届いたメール
うろな町外話
メールがランバートから届いた。
新薬が身体に染み込んでいくのを堪能することを中断し、メールを展開する。
それはシーからの伝言。
『マナはダメ』
そう、シーが伝えてほしいと望んだと。
施術台に横たわる患者に笑いかける。
「データはこれで足りるはず。これで求めていた成果のひとつを手に入れられたの」
患者の手が小さく動く。
「ママ。これでようやく正式に生体臨床に移れるわ。ママの望む通りだわ」
動きを最小限に抑えつつ、ゆっくりと室内の計器をチェックしていく。
「ママ。大丈夫よ。灯りは消えないわ。ママは心配することはないんだわ」
『マナがダメ』
それはすでにマンディを通して伝えられた言葉。
シーは私が聞いたことを知っていると確信してると思う。
その上で、マンディを通さず、確実性を持って伝えられた言葉。
ふふっと笑いがこみ上げる。
私のチケットを用意してくれたのはシー。
それはセシリアでもマンディでもなくシーだ。
セシリアには敬意を払おう。
彼女は選ぶ者だ。
セシリアはマンディで試そうともしなかった。
マンディに選ばせようとはしなかった。
その意味をマンディは理解していない。
もしかしたらしているのかもしれない。
どうでもいい。
だって、シーがマンディを要らないと決めたから。
セシリアはいない。
ティセリアはまだ決めない。
シーはセシリアが決めた選ぶ者だ。
他の誰をシーが選んでいるかは知らない。
でも、マンディが堕ちればきっとわかる。
ねぇ。
私は貴方の望みを叶えたいの。
電話をかけなきゃいけない。
きっと手伝ってくれる。
彼はシーが好きだから。
チアキが作った交友の輪。
そこに掛かる好意がチアキに向かおうがシーに向かっていようがそれは同じことだ。
シーに好意を寄せるものはそのままにチアキに好意を寄せる者はチアキに対するシーの執着にかける。
二人は違えた立ち位置。
そしてひとつの立ち位置にいる。
二人が反した道を歩くとは誰も思わない。
あの二人はどう変わったのだろう?
会いたい。
あなたに必要とされたい。
あなたに褒めて欲しいの。
あなたは今どう生きている?




