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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014年一月
422/823

3/2 話し合い

「隆維兄」

「んー? どったの。芹香」

 仁王立ちして。

「べるべるのこと、どう思ってるのよ!」

 指さしてるとまた千秋兄に怒られると思うんだけどな。

 って、鈴音?

「……も、もてあそんでるんじゃないでしょーねぇ!?」

 おお、真っ赤になって、珍しい。

「もてあそぶ?」

「だ、だから好意に付け込んでいろいろぉ……」

 基礎情報が足りてないのか、照れるような耳年魔なのか、普段はっきりきっぱりが売りの芹香には珍しくしどろもどろだ。

「なんで、そんなこと考えたの?」

「だって、チョコレート……バレンタイン……」

 ああ、なんか牽制かけたのかな?

「もてあそんじゃダメなんだからね!」


 芹香。


 人を何だと思ってるんだよ。



「だいたい、今はそんなことより、早くちゃんと元気になることが先じゃない」

 じっと睨まれる。

 じっと見返す。

 本来、そこは踏み込まれるべきところじゃないと思う。

 だけど、心配させているのもわかる。

「元気になってから、変態ロリコンのそしりを受けるといいんだわ!」

 おいこら待て。なんだその決め付けは!?


 一拍置かれる。


「冗談だわ。私は隆維兄が何をどう決めてるかなんて知らない。べるべるが隆維兄を好きならそれはソレでいいと思ってる。選ぶのは隆維兄でべるべるだもん。迷わず、後悔しないんならいいんじゃないかな?」

「迷わないなんて無理に決まってるだろう? ずっと迷うし、惑うし、悩む。きっと後悔だってする。芹香は迷わず下された直感だけを信じることができる? 俺は無理。裏づけが欲しい。根拠が欲しい」

 多少直感だけで決めてる項目もあるけどね。

 あ、胡散臭そうな眼差しでみないの!

 ああ、芹香とこうやって言葉を交わすのは防音ルームの乱以来か。けっこう最近だな。


「でも、迷いは小さくあるべきだし、心がそうであると思えば、それを求めるべきだわ!」

「それはそうかもだけどさ、迷って、失敗して許されて良いのは子供のうちだけだよ?」

 だから失敗できるように突っ走ればいい。

 周囲が見えてくれば、それで通してなんかいられなくなる。

「つまり、失敗するような判断をするなということね!」


 待て。

 ちゃんと考えろ。

 芹香。

 お前は『子供』だ。

 俺だってまだ『子供』だ。

 お前と俺じゃ確かに許される範囲はすでに違いが有る。それが年齢差。

 それでも、この時点で許してもらいにくい失敗は存在しても、許されない失敗は早々ない!


 つーか、あってたまるか。


 大人だって失敗をする。

 ものを知らない子供は失敗をするのは普通だ。

 そうやって覚えていく面だってある。

 大人の許されない失敗はケーサツとかが出張ってくるんだ。

 やりすぎれば未成年でも、捕まったりするんだ。


 そーいえば、千秋兄大丈夫かな?



「芹香ぁ。迷うのは悪いことじゃないんだぞ? 迷って困って、それが嫌なら何とかしたいだろ?」

 俺は涼維が嫌な思いをするのが嫌。

 今の俺は涼維がソバにいすぎるのもソバから離れすぎるのもイヤ。

 ああ。わけわかんないこと言わないでって眼差しが辛い。

「それはそーかもしれないけど、迷った挙句、弄んで捨てるのは最悪でしょ? その時はちゃんとべるべるを慰めて、一緒に報復考えるけどさ」

 やめて。真剣に怖い。

「あのなぁ」

「隆維はべるべるのこと、好きなの? 天音おねーさんをもてあそんでるの?」

「弄んでるつもりはないよ?」

「自覚なし? サイテー」

「そりゃ、涼維がとられるかなってやきもちを妬かないでもなかったけどそこまで言われるほど、天音を酷い扱いしたわけじゃないぞ?」

 涼維が興味を持てばいいなぁと細々とアクションは起こしたけど。



「むぅ。ところでなに読んでるの?」

「んー? 『悪役に見る常識』って考察本」

 あ、目をキラキラさせてる。

「よ、読み終わったら貸して。私も読みたい!」

 軽く頷いておく。

「でもね、隆維兄が人心を弄ぶよーに動いてるのは本当だと思うの。振り回されてる人多いんだからね」

 えー。

 お前が言うー?

「誤解かな〜♪ 降りかかる『運命』は人を惑わすけど、それは原石を磨く研磨なんだぜ?」





「隆維、磨かなくていいから。あと芹香も、そーいう話題するんなら防音室行ってやってよね」

 不貞腐れた涼維から苦情が来た。

「んー。もう寝る時間だからそー言う話はおしまいー。別に涼維をハブったわけじゃないぜ?」

「そう言うネタの時はハブってくれてかまわないよ。……聞きたくないから」

「どっから聞いてたぁ?」

 手を伸ばして涼維を捕まえる。

 会話をしはじめたころはみあとのあをミラと寝かしつけに行っていていなかったはずだ。

「やきもち、あたりから。隆維が妬いたりしてたとしてもわかんないよ。いつも、隆維は言葉が足りない」

 背後からぎゅっと抱きしめられて頬に頬が擦り寄る。

「えー。妬かれたりしたらウザくねー?」

「隆維以外ならウザい。隆維になら、嬉しい」

 一瞬、何も考えれなくなって、あたたかく嬉しい気持ちでいっぱいになる。

「愛してるよ。涼維」

 愛おしい。それ以外の言葉が浮かばない。

「うん。愛してるよ。隆維」

 抱きしめてくれている腕を軽く抱きしめる。



「……ちぃ兄。おやすみなさい」

『ぁ。おやすみ』

 おやすみの挨拶をし不機嫌に自室に帰っていく芹香を見送りつつ、俺達は軽く首を傾げる。

「なんか、機嫌悪くなかったか?」

「隆維がちゃんと答えてあげなかったんじゃないの?」

 えー。脅されてたのは俺だと思うんだけどなー?


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