うろな暗黒会議室
議事録管理任意番号109
別に新たに連載にするか悩んだけど組込み。
うろなの町は良家の出の子や訳ありの少し多めで不思議の多い町。
昨年7月には思ってたネタを書き起こしてみた。
名もなき人々。
人影がかろうじてわかるぐらいの暗い部屋。
そこにいる数人はのんびりとそれぞれの飲み物を口にする。
今日の会議における通常連携連絡会は正常に済んだ。
あとは次の一週間後まで平和ならいいのだ。
どっかの組織や、金持ちのスポンサーの意向で振り回されることも多々あるがこの町勤務は、比較的平和かつ刺激的だ。
時折、超過勤務じゃねーの? と愚痴をこぼし合う相手とやりあうことも可能性として常に含まれる職場だ。
そのぐらいこの町は特殊で、価値のある町なのだろう。
ここに集まる下っ端には平和っぽいいい町だ。
そう、裏で何が起こっていようが知らずにいるべき場所に知らせないよう動くことが彼等の我らの仕事なのだから。
夏場の一家失踪事件やらの帳尻合わせをどっかのお偉いさんからの指示で制限二十四時間で突貫したり、自覚の薄い良家令嬢の護衛をしてたら、ストーカーと間違えられたり、何かと報われることがない職業。
彼らはそれぞれ別の組織団体個人と契約しているSSである。
企業や古い良家、政治家等も含むの意向でこの町の学校に通うその子息や令嬢・その他人材やら対象の護衛・観察・調査を陰ながらおこなうにあたって、当初、ぶつかりまくったのだ。
まさに無用の死者が発生した。
ちなみに死体処理も我らの業務の一環だ。
何故なら明らかな他殺体が多量発生した場合、大きな捜査がはじまってしまう。
それは裏側がまるっきりないと言い切れない我々自身の首を締める出来事だ。
白っていうか、俺たちって黒に近いグレイだよなという自覚がある以上仕方が無い。
やりあいとハナシアイの結果、暫定的な協力体制。『暗黒会議』が設立した。
新入りに胡乱な眼差しで命名者誰だよと突っ込まれた日にはそいつにはいろいろ教えないしきたりだ。
ああ。
俺も苦労させられたさ。
念のためにもう一度、
我らはか弱い下っ端。情報弱者である。
「えー。それでは何か他に議題はあるかなー?」
本日の司会(幹事・司会は年功序列持ち回り制度採用)が周囲に声をかけて発言の有無を確認する。
今日はそろそろ例の議題が新入り組から発生する可能性が高い。
楽しみだ。
事実スッと手が上がった。
「はいどーぞー」
「こちらでは要注意人物のピックアップと対策がたてられているようなことを聞いた気がするのですが?」
きた!
きたよこれ!
「ぁあ。うん。そうだねぇ。議事録や個人の脳味噌に入ってると思うね。要注意人物は誰かな?」
わざとらしく、侵入してきた未知の団体組織は知らないし、と嘯く司会。
アレかソレかはたまたアッチか。
出やすいネタは限られる。
新入りは落ち着かなげに手を握ったり開いたりを繰り返す。
言おうか言わざるかそれが問題だろう。
さぁどれがくる!
俺に儲けさせてくれ!
「……」
言い出せない新入りを司会が軽い仕草で急かす。
「て、天狗仮面です」
よっしゃーー!!
今日の飲み会は司会の奢りだ!
「ぅん。天狗君ね、でも、彼一般人だから。これ確定。あえて繰り返そう。外見・装束はさておいても、彼は善良な一般市民。剣道・相撲と格闘武術に長け、人々を危険やトラブルから守ろうという善人だ。我々の業種的に時折、迷惑に感じることもあるが、それでも、正当性は天狗君にあるんだよ。我々はそこを理解し、己が業務を全うする。それが仕事をするってことだ。若い君には難しいかも知れないが、この業界が他よりいささか危険かつ刺激的なことは否めない楽しみが多ければ、乗り越えるべき試練も多くて然るべきだと思わないかね。ほら、中学の先生が受けた試練のように」
多分に趣味と嗜好を含ませた発言、そして締めの言葉にススっと視線が逸らされる。
あの頃は微妙に事態が動いて大変だったのだ。
夜な夜な恐ろしい声をあげる中学校の先生とそれを追う鬼面の男。
所属不明の妙な奴等。
そこからひろがった新入りいびり的な過酷業務。
まぁ今回は置いておこう。
賭けに負けたのでいびってやがる。
「つまり、君はこの業務に向いていないと上司に申告する必要性を感じているのかな?善良な一般人に対応できない自分はこの職場にふさわしくないというわけだね?」
まぁまぁと司会をなだめながら、一人が発言した。
「で、実際、何があったのかな?」
「…………天狗仮面に……不審者として通報されました…………」
新入りは泣いていた。
「不審者に、不審者扱いされました……」
周囲の眼差しと空気が『あー』と生暖かくなる。
「本社から、反省文と給料カットが言い渡されました」
いや。それは当たり前。
「まぁ、天狗君、一般人だし。善良市民だし、あやしまれて捕獲通報にいたった君の未熟さゆえだねぇ」
司会は容赦なく現実を突きつける。
まぁ、その状況に置かれたら逃げ切れるか聞かれたら俺は盾要員を用意するがな!
そんな状況で減給なら交代の護衛要員に連絡が通ってなかったってことだよな?
ダメに決まってるじゃねーか。
ウチなら訓練生からやり直しだ。
「まぁ。事実かな。しかし、またつかまったらクビ確実だろうし、対策やっといた方がいいんじゃないかね」
古株が押し付けあう空気の流れを感じる。
結果として、まだ天狗君を見たことがないメンバーと件の新入りを対象に対策を行おうという事になった。
え?
生意気な奴は除外だよ?
外に出たらまぁ外見的には普通っぽいにーちゃんやねーちゃんを引き連れた俺という構成でふらふら歩いてるわけだ。
まぁ、ちょっと目立つな。不本意だ。
そして、探すとなると会えない。
これはいったい何のジンクスだろう。
「夕方だし、公園かねぇ?」
よく子供たちを引き連れて遊んでいるという話しだし、どこにでも現れるのが彼の天狗仮面君だ。
んー。ぷーって奴かな?
そんなことを思っていると紺ジャージに唐草マントに名前の由来の天狗面その手には和傘。よくそのカッコで往来を歩けるよなと感心する。素顔がわからないからいいのか?
おじさん、わからんわー。
「天狗君ー。こんちはー」
「うむ。お勤めご苦労である」
背後の若いのが動揺する。
「ああ、今日は仕事中じゃないんだけどね」
「む?」
「こいつら同業の新人達だからよろしくー」
小さく「普通に紹介?」と驚愕の声が聞こえる。
だってこれが一番早いしさ。
「うむ! 共にうろなの町を守っていこう!」
やっぱり、格好はともかく、善良青年だなー。
「いや、ウチらは契約上基本個人だけだからさ、町は天狗君によろしくしとくさ」
笑いながら返しておく。
そのあとは現場解散。
俺は司会に逃げられる前に呑みに行かなければならなかった。
新入りが持ってくる次の議題が楽しみだ。
『うろな天狗の仮面の秘密』より天狗仮面様(主賓?)
『人間どもに不幸を!』より事件等を。
『"うろな町の教育を考える会" 業務日誌 』より清水先生の修行光景を。
『うろなの雪の里』藤堂先生により鬼面の男を。
お借りいたしました。
コレ系用のネタはあと三つくらいある。
別立てにするかまだ悩み中。




