エルザ襲撃2
「うー。なに吹き込む気だよ〜」
「追い払われたね〜」
「店長さん」
「心配?」
「……少し。ないことないこと吹き込みたいとか言ってたし。久々に会ったと思ったら、娯楽にされる……」
「大丈夫でしょ」
「……うん。まぁ。わかってはいるんだけどヤキモキする」
◻︎◇◇
「まず感想を!」
「え?」
私の急な発言に驚いて目を瞬く姿はおっとりめ。
「思ったよりキュートな人でびっくり。もう少し押しの強いタイプの人かと思ってたの。私の覚えてるシーは基本受動的で自分からは動かない子だったから、迫られて流されてそのまんまお付き合いとかもありえそうって思ってたから」
記憶の中のシーは言われたこと以外に積極性はほぼ見せなかった。だから、相手から望まれて流される姿が容易に想像できた。
「そういうんじゃないんだなって思うと少しよかったなって思う。普通に心から好きなんだろうなって思ったしね」
良い変化だと思った。変わってないとも思ったけれど、自分で好きな人ができたのは素敵だと思うから。その場合、変わってないと思える部分が問題だけどね。
このぐらいの言葉で照れて頬をそめる初心さは愛らしい。本当に愛らしいと思う。
「貴女は、シーのこと好き?」
こくりと頷いて、じっと私を見る眼差しは流石に探るようなかすかな警戒が見える。
「あのね、高校卒業したら、シーにアメリカに帰ってこないかって提案してるの。 このうろなが好きだって言ってるから、とりあえず大学だけでも帰って来て欲しいって言っても渋っちゃってね。もしかして恋人がいるせいかなーって。シーは遠距離恋愛向きじゃないしね。あのね、シーに対してどこまで本気? あの子をどこまで、受け入れられるの?」
好きって心は本気なんだろうと思う。でも、どこまでかはわからない。
少し、悪いかなとも思うけれど揺さぶりをかける。
「私ね、恋愛のLOVEじゃないけどあの子を愛してるわ。だからね、切り捨てるんなら早くしてあげてね」
ひたりと彼女の動きが止まる。
「え?」
なにを言われたのかわからないという表情。
カワイイ人だと思う。別れるなんて想定にないことを言われて言葉が出ない。そんな姿がとっても自然。こういうところが好きなのかしら?
「それとも、一緒に来てくれる?」
だってそこまでの心でなくてもおかしくないし。
ちらっと見れば、シーが落ち着きなくこっちを見ている。そろそろ限界かな?
息を飲む音が聞こえた。彼女が何かを言おうとしてるようで。
「鎮君は、まだ、決めてないの」
「鎮君は、自分で選べるから」
「大丈夫」
ゆっくり紡がれた言葉は『信頼』があるように思える。それとも、こうあればいいという希望だろうか?
「ありがと」
その言葉が届くかどうかなんてわからないけれど、きっかけにはなりうるのかなと思えて嬉しい。
あの子が自分で選ぶなんて私には想像がつかないけれど、そう、変わったのなら、成長があったと言うならそれに賭けたくもあるのだし。
「あら。これキュートな形ね。妹が喜びそう。あの子ピンクが好きなのよね」
我慢出来なくなったシーが寄ってくるのを感じる。
「それでね、生活は保証するから、アメリカに来ない?」
「エルザ……」
呆れたようなシーの声。
「だって、彼女も一緒なら寂しくないでしょ?」
『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』より青空空ちゃん、『無限回廊』立神上総店長 (ちらりと)
お借りいたしました。




