3/18 エルザ襲撃
「ココね!」
ふらふら散歩の結果、辿り着いた店舗。そこは『無限回廊』というショップ。
狙いは『青空空』
鎮の恋人だという彼女を知ることだ。
まさかそんな相手がいるとは思わなかったからマナに聞いてびっくり。
ドアに手を掛けた瞬間、後ろから囁かれた。
「エルザ。何やってんの?」
彼の視界外でにやっと笑い、ドアを開けつつ振り返る。
人からはどう見えるかしら?
向かい合うブレザー姿と軽く緩めたタイは色っぽいわね。もう一つボタン外してあげようかしら?
とりあえず、店内に対象はいないらしい。鎮の安心した様子でわかる。面白いわ。でもちょっと残念。
「もちろん、かわいいギフト探しの一環だわ」
くるりと店舗に向き合えば、キラキラとキレイだった。
「女の子はキレイで可愛くって高価なものが大好きなのよ。あと、人の恋愛もね」
少し声のトーンは落としてきょろりと見回す。
「……エルザぁ」
微妙に恨めしげな声に笑いがこみ上げる。
「もちろん、素敵なギフトでしょ。誰かさんの恋人の話題なんて」
きっとアリアははしゃぐし、フローリアも喜ぶでしょうね。男性陣だってきっと興味津々だわ。
ちゃんとないことないこと吹き込んだりとかしてみたいじゃない。って笑うと小さく「ないことばっかかよ」とごねられる。
その視線は少し泳いでいる。探してるのかな?
「紹介してくれてもいいじゃない」
自慢の彼女でしょっとつつけば少し照れたように視線をそらす。
「みょーなこと吹き込むなよな」
視線を逸らしたまま呟くから笑える。
いらっしゃいませと声をかけてくれた店の人はキラリとキレイな金髪の青年で。
思うことは、
「この町、クールな人が多いわぁ」
というところだろうか。
「声出てる」
鎮が呆れたように告げてくるから、少し照れてしまう。
私だって年頃なんだから心は動くもの。
気がつけば、階段があったらしくそこからおりてきた少女にシーが気を取られてる。
やわらかな表情。嬉しそうな眼差しを注ぐ。
あの子かぁ。
黒髪が美しい少女。日本美人大和撫子というヤツだろうか?
最近本物には会えないと噂に聞くレアなアレだ。
シーに気がついて少女の方も恥ずかしそうに頬を染める。
照れからか、少し視線は落とされる。でも落とす寸前に見せた嬉しそうな表情は好意を寄せ合った恋人同士。
穏やかそうな大人しそうな普通の少女だった。
イケイケ押せ押せタイプに負けたんじゃなかったらしい。
意外だった。
「キュートな彼女ねぇ」
シーの腕を抱き寄せる。微妙な表情で視線を向けてくるシーがかわいいと思う。
嫌がらずに彼女を紹介しろと思う。
「ごめん、空」
不思議そうに首を傾げる少女がティーセットを持ちつつ、止まる。
「コレ、アメリカ時代の友達でエルザって言うんだけど、俺の恋人紹介しろって、仕事中に来ちゃって邪魔するつもりなかったんだけど」
コレ呼ばわりの挙句邪魔扱い。
彼女のほうはにっこりといらっしゃいませと微笑みかけてくれる。
「会えて嬉しいわ。邪魔じゃなくてちゃんとお客のつもりだからいいよね? 邪魔っ子はシーだけってことで」
「ちょっ」
「妹へのお土産を探してるの」
ちらりとシーを見て笑いかけておく。
「シーはいなくてもいいわよー。ソラさん? 一緒に見てくれると嬉しいわ」
だってお話したいのは彼女とだもの。午前中に来るべきだったかなと思わなくもない。
『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』より青空空ちゃん、『無限回廊』立神上総店長 (ちらりと)
お借りいたしました。




