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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014年一月
417/823

2/24 フレンドリー

「コンビニ弁当買ってきた」

「どうも」

 無造作に差し出されたコンビニの袋を受け取る宗一郎君。

「機嫌悪いじゃん」

「ほっといてください。居候」

 健の茶化しは軽く流される。って住み着いているのか。

「へぇへぇ。今日はネットデートじゃなかったのかよ」

「流れました」

「振られたのかよ」

「千秋先輩の愚痴におつきあいですよ」

 え?

 俺のせい?

「浮気か」

「ニヤニヤしない。浮気じゃありません。彼女もわかってますから」

「千秋のこと好きじゃないくせに構うのかよ?」

「鎮先輩の精神状態にかなり影響が出るんです。少しでも、緩和しておきたいんですよ」

「それで鎮の方にヤキモチ焼かせるんだ?」

「先輩に?」

「自分にはフレンドリーじゃないのに千秋にはフレンドリーだってさ」

「バカらしいですね」

 はんっとつまらないとばかりに一蹴。

 容赦がない。

 しかし、それよりも、

「なんで、健がいるんだ?」

 この二人の会話がむかつく。

 健は学校帰りらしく、ブレザーとカバンを適当に放り投げる。




『居候?』




 疑問の差し挟む余地はないとばかりに声が揃う。

「あー。なに嫌いなもんでも入ってたかよ?」

 コンビニ弁当を前に動きの止まった宗一郎君を面倒そうに覗き込む健。

 宗一郎君にはさっきまでの酔ったのかといわんばかりの対応はない。演技かよ!?

「別に。こないだの玉子焼きはデザートとしか思えないぐらい甘かったんです」

「鎮今日は作り置きねーの?」

「毎日はお断りしてます」

「断んなよ。しゃーねーなぁ。玉子焼きだけ作ってやるよー。千秋も食う?」

 何この展開?

 しかもこっちにも振る? 料理できんの?

「塩胡椒マヨネーズに牛乳少量で」

「細かっ! めんちぃな。形崩れても文句つけんなよー」

「焼いたたまごには変わりありませんからね」

 軽い会話の後、健がキッチンの方へと面倒げに歩く姿を見送る。宗一郎君、好き嫌いあるんだね。カレー嫌い(予想)以外に。

「いつの間に友達になったの?」

 不思議そうに首を傾げられた。

 あれ?

 ワガママ言えるくらい、の友達、だよね?


「居候ですよ? 友達じゃ、ないですよ? 部屋はあいてたし、まぁいいかなと」

「俺的にはダチか舎弟かって感じだけどなー」

 キッチンから健の声が聞こえる。

 舎弟という響きにむっとしている宗一郎君。

 健は意外と面倒見がいい。いじめっ子だけどな。


「友達、何でいやなの?」


 知り合い以上親友未満。

 範囲は広いよ。お友達。


 何で、嫌がるんだろう?

「……長続き、しないじゃないですか。友達って」



 何、言ってんの?


 俺、健となんか六年ぐらい喧嘩友達から発展した悪友だし、宗一郎君ともこっちは夏あたりからは知り合い以上親友未満、弟並みには思ってたんだけど、鎮だけじゃなく、全否定?


 うーん。

 あとで、ちょっと海ねぇにメールしとこ。

 人のフリ見て我がフリ直せ?

 気持ち反省。


「長続きー?」

 健がうまくまとめてるとはお世辞にも言えない玉子焼きの皿を持って戻ってきた。

「もって二週間くらいですかねー?」

 さらっと答える宗一郎君がちょっとセツナイ。

「だから友達はイラナイんです」

「悪いダチなんかイヤでもわいて出るけどなー」

 何でこっちを見て言う!

 健は地獄に落ちてろ。

「なんか腐れ縁?」

「あー。ただれた関係ですかー」



『違う!』


 けだるげに言うな。箸を受け取りながら気だるげに呟く内容じゃない!

 そして宗一郎君は給仕されなれてるよね?

 動こうとしなかったよね?

 給仕(ウェイター)も慣れてたけど、されるのも慣れてるよね?

「友達になろうって言ってくれた相手から数日後には口をきいてもらえなくなるんですよ。何がなんだかわからなくて、そんなものかと理解するまで時間は少し掛かりましたね。だから僕は友達はイラナイんです。その単語自体が信じられません。友達ってなんですか?」


 え?

 友達って、そこまで深く考えるようなものじゃない、だろ?

 って、口をきいてもらえないって何?

 たまたま、そいつがタチ悪かったとしても鎮や俺たちは関係ないよな?

 健を見る。一人納得した表情をしてんじゃない!

「ああ、言っておきますが、信じられないのは自分自身にとっての友人関係であり、ちゃんと知識としてはドラマ等から吸収してます」

 そ、それはそれで偏ってるような?

「なんとなくお互いの苦しさがわかるようなお互い分かり合える関係?」

 あ。言ってて気色悪い。

 健と目が合う。

 おう。気色悪いわ。

「弱みを握ってる相手と対等には付き合えませんよ?」

 小声で相手の弱みも握り返しておかないととかって言わないで。

 たぶん、ソレ正しい友情じゃないから。

「だから、僕は僕としての僕はダメなんです。僕でない僕でなければダメだし、僕自身には友達なんかイラナイんです」


 ごめん。

 言ってる内容がややこしい。

 さすが鎮。

 何気に類は友を呼ぶって奴か?


「くだんね。友達になりたいから友達になれないって言ってみてるだけじゃねーか」

 健、エアクラッシャー?

「ちょっと、そういう出来事が繰り返されたからって逃げるんなら出来るわけねぇよな」

 健、獲物を見つけたかのように生き生きしてるのはいいんだけど、相手は居座ってる先の部屋の主じゃないのか?

「反論できねぇくらいにわかってんじゃん。ちゃんと向き合ってやれよ。早川と」

 ……。

 鎮じゃなくて英と、なんだ。健的には。

「自分が中途半端だって思うんならよ、それでいいじゃん。めんどくせェ。なぁ、千秋」

 それはどういう同意の求め方だよ?


 食べ終わった食器をそのままに、健の視線がこっちを見る。

「泊まんの?」

「いや、帰るよ」

 時計を見れば、十時を過ぎていた。

「じゃ、お邪魔さま。宗一郎君」

「送るわ。早くしろよ」

 何か、言いたかった気がしたのに言葉がすり抜けた。

 健……。


『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』から青空海ちゃんちらり借りしました。


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