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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014春
433/823

3/14 かわいそう

 春の町はきれいだった。

 賑やかで暖かでステキな町。

 ココに彼は暮らしている。


「ねぇ、帰りましょう?」

 ソレがあなたの意思に反してるのはわかっている。

 静かな瞳に迷いが見える。

 昔なら少し促せば頷いた。

 でも、自分の意思なんて持てば嫌な思いをするだけだ。

 外に出るべきではないのだ。

 つっと距離を詰めると瞬間的に閃いた色は恐れ。


 怖がられた事に傷つく。


 あそこで育った子が外に出るのは苦しい。

 違いすぎる世界は毒でしかない。

「進めなくなるの」

 歩くのが辛くなる。

 違いが割れたガラス片のように突き刺さってくる。

 いる世界への理解を進めれば、ソレは『今まで』への否定で。

 知らなければ、見えなければ『しあわせ』でいられる。

 だから、貴方は帰ってくるべき。

「ココにあなたの居場所はないの」

「エルザ。俺はこの町が好きだよ?」

 微妙にかみ合わない言葉。

「あなたが好きだと思うなら、離れて見守ればいいわ」

 ここにいる必要性はない。

「もちろん、好きでいて良いと思うわ」

「それに」

 言い訳を重ねるように言葉を紡ぐ姿に微笑む。

「あなたたち三人は戻ってくるものだってみんな考えてるわ」

「みんな?」

「一緒なら、いいでしょう?」

 あなたが大切だと思うなら取り上げようとは思わない。

「でも」

 歯切れが悪い。

「フローリアもアリアもあなたに会いたがってるわ?」

 アリアに名前をあげたのはあなただもの。覚えてるわよね?

「アリア」

「そう。アリア。一度も帰ってこないから嫌われたんじゃないかって心配してるわ」

「嫌ってなんか!!」

 一瞬声を荒げ、すぐに口を押さえる。

「ごめん」

 私は首を横に振る。

 誰かを嫌いになったりはしないと知ってる。

 それは、『いけない』ことだから。


 私たちの育った場所のルール。


 そしてソレを持っていると、外の世界はとても痛いところになるのだ。


「だから、帰りましょう?」


 なにも、考えなくていいの。

「ねぇ。どうしてマンディが邪魔になったの?」

 貴方がそんなことを考えるような必要はないのに。



 躊躇う貴方に囁いた時、少し敵意が見えた。





「エルザ?」

「なぁに。マナ」

「私、花ちゃんのお手伝い出来ないのかな?」

 ハナと同じ外見を持つマナはハナのきぼうだ。

「好きなように生きればいいのよ?」

 それが何よりのハナの希望のぞみ

 それなのに泣きそうな思い詰めた表情でクッションを抱える。

「私じゃダメなの?」

「マナはマナらしくあればいいのよ?」

 そう伝えても、きっとマナは納得出来ないのだと思う。



 かわいそうね。




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