肩をすくめると軽く手をあげる。

「じゃ、ちょっと撒いてくる」

 俺は頷いて少女アリアに近づく。

 アリアは任されたことを理解してるのか、にこにこよって来る。

「ゲーム」

 出達のカードバトルを指すと興味深げに見ている。

 その様子を確認した千秋兄は荷物を持ってホビー高原を出て行った。料理部のメンバーにお土産撒きにいったんだろうな。

「ありあ」

 カードから視線を外し、少女が俺を見て自分の名前を言う。薄めの青みがかったグレイの瞳が見つめてくる。

「リューイだよ。アリア」

「リューイ」

「んで、あっちがちかいで、こっちがいずる」

 流れでそのままカードゲームにたのしむ二人を軽く紹介しとく。

 誓、岡本おかもとちかい。千秋兄の部活うろな高校料理部在籍・岡本おかもとしおりの妹で本年度から後輩だ。出(天音と鈴音の叔父にあたる)の母方の従姉妹で夏休みぐらいにお互いに知ったらしい。出は実の母親とはうまくいっていないが、他の親族とはうまくいってるらしく何よりだと思う。


「こんにちはーー」

「お。いらっしゃい」

 元気な少女の声に答える澄兄。ちょっと、俺の心境は微妙。さっき千秋兄がいて、戻ってくるよなぁ。あんま、間をおくわけがない。

 視線に気がついたのかアリアが俺の視線を辿り、ショートカットの少女、千歳と俺をきょろきょろと見比べている。

「やほー。りゅーちゃん」

 なんか知らないけど、千歳は俺は『りゅーちゃん』で涼維には『涼維君』だ。この差はなんだろうと思う。いいんだけどさ。

「ん? 彼女?」

 ひょこひょこ寄って来てアリアに気がついたらしく首をかしげる。

「りゅーい?」

「ちとせ」

 アリアに尋ねられたので名前を教えてやる。

 ぱっと嬉しそうにアリアが笑う。

「チトセ? ありあ」

 千歳に手を差し出し、片手で軽く自分を指しながら名乗る。

「アリア? まぃねーむいず千歳。よろしくー」

 そして少女二人はナチュラルにハグして友好を深めた。

 千秋兄、機嫌損ねないといいんだけどな。

「千歳ー。どしたー?」

「どーぶつ病院まで涼維君と一緒〜。りゅーちゃんこっちって聞いたから覗きに来た〜。そーだ」

 涼維とコミュニケーション上手くとれてんの?

「ぁん?」

「今度、ショッピングモール案内してよ」

 人懐っこいにもほどがある。兄ちゃんたちのことがなければ別にいいんだけど、二人ともの敏感な部分に触られると、家ん中の空気が刺々しくなってイヤなんだよなぁ。まぁ、いいか。

「明日、千歳んトコのちびっ子も連れてモールに映画見に行くか? できれば千佳ねぇちゃんも誘っとけよ? 映画に興奮したちびっ子暴走を抑えれる年長者は欲しいからな」

 魔女っこモノだからそんなにちびっ子が泣き喚くようなことはないだろうけどなー。

 みあのあが楽しみにしてるし、千歳んトコの縁と紗羽は年下だからみあのあもお姉ちゃんぶれる経験ができるしな。

 うん。いい考えだ。

 じっと、千歳が俺を見てる。

 驚いたようなその表情に俺は首を傾げる。

「用事、あんの? 明日」

「ない! いく!」

 何でそこまで喜ぶ?

 拳握り締めて覚悟を決めてるってどこの体育会系だよ。

 行くのはアニメで子守りだけど、そんなに行きたかったのか?

「映画ー♪ ショッピングモールー。尋歌ちゃんも行くかなー?」

 ぇ?

「あんまり大人数になったらちびっ子がびびるから気をつけろよ?」

 特に縁と紗羽は環境に馴染んでないんだし。

「あ。そっか。りゅーちゃん、あったまいー。アリーも一緒?」

「ありー?」

 いきなり振られてアリアが目を瞬く。

「いや、アリアの予定はわかんねーから」

 俺にダメだしされたのに気がついたらしいアリアがちょっと寂しそうに首を傾げる。

「アリアだから、アリーね」

 会話の流れを無視して千歳がにこにこアリアに愛称説明。

「ありー♪」

「そそ。アリー♪」

 そこだったのかよ。

 早く、涼維こねぇかな。あと、頭がいいんじゃなく、気配りの範ちゅうだと思うぞー。


 ふと、思い出したから千歳にカードゲームに興じてる誓を指さす。

「岡本誓。うろな中で千歳と同じ一年生、な」

「おぉ! よろしくーオカチー」





『うろな2代目業務日誌』から

ホビー高原。高原直澄君お借りしましたー


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ