3/15 ピクニックの後
「えーっと、ごめん?」
「知りません」
「そこまでだとは思わなくってさー」
「知りません」
宗一郎君に謝ってそっぽを向かれている様を眺めつつ、隆維たちを見る。この間も見たような構図なんだけど?
中学二人は苦笑を漏らす。
「だって蜘蛛の巣なんかでパニクるなんて思わねーって!」
鎮の声。
『あ』
せっかく黙ってたのにというムードの二人。
蜘蛛の巣?
「知りません!」
ふいっと逸らした宗一郎君の顔はどこか赤い。
「森にふらっと入って、三メートルもいかないうちに露で湿気った葉っぱに足を取られかけて、持ち直したところに蜘蛛の巣があって、それに引っかかってパニック。道路まだギリ見えてる位置なのに奥を指されて素直に騙されてピクニックコースにのってる様は実に面白かった」
「きのーのお弁当作りではお湯の中に袋に入ったままの食材を投下って光景が繰り広げられて、俺、慌てて父さんにお弁当頼んだもん。隆維は海ねぇにメールしてたし」
「だって、ソレ食うの怖いじゃん!」
『ねー』
ネタが割れたら、もう解禁とばかりに二人が詳しく教えてくれる。
お弁当を作ってたはずの昨日は早々と部屋でメールと電話中だったからなぁ。
袋のままお湯にドボンかぁ。それは嫌だなぁ。
一人暮らしもどきなんだから料理はある程度できた方がいいよ。宗一郎君。
「発表後に合否がどうでアレ、ピクニックGOってちょっと酷いよな」
拉致られた有坂妹がちょっとかわいそうだ。
「いくらか唖然としてたけど、森林浴は満喫してたと思うよ?」
「あれは黄昏てたんだと思うよ。隆維」
黄昏って、
「落ちたの?」
うわぁ。
勉強の邪魔してたからか?
あ。まないたも受験生だっけ? ……落ちてればいいなととちょっと思う。
『ううん。受かってたけど、どっち行くかでだと』
あー。受かってるけど、母さん推奨は女子校かぁ。
「受かるって思ってなかったかも知れないだろー」
隆維が言う。
有坂妹が学校行きたがってなかったっていう情報は勉強嫌いって印象を与えるもんな。
知識収集自体は好きらしいけど、周りが学校なんて無駄って環境だったからなぁ。母親とか兄貴とかが。
義務教育じゃないからどっちでもいいんだろうけど。
気がつけば、宗一郎君と鎮の口論は終わったらしく、普通に何か喋っている。話題はバレンタインデーのお返しだった。
「そう言えば、鎮兄」
「なんだ?」
涼維の呼びかけに応じる鎮。
「昨日、学校まで一緒に来てたおねーさん、誰?」
おねーさん?
問いかける涼維の横で隆維も興味深そうに頷いている。
「彼女は愛菜ちゃんに会いに来たむこうでの友達だよ。道に慣れてないからって案内を頼まれたんだよ」
「ふーん。浮気かと思った」
「道案内で浮気扱いされんのかよ!」
ぎゃーぎゃーと賑やかだ。
『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』より青空海ちゃんを話題でお借りしてます




